「トイレに行く前の準備」が重要? 名医が教える、毎朝5分の“便秘”解消術

2021.7.25
ちゃんと食べているのになぜか出ない…。それは腸自体の動きが鈍くなっているからかもしれません。外から働きかけて腸を物理的に動かすとっておきの体操を、便秘外来の名医が伝授。毎朝5分の新習慣で、「出す」力をよみがえらせて!

外から効率よく刺激して、「腸力」の低下を予防。

腸を健康に保つためには食事の見直しが大事、とは多くの人の知るところ。けれど、食物繊維や発酵食品を意識して摂っているのになぜか便秘気味…というなら、

「腸の動きや反射が鈍く、便を出す力が弱まっているサインです」

とは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん。

「30代以降の女性に多いのは、加齢による筋肉の衰えや、自律神経の乱れが原因となっているケース。また、便意を我慢しがちな生活習慣も便秘を招きます」

いずれの場合にも有効なのが、便座に座った状態で腸に働きかける運動。自身が受け持つ便秘外来の診療で大きな効果を発揮しているという「トイレ体操」の、最新バージョンを教えてもらった。

「カギとなるのは、体をひねる、折るという動き。この2つの動きで腸を物理的に動かします」

最初は反応が鈍くても、日々続けることで、腸が次第に本来の働きを取り戻していくという。

「便が長時間とどまると腸内環境が悪くなり、自律神経の働きがアンバランスになってさらに便秘に。悪循環を断ち切るためには、食事の工夫とともにこのトイレ体操を。腸の機能は30代頃から徐々に低下していきます。便秘の自覚がなくても、ぜひ習慣に」

なんで出ないの? 足りていないのは…

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自律神経のバランス

緊張時に活発になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経の働きによって、体の機能をコントロールするのが自律神経。「2つのうち、副交感神経が優位な時に腸の働きは活発になります。ストレスによって交感神経が優位な状態が続くと、腸の働きも鈍くなり、便秘に。それがさらにストレスを呼び、悪循環を招きます」

大腸の蠕動運動

「大腸は、広がったり縮んだりする“蠕動”を繰り返すことで内容物を送り出しています」。この蠕動運動が弱まる原因は、「自律神経の働きがアンバランスなことや、腸壁を刺激する役割がある食物繊維が足りていないこと、それにより腸内環境が悪化していることなどさまざま。運動に加えて、食事やリラックス法も見直しましょう」。

排便反射

「便が直腸に溜まると肛門付近の筋肉が反応し、脳から排便の指令が出されることを排便反射といいますが、この機能も、加齢とともに衰えていきます」。また、トイレでの姿勢も「出やすさ」と関係が。「上体が起きていると直腸が曲がり、これも反射を妨げる一因に。洋式トイレが主流の今、ほとんどの人がこの状態といえます」

筋力

「便を押し出すためには腹筋と肛門括約筋の働きが大切です。が、筋力は一般に、25歳前後から落ちていく。これらの筋肉を意識して使うことが便秘予防のカギ」。自宅で過ごす時間が増えていることも、お腹やお尻の筋力低下に拍車をかける昨今。ぽっこりと出たお腹は、筋力が弱くなっているサインかも。早めの対策を。

トイレに行く前にしたいこと

トイレ体操の前に小林さんがすすめるのが、下記の4つの準備編。「起き抜けに水分を摂ることで腸を刺激し、呼吸で副交感神経を優位に。腸の血流を良くする運動もいいですよ」

【1】水分を摂る

朝起きたらコップ1杯の水分を。「胃が目覚めると腸も連動して動きだすしくみを利用するのが狙い。胃に重みをかけるイメージで、水分は一気に飲むのがコツです」。ちびちびではなく、ごくごく飲むのが正解。「続けて朝食を摂り、さらに胃腸を刺激しましょう」

【2】ワンツー呼吸

「自律神経を唯一自分でコントロールできる方法が、腹式呼吸です」と、小林さん。「お腹を膨らませながら息を吸い、続けて長くゆっくりと吐くことで副交感神経にスイッチが入り、腸もリラックス。吸う時間に対し、吐く時は2倍の時間をかけるのがコツです」

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1.両手で三角形を作り、お腹に当てる。4つ数えながら鼻から息を吸い、お腹を膨らませる。
2.口をすぼませ、お腹を凹ませながら、8つ数えつつ息を吐き出す。数回繰り返す。

【3】もも上げタッチ

脚の付け根を折ってももを持ち上げる動きは、普段怠けているお腹まわりの筋肉を刺激する効果が。ゆっくりと、けれどリズミカルに行うことがポイント。「お腹まわりの血流が良くなって腸も温まり、便通がスムーズに。頑固な便秘に悩むなら、日常的に行うことをおすすめします」

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1.足を肩幅に開いて立ち、リラックス。息をゆっくりと吸う。
2.息を吐きながら右膝を持ち上げ、その下で両手を合わせる。左右交互に5回ずつ行う。

【4】スクワット

膝を曲げて、お尻を後ろに突き出すおなじみの動き。これが、腸の活性化にもお役立ち。「もも上げと同様に腸が温まるだけでなく、上体がやや前傾することで直腸と肛門が一直線になり、排便反射を促す効果も期待できます」。椅子の背につかまって行ってもOK。

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1.足を肩幅に開いて立ち、両手をまっすぐ前に伸ばす。息をゆっくりと吸う。
2.息を吐き、お尻を後ろに突き出す。膝がつま先より前に出ないように。5回繰り返す。

小林弘幸さん 順天堂大学医学部教授。便秘や自律神経に関する研究の第一人者として多方面で活躍。タレントの松本明子さんの頑固な便秘も治した秘密の体操を一冊にまとめた新著『魔法のトイレ体操』(新星出版社)が、好評発売中。

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※『anan』2021年7月28日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・白男川清美 ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ) モデル・メイ・パクディ イラスト・別府麻衣 取材、文・新田草子

(by anan編集部)