調査能力不足が課題? 野党が果たすべき本来の役割とは

2022.1.28
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「野党」です。

監視や批判は大事な役割。高い調査能力を求む。

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政権を運営するのは与党。野党は、その運営をしっかり監視し、暴走に歯止めをかけたり、不正や隠蔽があれば、国会という開かれた場のなかで、情報を表に出して追及、改善を求めるという大きな役割を担っています。

法案は、国民にとって最善の法律にするために与野党の議員が様々な角度から意見を交わし、実際には約8割は与野党合意の上、成案しています。ですから、「野党は批判ばかりしている」という非難は批判には当たらないと思います。けれども、そう言いたくなる気持ちはわからないでもありません。2009年に自民党から民主党に政権交代する前の野党は、「消えた年金問題」や「居酒屋タクシー」(霞が関の官僚を乗せた個人タクシーの運転手が、ビール券や現金をバックし、その代わりにタクシーチケットの金額を上乗せして書いてもらっていた)、外交機密文書の開示など、様々な問題を掘り起こし、証拠を突きつけて国や与党にプレッシャーをかけていました。

国会議員には、「国政調査権」といって、国政に関する問題が起きた際に、資料の要求や参考人の招致、証人喚問をする権利が与えられています。国政調査権を使いこなし、隠された真実を暴き出して改善できる力があるはずなのに、最近では問題提起のネタ元が週刊誌の記事だったりするなど、野党の独自調査の物足りなさに、世間は不満を抱えているのではないでしょうか。

同じく野党の共産党は、機関紙の『しんぶん赤旗』が「安倍内閣の桜を見る会私物化」や「菅内閣の学術会議人事介入」をスクープし、ジャーナリズムの賞をとるほど監視の目を光らせており、強い地歩を固めています。

野党第一党の立憲民主党の関係者に取材をすると、調査能力という点では党内でも課題を感じているとのこと。しっかりと志を持った、調査能力に長けた人材のリクルートや育成を求めたいところです。

与党と野党、政治とメディア、司法や大衆社会がお互いに正当な批判をしあって、緊張関係を持ち続けることがとても大事です。夏には参議院選挙がありますから、みなさんもしっかりと与野党の動きをウォッチしましょう。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2022年2月2日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)