古坂大魔王「その後の育児との向き合い方が変わる」 わたなべ麻衣と“育休”を考える

2022.10.8
ananフェムケア連載「Femcare File」今回のテーマは「育休を、どう考える?」です。子育てと仕事の両立は、やっぱり難しいの? もうすぐ2歳になる娘さんのママであるわたなべ麻衣さんが、育児休業取得の経験を持つ古坂大魔王さんと考えます。

日本の育休取得率の推移

【1996年度】
男性…0.12% 女性…49.1%
【2010年度】
男性…1.38% 女性…83.7%
【2021年度】
男性…13.97% 女性…85.1%

働く女性が増え、女性の育休取得率は大幅にアップ。一方で、男性は昔に比べて増えたとはいえ、まだ15%に満たない。共働きでも、女性だけが育休を取得している家庭が多いのが現実。
※厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」

fem1

わたなべ麻衣:古坂さんは、2020年に2人目のお子さんが生まれた時に育休を取ったんですよね。育休を取ろうと思ったきっかけは?

古坂大魔王:その2年前に上の子が生まれた時、ピコ太郎と一緒に仕事で海外を飛び回っていたりして、全然家にいられなくて。実家にも頼れなくて、奥さんはワンオペだったから、かなりつらそうで…。だから、2人目の時はきちんと育休を取って育児や家事に専念しようと、その時に思ったんだ。それに、下の子が生まれる少し前、小泉進次郎さんが育休を取ったんだよね。賛否両論があったけど、話題になった時点で、僕はすごく意義のあることだと思った。

麻衣:女性は子供が生まれたら生活が激変するのに、男性は何も生活が変わらない人がたくさんいるのが現実。だから、男性側から発信するって、とても意味があることですよね。育休はどれぐらい取ったんですか?

古坂:完全に休んだのは2週間。その後は、保育園が休みの土日にはできるだけ仕事を入れないようにして、子供の面倒を見るって奥さんと話し合った。仕事が減るかもって思うと、正直怖かったけど、決断できたのは、ある程度仕事の基盤が出来上がっていたから。若い時だったら、なかなか決断できなかったと思う。

麻衣:置かれている立場によって育休が取れるかどうかが変わるって、やるせない話ですよね。でも、現実には、育休を取りづらい人もいると思う。「同僚が育休取ると、しわ寄せが来て迷惑」みたいな意見もネット上で見かけたりするから…。

古坂:きっと「子供はその家庭の所有物なんだから、他に迷惑をかけないで自分たちで何とかしてよ」っていう発想なんだよね。でも、子供は家庭の所有物じゃなくて、社会全体の財産だと僕は思うよ。昔は、親族や近所の人がみんなで子供の面倒を見ていたわけでしょ。だから父親と母親だけで頑張らないといけない時点で現代の育児には無理がある。9人必要な野球チームを2人だけで回しているような状態なんだよ。それを行政も会社も知ってほしいな。

麻衣:あと、女性の産後の心身の体調についても理解が広がってほしいですね。私は、産後2か月くらいから少しずつ仕事を再開したんですが、本当は半年ぐらいは完全に休もうと思っていたんですよ。でも、子供と一緒にいられて嬉しいはずなのに、心が沈んじゃうことが続いて…。今思うと軽い産後うつのような感じだったんだと思います。それで早めに復帰したら、仕事で人に会うことでリフレッシュできたし、娘にも穏やかな気持ちで向き合えるように。古坂さんは、育休中はどんな形で育児に関わっていたんですか?

古坂:奥さんが上の子の面倒を見て、僕が下の子のミルク、オムツ替え、沐浴、寝かしつけとお世話に専念していた感じ。二人で手分けしても大変なのに、ワンオペなんて絶対に無理だって痛感したよ。JOYくんは育休は取ったの?

麻衣:取る予定はなかったんですけど、出産した時がちょうどコロナの自粛期間で、仕事がお休みになって家にいたんです。だから産後数か月の大変な時期を協力して乗り切ることができた。その経験は大きいですね。ケンカしても、あの時二人で試行錯誤した思い出が“ストッパー”になって踏みとどまれる。でもコロナがなかったらどうなっていたのか…。どうすれば、もっと育休が取りやすくなるんでしょうね。

古坂:育休を取ると出世するとか、会社からお金が出るみたいな仕組みを作らないと。「仕事を休んでいた間、育児という貴重な経験を積み、それは会社のメリットになる」という価値観になれば、育休も取りやすくなると思う。JOYくんも、今も育児を積極的にやっているでしょ?

麻衣:はい。でも、JOYくんがインスタで「今日は麻衣ちゃんが仕事なので、娘と二人で公園に来ました」とか投稿したりすると、みんな「えらいね」って褒めてくれるんですよ。ありがたい半面、正直モヤッともして…。私はJOYくん以上に育児をやっていても、誰からも褒められない(笑)。“レアなこと”だから褒められるわけで、男性が育児をするのも当たり前っていう風潮になればいいのになぁ。

古坂:「女性はすぐ家庭の愚痴を言う」とか揶揄する人がいるけど、これって性別の問題じゃなく、関わっている割合が多いから愚痴が出るだけの話。男性が真剣に育児をやれば、愚痴を言いたい気持ちだって分かるはず。僕は、こうして育児の取材を受けているけど、奥さんの10分の1くらいしかやれてないと思うし。

麻衣:それを認識しているだけでもすごいですよ! 育児や家事の全体量を把握しているのは、やっぱり育休を取っていたからなんでしょうね。

古坂:そうだね。たとえ短期間でも育休を取って真剣に育児に関わることでその後の育児との向き合い方は変わってくる。そう考えると育休は、男女関係なく、どうやって家庭を運営していくのか夫婦で考える大切な時間なんだと思うよ。

こさか・だいまおう 1973年生まれ、青森県出身。お笑い芸人やクリエイターの他、「ピコ太郎」のプロデューサーとしても活躍。2018年に長女、’20年に次女が誕生。子育て情報番組『すくすく子育て』(NHK Eテレ)のMCも務めている。

わたなべ・まい 1989年生まれ、広島県出身。2019年にタレントのJOYさんと結婚、翌年10月に第一子となる長女を出産。キュートなキャラクターが支持され、モデルやタレントとして幅広く活躍中。

※『anan』2022年10月12日号より。写真・水野昭子 スタイリスト・塚本隆文(古坂さん) ヘア&メイク・megu(麻衣さん) 取材、文・音部美穂

(by anan編集部)