芦田愛菜「体で理解することができた」 緊張をほどいてくれた宮本信子の言動とは

2022.6.19
映画『メタモルフォーゼの縁側』で主人公を演じる、芦田愛菜さんのインタビューをお届けします。
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自分に自信が持てない17歳の女子高生・うららの唯一の楽しみは、毎日こっそりBL、つまり“ボーイズラブ”のマンガを読むこと。そんな彼女がバイトをする書店で出会ったのは、夫に先立たれ、老後を一人で生きる75歳の雪。出会うはずがなかった二人を結びつけたのは、BLのコミックスだった!

「映画のお話をいただいてから原作を手にとったのですが、一読しただけで、大好きな作品になりました」

と言うのは、主人公のうららを演じる芦田愛菜さん。原作は鶴谷香央理さんによる同名のマンガで、数々の漫画賞を受賞している名作だ。

「うららは、自分に自信がなくて、いつも猫背になりがちな女の子。彼女が雪さんと出会い、自分と、そして好きで大切だけれどもその思いを人と分かち合えなかった“BL”の両方を受け入れてもらい、温かく包まれることで、どんどん生き生きしてくる。そんなうららを見ていると、私も自分をもっと認めたいと思いましたし、好きなものに対してもっと“好き”って言ってもいいと、励まされる気がしました」

雪を演じるのは、名優・宮本信子さん。共演は10年ぶり。宮本さんは最初のシーンの撮影時、「よろしくね、頼りにしてるわよ」と、芦田さんの肩をぽんっと叩いたのだそう。その仕草はまるで、物語の中でうららを優しく受け入れる雪のようだった、と芦田さん。

「たぶん宮本さんにとっては深い意味のない一言と仕草だったかもしれませんが、私はそれによって緊張がほどけ、うららと雪さんの関係性を、心だけではなく体で理解することができたんです。私にとって、お芝居をしていて一番楽しいのは、共演者の方と息がぴったり合ったと感じる瞬間なんです。今回宮本さんとご一緒する中で、そう思える瞬間がとても多くて。本当に撮影が楽しかったです」

年齢も生活環境も異なる二人が、“好きなもの”によって出会い、友情を育む。うららが初めて雪の家を訪れ、窓が大きく開かれた縁側に並んで座り語り合うシーンは、多幸感に溢れていて、とても美しい。

「縁側に座り、光が差し込む中であのシーンを撮影しながら、“はぁ、おだやかだなぁ…”と幸せを感じていました。縁側って、家の外と中の中間にある場所ですよね。もしそれを人の心と重ねるのであれば、取り繕ってしまう“外側”と、本来の自分の“内側”の境界線にあたる部分なのかもしれない。その場所にある窓を開け、新しい風を入れるのは、家にとっても、心にとっても、素敵なことだと思います」

タイトルにある“メタモルフォーゼ”とは、ドイツ語で変化や変身の意味。うららと雪はBLに出合い変化していくのだが、芦田さんも同じような経験をごく最近したそうで、それは高校生活で新しく学び始めた“世界史”がきっかけだった。

「まず、私と同じように世界史が好きな友だちができ、めちゃくちゃ仲良くなりました。それから、今まで点として覚えていた知識が、世界史を学ぶことでそれが繋がって線になり、“なるほど、そういうことだったのか!”と世界の相関関係が見えてきた。さらに、西洋絵画など今まで目が向かなかったジャンルにも興味が出てきました。変化って、受け入れるのが怖いときもありますが、“自分が好きなこと”によって、自分や、自分を取り巻く世界が変わっていくのはすごく楽しい。こういう変化はどんどん受け入れたいです」

物語が終わったあと、芦田さんと宮本さん…というよりは、うららと雪からのちょっとしたサプライズが待っている。

「映画は終わっても、きっと二人はずっと友だちでいるのだろうな、という、温かい気持ちになってもらえると思います。個人的にはなかなか難しいことだったんですが、頑張りましたので(笑)、ぜひそれも楽しみにしてください」

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映画『メタモルフォーゼの縁側』 原作/鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』(KADOKAWA) 監督/狩山俊輔 出演/芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平(なにわ男子)、古川琴音、生田智子、光石研ほか 6月17日より全国ロードショー。©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

あしだ・まな 俳優。2004年生まれ、兵庫県出身。5歳で出演したドラマ『Mother』で脚光を浴びる。’13年に映画『パシフィック・リム』でハリウッドデビュー。その後ドラマや映画を中心に活躍。読書家としても知られる。
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※『anan』2022年6月22日号より。写真・土佐麻理子 スタイリスト・浜松あゆみ ヘア&メイク・太田瑛絵(ヌーデ)

(by anan編集部)