あなたが加害者になる可能性も? 7月から施行された「侮辱罪厳罰化」とは

2022.8.20
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「侮辱罪厳罰化」です。

言葉は凶器になる。皆で自覚を持ち、誹謗中傷をゼロに。

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7月より侮辱罪が厳罰化され、1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金が追加されました。自死に追いやられたプロレスラーの木村花さんや、池袋暴走事故の遺族の松永拓也さんらをはじめ、インターネット上の誹謗中傷は大きな社会問題になっています。

侮辱罪とは「具体的な事実の摘示をしないで、不特定または多数の人が見られる中で口頭や文書を問わず、他者を侮辱することを内容とする犯罪」です。身体的特徴を揶揄する言葉や、障害者の方への差別的発言も侮辱罪の範囲になります。難民申請で留め置かれている人に対して、「早く国へ帰れ」というのも範疇に入ると僕は思います。

また、侮辱罪よりも悪質な、「事実を摘示し、公然と、人の社会的評価を低下させた場合」に成立するのが名誉毀損罪です。さらに、「殴るぞ」「殺してやる」などの暴力的な言葉が入ってくると脅迫罪。嘘、デマを流して経済的・社会的信頼を低下させる行為は信用毀損罪、業務妨害に及べば業務妨害罪になります。侮辱罪はこれらの一番入り口、幅広に適用されます。

言う側は、ちょっとした軽口、正義感にかられて発信したとしても、人が苦しめられて亡くなるケースがあります。誰かを侮辱する発言をリツイートするなど広めることも罪に問われます。そのつもりはなくても加害者になる可能性もあるので、注意してください。

今回の侮辱罪厳罰化は、注意喚起としては大きな前進といえますが、被害者救済には到底至っていません。被害を受けた方々は、証拠集めから訴訟まで長い時間闘いを強いられ、弁護士費用には、場合によっては100万単位のお金がかかります。被害者の負担が軽減される仕組みづくりが必要ですし、プラットフォーマー側にも、問題発言のリスト化など、迅速に訴訟に協力できるようなシステムがあってもいいのではないかと思います。

SNSは公の場という自覚が必須です。自分と直接関係なくても、ネット上で侮辱罪にあたる発言を見たら、通報する機能が各プラットフォームについているので、ぜひ活用してください。そうして、社会全体でメディアリテラシーを底上げすることが大事です。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』8月17‐24日合併号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)