国民にとって暗黒の3年間になる可能性も? 岸田政権の経済政策を注視すべき理由

2022.9.10
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「黄金の3年間」です。

経済政策次第で、黄金になるか闇になるかの瀬戸際。

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衆議院が解散しないかぎりこれから3年間は国政選挙はありません。多数の議席をとった岸田政権にとっては、政権が揺るがされることはないため「黄金の3年間」といわれています。再分配政策を掲げて当選した岸田総理ですが、経済政策をどこまで実行できるのか。何もしなければ国民にとっては暗黒の3年間になりかねません。

世界情勢は混乱し、物資もエネルギー価格も高騰。インフレに悩む欧米諸国は金融緩和の引き締めに入りました。ところが日本はなかなかデフレから脱却できず、賃金は上がらず、消費は冷え込むばかり。日銀は金融緩和を継続することにしました。世界のなかで日本は競争力を失い、貧しさが際立ってきています。

安倍政権では航空宇宙産業や新しいテクノロジー、菅政権ではデジタル庁の立ち上げなど、明確なメッセージが打ち出されましたが、岸田政権の経済政策の目玉はいまだに出ていません。「資産所得倍増」を掲げ、NISAやiDeCoなどの投資を推奨していますが、元手がなければ投資マインドも起こりにくいでしょう。

製造業ではAIやデジタル化が進み、人手が必要なくなります。それらの人材は第一次産業やサービス業に流れますが、一次産業は法人化が遅れていますし、サービス業は低賃金で過重労働、競争も激しい。いま日本の中間的な働き手が行き場を失っているんですね。ですから、早急にしっかりと稼げる産業づくりを行う必要があると思います。

かすかな希望は「デジタル田園都市国家構想」。地方創生とデジタル政策を掛け合わせて、これまで都市に集中していた産業を地方に分散させ、地域で付加価値の高い競争力のある産業を作ろうというものです。

日本の黄金期が再び迎えられるかどうかはこの3年間で試されます。経済政策に積極的な手を打たなければ、不労所得に支えられる金融市場への課税と社会保障の見直しで財源を確保する方向に進み、国は縮小方向に向かってしまいます。私たち国民は政府の働きに注視し、政策が良くなかった場合には、3年後に厳しい決定を下すという圧力をかけておく必要があります。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2022年9月14日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)