成田凌「『ケンチャナヨ』で気持ちが通じ合った」 転機となった出会い
何がなんでもこの仕事を続けると決めたのが、役者人生の第一歩。
19歳で『MEN’SNON-NO』の専属モデルに選ばれた成田凌さん。翌年役者デビューをすると、以降、途切れることなくドラマや映画などに出演し、活躍を続けている。そんな成田さんには、ターニングポイントとして思い当たることが、いくつかあるという。
「デビュー作のドラマはW主演を務めさせていただきました。いま思えば、そのありがたみもよくわかっていないし、撮影の段取りや流れもさっぱりわからないまま飛び込みました。それでも毎日、精一杯向き合いながら撮影に挑んでいたんですが、最終回を撮影していたある日、台本の僕のセリフのところに“泣く”と書いてあったんです。そういえば役者はみんな、泣く芝居ってどうしているんだろう、僕は泣けるのかな…と不安になっていたら、本番直前に共演者の津川雅彦さんが『成田くん、ここのセリフまで僕の目を見ていてくれないかな』っておっしゃって。本番で、言う通りに目を見ていたら自然と涙が溢れてきて、止まらなくなったんですよね。それで、さらっとそういうことをしてくださった津川さんのかっこよさにやられてしまって、僕はこういう役者になりたいんだ、何がなんでもこの仕事を続けていくんだ、と決めました。役者人生の第一歩ですね」
「芝居の面白さをわかるまでは、毎回現場が怖かった」と言うが、2年後、再びターニングポイントはやってきた。
「熊坂出監督の映画『双生』の撮影で、中国に滞在した時のこと。監督と共演者、僕が日本人で、ほかのスタッフさんは中国人チームと韓国人チームの日中韓合作でした。まだお芝居が怖くて、現場でもビクビクしていた僕でしたが、どうにかコミュニケーションをとらなければいけない。そこで覚えたのが韓国語の『ケンチャナヨ』(大丈夫、の意味)。それを周囲のスタッフさんに言い回ってたら、いつの間にか気持ちが通じ合えるようになって。みんな味方で一つのチームなんだと初めて肩の力が抜けたし、同時にお芝居も現場もすごく楽しいと思えるようになりました。初めて脚本に目を通す時は今でもワクワクするし、それがお芝居のモチベーションになっています」
そんな成田さんを最近ワクワクさせたのは、朗読劇『湯布院奇行』の脚本を初めて手にした時。面白すぎて一気に読み終えてしまったという。
「僕が演じるのは、都会の生活に疲れて心がグラグラになってしまった作家の“私”。ある日、導かれるように出かけた湯布院の温泉で、黒木華さんが演じる瓜二つの2人の“謎の美女”に出会い、不思議な体験をするという物語なんですが、観てくださる方はきっと、僕と一緒に一歩一歩進みながらこの物語の沼にハマっていくだろう、と早くも楽しみ。原作を書かれた燃え殻さんの言葉が美しくピュアなところも素敵で、だからこそ奇妙さが粒立ってくるのも魅力の一つです。僕にとって初めての朗読劇もまた、新たなターニングポイントになるはずです」
役者としてあらゆるジャンルから引く手あまたの理由を尋ねると「自分でも不思議ですが、毎回オファーをいただくたびにすごく嬉しいです」と笑顔を見せた。「映画『カツベン!』のオーディションでもそうでしたが、オーディションを受けていた頃は一通り審査が終わり、最後に部屋を出る時に必ず『なんでもやります!』と頭を下げていました(笑)。これが選ばれる理由かどうかはわかりませんが。でも、役をもらって向き合うことで悔しさや楽しさを経験し、それが強く自分の記憶に残ればターニングポイントと言えるんじゃないかな。もちろんみんなに、ターニングポイントはあるある! 絶対にありますよ。そして僕はきっとこの先にも、まだあると思います」
なりた・りょう 1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。映画『くれなずめ』などの主演作を含め今年は5本の出演作が公開。現在、声の出演をした劇場アニメ『竜とそばかすの姫』が公開中。初挑戦となる朗読劇『湯布院奇行』は9月28日(火)~30日(木)、新国立劇場 中劇場にて上演予定。
ジャケット¥196,900 パンツ¥91,300(共にエトロ/エトロ ジャパン TEL:03・3406・2655) その他はスタイリスト私物
※『anan』2021年9月22日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・伊藤省吾(sitor) ヘア&メイク・高草木 剛 取材、文・若山あや
(by anan編集部)