8人きょうだいは個性派揃い!? コミック『ロジックツリー』で描く家族模様
近くて遠い家族だから、信頼できるし、嘘もつける。
27歳の双子の男女を筆頭に、早々に家を出たマイペースな次男、いつもイライラしている三男、主人公でしっかり者の次女・螢(けい)、一心同体のような双子の弟、おしゃまな10歳の末っ子という構成。プライバシーもなければ、親からの過度なプレッシャーもなく、家庭内は常にワチャワチャ。そんななか、螢はできるだけ人や自分に正直に生きたいと思っているが、顔を合わせれば悪態をついてくる気の荒い1歳上の兄が、あろうことか螢の同級生と付き合っていることが発覚。
「きょうだい間では嫌なヤツでも、外面は意外とよかったりするような、家ならではの社会性のなさを描けたらいいなと思いました。家族って遠慮がないようであるというか、友達に対してのほうが本音を言えたり、何でも見せられたりする。そういう意味でも不思議な関係性ですよね」
一方で双子の弟、則(のり)と平(たいら)はいつもふたりで何かを企んでいて、周りからもやや気味悪がられている。
「双子の話をずっと描いてみたかったんです。8人のなかに双子が2組いるのですが、一卵性双生児の則と平は記憶を共有したり、お互いに似せて同一人物になろうとする。長男長女は二卵性双生児で顔も性格も違うんですけど、双子というとっかかりができてしまった人たち。いろいろ描けて満足しました(笑)」
螢は家族のごたごたに巻き込まれながら、尊敬する次兄の同級生だったイケメン編集者の柚木にあれこれ相談をしたり、父の義理の祖母と妹が暮らす豪邸に“避難”したり。大瀬良家の外の大人たちと接することで、自分の中にはなかったような感情を理解するようにもなっていく。
「たいていの人は、見せたい自分と本当の自分の間にズレがあるものだけど、螢ちゃんにはそれがわかっていなかったのだと思います。といってもわかりやすい起承転結があるわけではなく、螢ちゃんはまだ“途中の人”。最初の想像とは違う展開になりましたが、終わりが近づくほど描くのが楽しくなっていました」
近くて遠い家族だからこそ、いろんなことがわかってしまう面倒くささと愛おしさが、数々のエピソードから浮き彫りに。そして後半、螢の恋のゆくえにも乞うご期待!
雁 須磨子『ロジックツリー』上・下 8人きょうだいの5番目で苦労性の螢は、彼らに振り回されたり、編集者の柚木のことが気になったり。螢の成長と大瀬良家の個性的な面々の悩みを描いた物語。新書館 各759円 ©雁 須磨子/新書館
かり・すまこ マンガ家。1994年デビュー。BLから青年誌、女性誌まで幅広く活躍。『あした死ぬには、』(既刊3巻)を「Ohta Web Comic」で連載中。
※『anan』2021年7月21日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)