全方向の美を底上げ! “温活”がもたらす7つのメリット
カラダを温めることで不調を改善する“温活”。体内で熱を作るメカニズムや、温活で大切なことを、冷え症に詳しい漢方専門医の渡邉賀子先生に伺った。
「まずカラダで熱を作るために必要なのが、食べ物です。そして食べ物が胃腸で消化吸収され、脳や肝臓、心臓、筋肉など全身のいろいろなところで代謝される過程で、熱が生み出されます。その熱を最も多く生み出しているのは筋肉で、1日の熱量の約6割を占めます。こうして作られた熱が、血液によって全身に運ばれ、自律神経などの調節によって、深部体温(脳や内臓などカラダ内部の体温)が約37°Cに保たれています。また血液には、作られた熱を運ぶ以外にも、栄養素や酸素を全身に運び、同時に不要になった老廃物を回収するという大切な役割があります」
温活が目指すのは、この熱を作ることと、熱を運ぶ血液の循環を滞りなくできるようにすること。そして血流をコントロールし、体温調節に関わってくるのが自律神経だ。
「寒いところに行くと、手足が冷たくなりますが、それは深部体温を守るために自律神経が働き、末梢の血管をギュッと縮めて血液をカラダの真ん中に集め、体温が外に逃げないようにしているからです。逆に暑い時には血管を開いて、体表から熱が逃げていくようにすることで、常に一定の体温が保たれるようになっています。この自律神経のバランスが乱れると体温調節がうまくいかず、冷えにつながります。自律神経を整えるためには、心身のストレスを除き、リラックスすることも大切です」
しかし、現代女性は体内で十分な熱を作れないし、血の巡りが悪い人が多い。
「ダイエットのためなど、食事の量が少ないと、エネルギー不足のために体内でうまく熱が作れません。また、コロナ禍での外出制限などもあり、動く機会が減り、筋肉が衰えている人が増えました。運動しないと、作られる熱量が少なくなるので、カラダが冷えてしまいます。さらに、ファッションのために薄着や素足で過ごしたり、お風呂もシャワーのみで済ませたりと、カラダを冷やしがちな生活スタイルも悪影響を与えています」
また、女性に大敵の貧血も冷えを招くというのは、産婦人科医の佐野麻利子先生。
「血液検査をすると、酸素を運ぶヘモグロビンや、貯蔵鉄を反映するフェリチンが少ない若い女性が多いです。鉄分不足で貧血になると、全身に酸素を運ぶ能力が落ちることに。栄養素がうまく巡らなくなるのでカラダが冷え、さまざまな不調を引き起こします。糖質制限ダイエットをしている方もいますが、炭水化物はエネルギーのもとなので、温活のためには必要です」
温活で血流を良くするためには、食事、運動、リラックスの3本柱がカギ。それでは、温活をするとカラダにとって具体的にどんないいことがあるのか? 渡邉先生と佐野先生に詳しく教えてもらった。
温活をすると起きる、7つのいいこと!
1、新陳代謝が活発に。肌や爪、髪の毛がキレイに!
くすんだ肌や目の下のクマ、パサついた髪、縦筋が入った不健康そうな白い爪…。これらの症状があるなら、外からのケアだけではなく、血の巡りを改善することが急務かも!?
「血流が良くなると、カラダのすみずみまで栄養が行き渡って老廃物を回収してくれます。肌のターンオーバー(=新陳代謝)が正常に行われるようになるので、肌に必要な栄養素が届けられ、美肌に。寒さを感じるとカラダの末端から血流は悪くなるので、毛髪の土台である頭皮や指先は、とくに影響が出やすいところです。ツヤのある髪の毛やなめらかな爪を育むためには、血流を良くして酸素や栄養素を供給しておくことが大切」(渡邉先生)
温活をすることで、サラサラとした十分な血液がカラダ中を巡るようになり、全方向の美を底上げすることができそう。
2、太りにくい体質になる。
「1日の熱量の約6割は筋肉で作られます。ですから、温活の一環として筋肉量を増やせば基礎代謝がアップし、寝ている間のカロリー消費も増えて太りにくいカラダに。筋肉を作るには、1日3食、筋肉の材料となるタンパク質を摂ることが大切です」(渡邉先生)
ダイエットのために、野菜ばかり食べている人は要注意。
「エネルギー不足で十分な熱を作れず、むしろ痩せにくい体質に。筋肉のもとになるタンパク質の他、タンパク質の代謝を高めるビタミンB群、血液中の酸素を筋肉に取り込む鉄分も一緒に摂ることが、筋肉の質を高めるポイントです」(佐野先生)
3、自律神経のバランスが整い、リラックスできる。
体温と深い関わりがあるのが、自律神経のバランス。
「深部体温は夕方をピークに徐々に下がり、良質な睡眠へとつながりますが、遅くまでパソコン作業をしていたり、精神的ストレスにさらされていると、夜になっても交感神経が優位な状態で血管が収縮したまま体温が下がりません。そうするとベッドに入っても寝付けない、熟睡できないといった睡眠トラブルが。落ち込みやすくなったり、イライラするなどメンタル面にも影響が出てきます。一日の終わりには副交感神経がオンになるよう、お風呂やホットタオルなどでカラダを温めてリラックス。血流が良くなって、自律神経のバランスが整います」(渡邉先生)
4、免疫力、カラダの抵抗力を保てる。
風邪をひきやすい人とそうではない人、その違いのカギとなるのがカラダの抵抗力、自己免疫だ。
「リンパ球など白血球の免疫細胞は、血液に乗って全身を監視していて、ウイルスや細菌、がん細胞などの異物がいれば攻撃することで、カラダを常に守ってくれます。つまり、血液の流れがいいと、免疫細胞が全身をスムーズに循環できるため、免疫力が高まることにつながると思います。ただ、免疫は上がりすぎても良くありません。正常に保つ、下げないようにするのが大事です」(渡邉先生)
5、首や肩のコリ、腰痛を改善、脚のむくみを解消できる。
長時間のデスクワークは、カラダへの負担をかける要因に。肩や首、腰などの辛い痛みは、温めることでかなり軽減できる。
「効果的な温め方法はお風呂です。また、お風呂には温める以外にリラックス効果もあります。ポイントはお湯の温度で、深部体温より少し高い38~40°Cが最適。このくらいのぬるめのお湯は、皮膚が安心・安全だと感じて副交感神経が優位になり、末梢の血管が開いてリラックスできるんです。浮力があるので、腰の負担も軽減されて血流が良くなります。他にも、水圧によって脚のむくみが解消できるなど、お風呂はいいことずくめです」(渡邉先生)
6、月経痛、PMSの緩和、妊活にもいい影響が!
冷えは、女性特有の悩みを助長する原因のひとつ。
「冷えると、生命維持に必要なカラダ中心部に血液を集めて体温を維持するので、子宮や卵巣など生命維持に直接関係ない部分は後回しに。子宮や卵巣の血流が滞って冷えると、子宮が収縮して生理痛がひどくなったり、放置しておくと月経困難症や婦人科系の病気を併発してしまうことも。他にも、自律神経が乱れて、イライラしやすくなるなどPMSの症状も出やすくなります。温めることでこれらの症状は緩和されるので、お腹を温めることを意識しましょう。また、卵子は血液から栄養をもらって成長するので、温活は元気な赤ちゃんを産むためにも大切です」(佐野先生)
7、疲れにくいカラダになれる。
寝ても疲れやダルさが取れない人は、カラダが冷えているのかも。
「疲れは血流が悪くなると出てきます。鉄分が不足している若い人が多く、貧血の傾向が。貧血は頭痛の原因にも」(佐野先生)
「冷えていると年代を問わず出てくる症状が、疲れやすさ。カラダを温めて血流が良くなると、血液によって熱だけでなく酸素や栄養素が全身に届けられ、老廃物も回収してくれるので、疲れにくいカラダになれると思います。とくに若い世代は、頭痛、めまい、立ちくらみがなくなるといったうれしい効果も見られます」(渡邉先生)
渡邉賀子先生 漢方専門医、帯山中央病院理事長、麻布ミューズクリニック名誉院長。日本で初めて冷え症外来を開設。漢方を中心に、冷え症の治療に取り組むなど、女性の健康をサポート。冷えに関する著書多数。
佐野麻利子先生 産婦人科医、フィーカ レディースクリニック院長。女性のかかりつけ医として、ライフステージに合わせた適切な情報を提供。妊娠前の健康管理をするプレコンセプションケアに力を入れている。
※『anan』2022年12月14日号より。イラスト・micca 取材、文・岡井美絹子
(by anan編集部)