元宝塚・安蘭けい「強烈なインパクトを残せたら…」 “蜘蛛女”を演じる

2021.11.30
ミュージカル『蜘蛛女のキス』は、監獄で同房となった政治犯のバレンティンと映画を愛する同性愛者のモリーナが出会う。生き方も価値観も違い、当初は相容れなかったふたりだが、いつしか心を許すように。安蘭けいさんが演じるのは、モリーナの憧れの映画スターであるオーロラと、オーロラが演じる蜘蛛女だ。

「幻想の中の役ながら、人間的なリアルな存在として見せていきたい」

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「この作品を初めて観たときは、救われない人たちの話という印象だったんです。でもいざ自分がやるとなって脚本を読んでいたら、バレンティンとモリーナの愛がすごく切なく迫ってきて。オーロラや蜘蛛女も、これまではモリーナの幻想の中での愛とか死の象徴的な存在としてとらえていたのが、彼女に寄り添って生きているような感じがしたんですね。今はもう少し人間的というか感情的なものも出して、リアルな存在として見せられたらと思っています」

安蘭さんといえば、高い歌唱力を誇った元宝塚トップスターであり、演じるキャラクターの心情に丁寧に寄り添った的確な演技で、作品に厚みを持たせる芝居の人でもある。

「登場したときに観客に強烈なインパクトを残せたらとは思っているんですけれど、最近、お母さんとか奥さんばかり演じていたので…。出てくるだけで観客がのけぞるくらいのオーラとか迫力とか…カリスマ的な何かが欲しいですね。演出や照明、セットなども含め、独特な世界観を作り出せたらな、と思っています」

『CHICAGO』などを手がけた名ソングライターコンビによる美しくドラマティックな楽曲も魅力。

「何度も転調したり臨時記号が多かったり、この作品に取り組もうとする人に戦いを挑むというか挑戦的な感じがするんですね。蜘蛛女なら男性でも低いくらいのキーに合わせられていたりして。でもそこを歌うことで凄みが出るし、こちらの想像力が広がって気持ちも高揚するんです」

しかし、「ただ気持ちよく歌うだけならカラオケでいい」とも語る。

「やっぱり“伝えたい”という思いがあるんですよね。歌は好きだけれど、私はそこに役の気持ちだったり、歌に込められた物語を伝えたいと思う。ストレートプレイの中で表現するような繊細な心情の動きをミュージカルの舞台へも持っていきたいというのが私のスタンスなんです」

今年、芸能生活30周年を迎え、あらためて今、「俳優という仕事が、自分の天職だと感じている」そう。

「演じている瞬間が本当に幸せなんです。劇場の空間が好きだし、一番自分でいられる場所なんですよね」

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ミュージカル『蜘蛛女のキス』 映画を愛する同性愛者のモリーナ(石丸)は、刑務所の獄房で社会主義運動の政治犯・バレンティン(相葉・村井/Wキャスト)と出会う。当初は反発し合っていたふたりだが、いつしか心を通わせていき…。11月26日(金)~12月12日(日) 池袋・東京芸術劇場 プレイハウス 脚本/テレンス・マクナリー(マヌエル・プイグの小説に基づく) 音楽/ジョン・カンダー 歌詞/フレッド・エブ 演出/日澤雄介(劇団チョコレートケーキ) 出演/石丸幹二、安蘭けい、相葉裕樹・村井良大(Wキャスト)ほか SS席1万5000円 S席1万3500円 サイドシート9000円ほか ホリプロチケットセンター TEL:03・3490・4949(平日11:00~18:00)大阪公演あり。https://horipro-stage.jp/stage/spiderwoman2021/

あらん・けい 滋賀県出身。2006年より’09年まで星組トップスターとして活躍。近作にミュージカル『ジェイミー』、舞台『Oslo オスロ』など。最新アルバム『AVANCE』も好評発売中。

※『anan』2021年12月1日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)