タブー視される社会問題にも注目「NEUT Magazine」 WEBだからこその強みとは

2021.7.15
目的意識に共感し、取材対象者、クリエイター、読者などが、立場まで取っ払い集う、ポジティブに混沌としたNEUTコミュニティ。重なるほどにダイナミズムを生み始めた、若者たちの初動とは。

スパイスカレーのような、集い、混ざるほどにコクの出る共闘。

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環境問題からセックスまで社会の課題を幅広く取り上げ、アクティビストへのインタビューなど読み応えのある記事を発信する「NEUT Magazine(ニュート マガジン)」は、タブー視されやすい物事もニュートラルな視点で捉えることをテーマに立ち上げたウェブマガジンだ。編集長で取締役社長の平山潤さんと、副編集長の南のえみさんが運営している。たった2人で?

「もっと大きな集団だと思われることが多いんですけど、立ち上げた当初から2人とか3人でやっています」(平山さん)

平山さんは経営と企画も担っているため、編集仕事は南さんが中心。必然、制作スタッフは外へ外へと拡張していくことに。

「最初は友達の友達を紹介してもらったりしていました。小さなメディアだったので、お互いを信頼できて、やろうとしていることを理解してくれる人でないと難しいと思ったからです」(平山さん)

扱うトピックには、個人のアイデンティティに関わる繊細なものも少なくないため、コンセプトや制作への姿勢も含め、共感してくれる人と作り上げていくことを大事にしてきた。それは、取材を受ける側にもいえること。

「ライター、フォトグラファーといったクリエイターたちの表現をできるだけ尊重するのはもちろんですが、取材を受けてくれた人も細かいところまで納得できる記事づくりを意識しています。取材する側、される側という立場を超えて、一緒に作っているという感覚です」(南さん)

おかげで、取材対象者から「ニュートの記事が名刺代わりになっている」と言われることも。

ウェブマガジンとはいえ、会うことで築かれる人との関係や、みんなが集い体験を共有する“場”は不可欠なものだと平山さん。例えば、創刊1周年を迎えた’19年のイベントには、一晩で500人が集まった。クリエイターも読者も、大人も若者も、ニュートマガジンを好きで関わってくれるすべての人からなるコミュニティを目の当たりにし、つながっている実感を得られた。

「オンラインメディアだからこそ、イベントがあればぜひ参加したいと思ってくれる人がたくさんいて、その熱量を感じました。読者から直接フィードバックをもらえることは私たちのモチベーションにもなります」(南さん)

ところが、コロナ禍である。昨年はイベントを開催できず、代わりに、初めて紙の雑誌を発行することに。読者の学生や社会人18人と共に特集ページを制作した。撮影以外は完全にリモートで不安もあったが、やればできるもの。約4か月がかりで完成し、刊行記念のポップアップイベントも開催した。そこでも学生のメンバーが手伝いに来てくれたという。

「いつのまにかメンバー同士も仲良くなっていてうれしかったですね。オンラインでもこんな関係が作れるんだなと。やっぱり世界中どこにいてもスマホ一つでつながれるのは、オンラインの強み。ニュートを好きでいてくれる人がコミュニティ化していったのは、ウェブメディアだからこそだと思います」(平山さん)

引き寄せられてくる人は、そもそも価値観が近いはずだという安心感も。今の時代、オンライン/オフラインを問わず人との出会い方は様々だが、根っこの部分の価値観を初めから共有できているとしたら、たしかに関係は築きやすい。1つのウェブマガジンを核に、クリエイター、出演者、読者、みんなのコミュニティが生まれたのは、他メディアが正面から取り上げにくいテーマにも真摯に取り組んできたニュートマガジンならではの現象なのかもしれない。

緩やかに、自在に、共通の価値観で結ばれている仲間がいることが、なによりも心強いのだ。

ニュート マガジン “Make Extreme Neutral”をテーマに、タブー視されてきたセックスや政治、人種などの社会問題に注目。これらを“先入観にとらわれないニュートラルな視点”から届け、選択のヒントを提供するメディア。

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右・平山 潤(ひらやま・じゅん) 編集長、NEUT MEDIA株式会社CEO。人が好き。コロナ禍で人と一緒に食事できないことが一番きつかったそう。左・南のえみ(みなみ・のえみ) 副編集長。平山さんの友達の友達だったことから入社。編集もライターも務める。

※『anan』2021年7月21日号より。写真・大嶋千尋 取材、文・黒澤 彩

(by anan編集部)