adieuこと上白石萌歌「震えあがりました(笑)」 “一発撮り”を振り返る

2021.5.29
“一発撮りパフォーマンス”を届ける音楽系YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」。2019年11月15日、記念すべき「THE FIRST TAKE」第1回で歌声を披露したのは、上白石萌歌さんによる別名義プロジェクト、adieuだ。

息遣いをそのままに出す感覚を大事にしました。

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彼女が歌う『ナラタージュ』は、2017年に公開された同名映画作品の主題歌としてリリースされたもの。当時は歌っているのが誰かというのは、17歳という年齢以外一切のプロフィールが非公表だった。それから2年後、adieuとして音楽活動をあらためてスタートした彼女。この「THE FIRST TAKE」のステージが公の場での、初めての歌唱パフォーマンスとなった。

「もちろんライブもしたことがなかったですし、音楽番組にだって出演したこともなかったころ。まだ、自分の中でもadieuとはどういう存在なのか模索しているような状態で歌わないといけない。しかも、一発撮りだと聞いてこれはちょっと大変なことだなって震えあがりました(笑)」

とはいえ、当時でも“上白石萌歌”としてのキャリアは十分。

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「もともと舞台に立つような、始まったら終わりまで走り抜けることをやるのは好き。収録の前にも、ウォーミングアップや始める前の呼吸や息遣いを、いつも通り、そのままにやってくださいと言われて。ああ、そういう生の感覚を出せたらいいんだなと理解しました。一発撮りだからこそ、込めた感情がダイレクトに届くような気もして。これは自分の存在を知ってもらういい機会だなと思って、肩の力を入れすぎないで歌ってみようって思いました」 

また、用意されたのが白い空間だったのも、気に入ったという。

「白い箱の中にひとりポツンと立たされるのはすごく孤独を感じました。でも、その閉鎖された場所であることが、意外と歌うのにはよかったんです。より音楽と密に繋がれるような感じがして、すごく集中できました」

白い空間は「THE FIRST TAKE」を象徴するもののひとつ。それがこのシリーズを引き立てているということに、他のアーティストの動画を観ていて気づいた、とも。

「立っているのは、同じ白い空間なんですけれど、立たれるアーティストによっていろんな白に見えるんですよね。ああ、この人はこんな音で空間を包んでいるんだなって、その人が向き合っている音の質や色合いみたいなものが感じられるのがいいです。だから『THE FIRST TAKE』で発見して、好きになった歌手の方もいますし、もともと好きだった方をより好きだなって感じることも。気になるアーティストの方の映像の公開日だと、普通にスマホ片手にプレミア公開の時間を待って、観ることもあります(笑)」

またつい先日、『ナラタージュ』『天気』以来1年半ぶりとなるパフォーマンスを披露。『よるのあと』と、リリース前の公開となった新曲『愛って』をオリジナルアレンジで届けてくれた。

「実は、今回の収録のほうが最初よりよっぽど緊張したんです。最初はどういうものかがわかっていなかったですから(笑)。でも、今はその影響力や認知度も知っているので。しかも、バンドセットでの一発撮りで。それもまた新しいチャレンジでした。生音の感覚はひとつの音楽をみんなで作る実感があって、特別な場所にふさわしい歌が歌えたんじゃないかなと思っています。『THE FIRSTTAKE』は、ひとつひとつの曲を深く受け止めてくれる。それって、聴く側だけでなく、アーティストにとってもすごく大きな力を与えてくれるものなんじゃないかなと思います」

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アデュー(かみしらいし・もか)2019年ミニアルバム『adieu1』で音楽活動を本格化。今年4月、1年5 か月ぶりに新曲『春の羅針』を配信。6月5日に『愛って』を配信する。6月30日にはミニアルバム『adieu2』を発売。

※『anan』2021年6月2日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス) スタイリスト・服部昌孝 ヘア&メイク・坂本怜加(アルール) 取材、文・梅原加奈

(by anan編集部)