行方不明の幼なじみが発見されるもその正体は…SNSでも話題の青春ホラーコミック

2022.5.24
ある集落で幼なじみとして育ったよしきと光は、将来に悩み始める高校生。ある日、光が山で行方不明になり、1週間後に戻ってくる。だが、よしきは彼に違和感を覚え、思い切って尋ねる。〈お前やっぱ光ちゃうやろ〉。その答えは――。モクモクれんさんの『光が死んだ夏』は、少年ふたりを軸にした青春ホラーだ。

怖いのに切なくて、共感度高し! 新感覚の入れ替わり系青春ホラー。

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「光がヒカルになっていたように、もし自分の大切な人が別の何かになり代わっていたとしても、自分だったら、よしきみたいに案外そのまま生活してしまいそうだなと思って。そんな気持ちを託しています」

ヒカルを見て、〈ノウヌキ様が下りてきとる〉と怯える老婆がいる。村では怪事件が起き始める。一方で、一緒にいたい気持ちを消せないふたりは、できるだけ以前と同じようにつき合おうとするのだが…。

「ヒカルはよしきが大好きですが、それが思慕なのか友情なのかは読者がそれぞれ感じてくれたらいいなと。私は、生まれたてのヒナが最初に見たものを親だと信じてしまうのに近い、さまざまな意味を内包している“好き”なのかなと思っています」

光ではないナニカは、光の姿かたちを模倣し、記憶も引き継いでいるという設定。ゆえに、彼は結構涙もろい。不気味さの片鱗が現れてぞっとするシーンもあるのに、よしきも、そして読者も、彼を突き放せない。

「ヒカルは人外ですが、読者に可愛いと思ってもらいたい気持ちはあります。よしきは闇を抱えているわけではないけれど、自己肯定感が低い。誰もが大なり小なり持っているようなネガティブさがあって、そこに共感してもらっている気がします」

また、前提として、

「ヒカルを単純に邪悪なものとして描きたくないんです。人間の価値観とは違うかもしれないけれど、それが悪とは言い切れないですよね。善か悪か掴みきれない曖昧さは残したい。よしきが元の光と違うと知っても葛藤し続けるのはそのせいで、仲良しなままのふたりを見ていたい」

全体的にダークな色調の画だが、そのスミ(黒)のグラデーション表現がとても繊細。

「トーンはあまり使わず、できるだけカケアミで描いて濃淡を出したくて、頑張っています(笑)。その割合の多さ少なさで感情や緊張を演出するのがこだわりかも。ヒカルの変体(メタモルフォーゼ)も、グロテスクというより、見ようによっては美しい模様みたいに見えるように意識しています。白石晃士監督やギレルモ・デル・トロ監督作品、海外のおしゃれなホラー映画とかには影響されている気がします」

よしきやヒカル、集落の運命はいかに。続きが待ち遠しい!

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『光が死んだ夏』1 SNSでも話題沸騰。無料オンラインマガジン「ヤングエースUP」にて連載中。本作の原点は、Twitterにアップした、7ページほどの短編だそう。KADOKAWA 704円 ©モクモクれん/KADOKAWA

モクモクれん マンガ家。東京都出身。小さなときからホラー好き。本作品が初の連載となる。自身のTwitterアカウントでも随時情報更新中。@mokmok_len

※『anan』2022年5月25日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)