白は集中力、オレンジはリラックス…プロが教える“照明”選びのコツ

2021.2.4
ちょっと暗くて温かみのあるトーンの光は部屋の雰囲気をムーディに、官能的に演出するポイント。照明選びのコツを、プロのデザイナーがアドバイスします。

官能を高めることで人間関係までもスムーズに。

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意外なことに、対人関係の悩みを解決するためにも官能がひとつのカギになる、と公認心理師の山名裕子さん。

「心理学では、“官能”はセクシュアルな意味に限らず、心を開いたリラックス状態のことも表します。心を開くと他人の言動を快く受け止めることができて、結果、包容力がある印象を与え、人との対話がスムーズになるんです」

官能を高める=心を開くには、さまざまな感覚を意識するのが大事だそう。

「官能には、五感という意味も含まれます。現代人は、情報収集の約8割を視覚に頼っています。そのため脳の視覚に関わる部分が疲弊し、触覚や嗅覚などは鈍くなりがち。部屋の照明や香り、肌着などを工夫して官能=五感を高めて。触覚や嗅覚から得られる心地よさがホルモンにも影響し、幸福感に満たされます。心理的な余裕は他人にもすぐに伝わるので、より落ち着いた雰囲気を身につけられるはずです」

ナチュラルな陰影の照明が心を解放させる。

山名さんによると、光の色や明るさは、心の解放度=官能性に影響を及ぼすという。

「色彩心理学において、白く明るい光は集中力を高め、オレンジの光はリラクセーション効果をもたらすとされます。また、電気のない時代を長く過ごしてきた人類にとって、一日中明るい状態は不自然。部屋の明るさは、太陽光と同じように夜になるほど暗くしたほうがリラックスできます」(山名さん)

照明デザイナーである奈良千寿さんも、リラックスするなら暗いオレンジ系の光が適している、と説明する。

「隅々まで青みがかった強い光に照らされた部屋で過ごすと、心身ともに緊張してしまいます。温かみのある光を使って多少陰影がつくようにした部屋のほうが、人はくつろげるんです。特に寝る前、リラックスして過ごしたい寝室にはオレンジ系の光を使うのがおすすめ。ワンルームなら照明をいくつか設置して、明るい作業用の光とオレンジ系の癒し系ライトを切り替えるとよいでしょう」(奈良さん)

光の色を変えるには、電球のスペックをチェック。

「色温度が3000K(ケルビン)以下、一般的には“電球色”と表記されたものを選びましょう。色温度とは、光の色を表す数値のこと。昼間の太陽なら6500Kくらいで、ちょっとムーディなレストランだと2700Kくらいです。数値が高いほど青みがかった光になり、低いほど赤みがかった光になります」(奈良さん)

3つの照明で、リラックスできるパーソナルスペースに。

部屋の照明は1つに限らず、複数設置を。時間帯や過ごし方によって光を変えれば、ワンルームでも雰囲気をガラリとチェンジできる。

1、上から照らす光

部屋全体を照らすメインライトには調光機能を。

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天井に取りつける照明には、部屋全体を照らす役割が。「仕事など作業をするときは明るく、夜は暗めに調光できる電球を選ぶとベター。高い位置から降り注ぐ光はまぶしく感じますが、天井から下げるペンダントライトだと、あまりまぶしく感じません」(奈良さん)。Anoli 1¥78,000(Nuura/リビング・モティーフ TEL:03・3587・2784)

2、低めの位置の光

寝る前の落ち着いたムードづくりに大活躍。

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高い位置に設置した照明を消して、低い位置だけの光にして、雰囲気を切り替え。「就寝時のナイトスタンドとしても使えるライトをベッドサイドに置きリラックスモードに。自然な陰影と安心感を部屋にプラスしてくれます」(奈良さん)。STONE TABLE¥62,800(トム・ディクソン/トム・ディクソン ショップ TEL:03・5778・3282)

3、上向きの光

間接照明ひとつでおしゃれ度がワンランクアップ。

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余裕があれば取り入れたいのが、下から上を照らし、壁に光を反射させるアッパーライト。「間接照明には、部屋を官能的に演出する効果が。幻想的な月の光も、元は太陽の反射光ですよね。ライトを床に転がすだけでも、部屋がおしゃれに見えますよ」(奈良さん)。TARS¥100,000(ニューライトポタリー TEL:0742・31・5305)

山名裕子さん 公認心理師。「やまなmental care office」代表。自身の事務所での相談のほか、女性誌や情報番組等の監修を手がける。著書『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)など。

奈良千寿さん 照明デザイナー。照明デザインスタジオ「NEW LIGHT POTTERY」を立ち上げ、陶器や真鍮、ガラス、木材などさまざまな素材を取り入れたオリジナル照明の開発、店舗や住居の照明計画を手がける。

ローテーブル¥72,000 モヘアブランケット¥24,000(共にラプアンカンクリ) フラワーベース¥23,000(ハビタ) 以上タイトルズ TEL:03・6434・0421

※『anan』2021年2月10日号より。写真・田村昌裕(FREAKS) スタイリスト・中根美和子 取材、文・風間裕美子

(by anan編集部)