絵本『動物会議』で人類を痛烈批判 エーリヒ・ケストナーの思いをつなぐ展覧会

2022.2.28
『エーミールと探偵たち』『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』などの児童文学作品を筆頭に、世界的に知られるドイツの詩人、作家のエーリヒ・ケストナー。第二次世界大戦後、戦いや争いをやめない人類を彼の絵本『動物会議』では痛烈に批判。ケストナーはユーモアと皮肉を絵本に込め、人類が抱える大きな課題をわかりやすく訴えた。「争いをやめ、未来のため、子どもたちのために、大人たちが話し合う」という彼の問題提起は、作品の出版から70年以上が経った今日の世界にも通じると、本展は企画された。

愛らしい動物たちが伝える、人間への痛烈なメッセージ。

会場でまず目を引くのは、『動物会議』を描いたヴァルター・トリアーの原画(複製)の展示。カナダのオンタリオ美術館に所蔵されている原画と寸分違わぬサイズ&画質で用意された本品は、簡潔でふくよかな線、親しみやすい表現で描かれた動物が可愛らしい。見る人を惹きつけ、想像の世界へと誘ってくれる。

さらに本展では、ケストナーのメッセージを現代へ問いかけるべく、様々な分野で活躍する8人のアーティストたちが集結する。『動物会議』のストーリー8場面を、絵画や立体、インスタレーション、映像などの手法で全員がリレーして描き出した。物語はチャド湖のライオン、ゾウ、キリンの集まりからスタートする。動物会議の招集、へんてこな動物ビルへの移動、人間と動物の会議や駆け引き、そして最後に動物たちがとった一手とは……。参加アーティストは絵本作家のヨシタケシンスケ、アニメーション作家の村田朋泰、画家のjunaida、イラストレーターの秦直也、映像作家の菱川勢一など、子どもと縁深く活躍する気鋭の作家が勢ぞろい。彼ら現代作家がミュージアムの空間全体をフルに使って紡ぎ出す、現代版『動物会議』に注目したい。

What’s? 『動物会議』

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1949年、エーリヒ・ケストナーとチェコ生まれの挿絵画家ヴァルター・トリアーが共に作り上げた絵本。第二次世界大戦後、各国の首脳は世界平和のために国際会議を重ねるが、成果が上がらない。それを見て怒った動物たちが自分たちで会議を開き、人間に平和の道を示そうと試みる名作。
「どうぶつかいぎ展」メインビジュアル

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1.「闇の世界 夢の世界」junaida/2021年
ボローニャ国際絵本原画展をはじめ数々のコンクール受賞歴を持つjunaidaの描き下ろし作品が。

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2.「無題」秦直也/2021年
シャープペンシルで描く繊細な動物のイラストで有名な秦直也作品も登場。

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3.「ケストナーとトリアー」ヨシタケシンスケ/2021年
絵本作家ヨシタケシンスケは長年の盟友だったケストナーとトリアーの関係を作品で紹介。

Entame

4.「めざせ動物ビル」村田朋泰/2021年
へんてこな動物ビルに集う動物たちをアニメーション作家・村田朋泰は得意のコマ撮り映像で表現。

どうぶつかいぎ展 PLAY! MUSEUM 東京都立川市緑町3‐1 GREEN SPRINGS W3‐2F 開催中~4月10日(日)10時~18時(平日は17時まで。入場は閉館の30分前まで) 2/27休 一般1500円ほか TEL:042・518・9625

※『anan』2022年3月2日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)