蓮佛美沙子「その役の人生を一回、脳内一人芝居します」 独自の役作りの方法を明かす

2023.1.6
主役として存在感を見せることも、脇役として作品を支えることもできて、恋愛ドラマもアクション大作も、ジャンルレスにこなす蓮佛美沙子さん。新ドラマ『今夜すきやきだよ』では、トリンドル玲奈さんとW主演を務めます。
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――主演として現場での心境は?

主演だから引っ張っていかなきゃみたいな気負いは全然なくて。ちょっとせっかちなので、段取りよく進めたいというのはあるんですけど(笑)、基本的には穏やかに、誰も独りよがりにならず、いい作品にしたいと、みんなで想いを一つにしてやっていけたらと思っています。

――タイトル的にごはんが大きな見どころになりそうですね。

それはもう! 撮影後に持ち帰らせてもらっているくらいおいしいので、楽しみにしてください。ただ、予想外だったのが、グルメドラマなので太ると思っていたのに、痩せていくという(笑)。本番のテイク1で、自分の素直な「おいしい」というリアクションでやりたくて、常にお腹をすかせておく戦略でやっていたら、食べる総量が減ってるみたいで。

――インスタグラムに手料理の写真がありますが、料理はお好き?

ストレス解消になるので、作るのも食べるのも好きです。でも、インスタは料理よりも、好きで集めている器を見せたい気持ちのほうが強いですね。

――インスタといえば、投稿頻度がかなり少ないような…。

あはは! 少ない自覚はあるんですけど、シンプルに載せたい写真がないんです。友達とごはんに行っても写真を撮らずすぐ食べちゃいますし。現代に適合できてないんでしょうね(笑)。共演しているともこ役のトリちゃん(トリンドル玲奈)は毎日のように上げててすごい! でも放送が始まったら毎週OA前にストーリーやります。告知です、すみません(笑)。

――むしろ、ドラマに話を戻していただけてありがたいです(笑)。蓮佛さん演じるあいこが“女は料理をするもの”といった彼氏の考えに違和感を抱いたり、共同生活をするともこが、恋愛感情を抱かないアロマンティックだったり、ジェンダーロールやセクシュアリティもテーマになっていますね。

台本を読んで、そういう視点があったのかと気づかされることがたくさんありました。人と人とが関わっていく中で、知らずに傷つけてしまうこともあるんだと気づくことは、大きな一歩だと思うんです。ただ、この作品はけっしてメッセージを押し付けてはいなくて、軽やかに、大事なことを伝えてくれます。とにかく誰もが自分らしく、心地よく生きていけたらいいですよね。この作品に参加して改めて、自分の大切なものは自分しか守れないし、それは誰にも奪えないと強く感じました。

――あいこのキャラクターをどう捉え、アプローチしていますか?

あっけらかんとしていて、友達になりたいと思わせる共感性の高いキャラクター。伝わるかわからないんですが、私の中では、油絵のひまわりのイメージです。

――ゴッホのひまわりですか?

ゴッホではないです。心の中に、自分のモノサシと世間的なモノサシの両方を持っていて、その間で揺れ動いたりする、そういうあいこの人間くさいところが、私にとってはキレイな写真や水彩画ではなく、油絵のひまわりのイメージだったという感じです。

――イメージはどう浮かんでくるんですか?

どの役でも、その役の人生を一回、脳内一人芝居するんです。どんな子供時代や思春期を過ごしてきたのか、自分なりに考えながら。その時ほわっと浮かんできたイメージは、「そこから外れさえしなければ、何をやってもいい」という、演じる上で大切にしている役の核になっています。

――イメージは絵で浮かぶ?

言葉のこともあります。感情の発露がストレートなあいこだったら、“感情ジェットコースター”というキャッチフレーズがぽんと浮かんできました。色の時もありますね。少し前に演じた、閉鎖的な空間にいて自分に自信がない女の子は、モノクロだなとか。

――感覚が強いんですね。

論理的に考えるのも好きなんですけど、年々「こっちの間のほうがいいよな」とか、自分の感覚を信じられるようになってきました。

――そもそも俳優になりたいと思ったきっかけは?

竹内結子さんの月9ドラマ『ランチの女王』です。当時小5だったんですけど、学校が全然楽しくなくて行きたくなかったんです。「まだ月曜かあ、今週も嫌だなあ…」って感じで見ていたら、周りを明るくする太陽のような役を竹内さんが演じてらっしゃって、「この人が頑張ってるから、私も学校に行こう」と思えて。こんなにも人の心を動かすことができる仕事を、私もやってみたくなりました。

――竹内さんが演じた役が蓮佛さんを動かしたように、ご自身が作品を見た人にとって、そうなれている実感はありますか?

もちろん「作品を見て頑張ろうと思った」と言っていただくとすごく嬉しいですし、役者をしていてよかったと思います。でも、頑張ってほしいとか、勇気を届けたいというエゴは、演じる時は持たないようにしていて。いただいた役を愛して、まっとうすることがすべて。現場でみんなで作り上げた結果として、作品の想いが届いていたら最高です。

『今夜すきやきだよ』の原作は、第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した谷口菜津子によるコミック。恋愛体質の内装デザイナー・あいこと、アロマンティックの絵本作家・ともこは、同級生の結婚式で再会し、共同生活を始め、自分の居場所を見つけていく。1月6日よりテレビ東京系にて毎週金曜24:12~放送。「ひかりTV」「Paravi」「TVer」でも配信。

れんぶつ・みさこ 1991年2月27日生まれ、鳥取県出身。2005年、オーディションでグランプリに選ばれ、翌年公開の映画『犬神家の一族』でデビュー。’07年、主演映画『転校生‐さよなら あなた‐』での演技が高く評価される。近年の出演作に、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』『マイファミリー』、映画『鋼の錬金術師 完結編』など。

スエードドレス¥52,800(HYKE/BOWLES TEL:03・3719・1239) リング、右手人さし指上¥121,000 右手人さし指下¥83,600 左手人さし指¥83,600 左手中指¥140,800(以上Etoilight www.etoilight.com) その他はスタイリスト私物

※『anan』2023年1月11日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・道端亜未 ヘア&メイク・水野未和子(3rd) インタビュー、文・小泉咲子

(by anan編集部)