女性たちの「伝えられてない声を伝えたい」 フェミニズムを知るための3冊

2021.2.6
SNSやカルチャーシーンを介して身近になってきたフェミニズム。現在は第4波といわれ、性暴力に抗議する「フラワーデモ」のような社会運動にもつながっている。その立役者のひとりが、松尾亜紀子さん。

フェミニズムの歴史を俯瞰してみたい人のための3冊。

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「黙っていても良くならない。声を上げなければと感じる10年でした」

出版社勤務時代からフェミニズムに通じる本を手がけ、2018年に専門出版社「エトセトラブックス」を立ち上げた。『エトセトラ』と名付けた雑誌は、VOL.1で「コンビニからエロ本がなくなる日」を特集。大いに話題となった。

編集長を毎号替えるスタイル。最新号VOL.4の特集はバックラッシュだ。編集長を、#KuTooを提唱した石川優実さんが務める。

「フェミニズムが盛り上がる一方で、バックラッシュと呼ばれる揺り戻し、反フェミニズムも強くなっています。石川さんとの打ち合わせを重ねる中で、日本では、欧米や韓国ほど#MeTooの熱気が高まらなかったのはなぜかが見えてきた。実は日本でも女性運動は連綿と引き継がれていたのですが、2000年代に起きたバックラッシュで世代が分断されてしまったことが大きい。また、石川さん自身がバックラッシュに遭っていたので、女性運動の歴史を知るとともにそれについて学んでみようと考えました」

石川さんへのヘイトスピーチの悪質さはご存じの読者もいるだろう。

「心身ともに傷ついていた石川さんが、先輩たちの体験を聞く取材を重ねるにつれ、みな仲間で連帯して苦境をはね返してきたとわかり、元気を取り戻してきたんです」

松尾さんはシスターフッド(女性同士の連帯)の大切さを強調する。

1月に専門書店もオープンさせた松尾さんからのおすすめ本は下記。

刊行から15年、いままた本国フランスで熱い支持を集める22万部超の『キングコング・セオリー』は、性暴力の問題やポルノグラフィー、身体の尊厳について語り尽くす。「著者自身が性被害当事者で、被害事実を受け入れる過程を自らの言葉で語っています。母性の過大評価にしても、『その言葉は誰に言わされているのだろうか』『男性が権力の道具にしているのではないか』などと常に問いかける。過激ともいわれるけれど、真摯なフェミニズム書です」。

『ウーマン・イン・バトル』は、女性運動の歴史を俯瞰するのには格好のバンド・デシネ。「世界の女性たちの闘いを知れば、その連なりに自分たちがいるのだと感じることもできます」

女性の数だけフェミニズムの形がある。「伝えられていない声を伝えたい。『専門の出版社や書店なんてあるんだ』という驚きをきっかけにフェミニズムの枠が拡がっていくのを願っています」

『ウーマン・イン・バトル 自由・平等・シスターフッド!』マルタ・ブレーン著 イェニー・ヨルダル絵 枇谷玲子訳 1600円(合同出版)

『エトセトラ VOL.4』1300円(エトセトラブックス)

『キングコング・セオリー』ヴィルジニー・デパント著 相川千尋訳 1700円(柏書房)

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『エトセトラブックス BOOKSHOP』東京都世田谷区代田4-10-18 ダイタビル1F 木・金・土曜12:00~20:00(週に3日のみ)shop@etcbooks.co.jp

※『anan』2021年2月10日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・三浦天紗子

(by anan編集部)