オバちゃん役も楽しく 元宝塚トップスター・瀬奈じゅん「年の功なのかな」

2020.11.21
幸福論。妙にドキッとさせられる題名のこの舞台、現代能楽集X 『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」よりは、能の『隅田川』と『道成寺』から着想を得て書き下ろされた2本の現代劇からなる作品。
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「元宝塚トップスターという肩書からか、お金持ちや元女優の役をいただくことが多いんですね。でも私は、そのイメージを崩すというか塗り替えていきたいと思っているんです。いまの自分は、ヒロインっていう年齢でもなければ、誰かのお母さんというにも中途半端。でもこの年齢だからこそ演じられる役もあるんだって、いますごく感じているんです」

「隅田川」で瀬奈じゅんさんが演じるのはカウンセラー。

「この舞台のお話をいただいた時、演出の瀬戸山(美咲)さんが当て書きでやりたいとおっしゃられたんです。正直、最初は悩みました。演じるのが嫌なわけではなく、観る方に役の中の人物ではなく“私”として見えてしまうとしたら、それは役者としてどうなんだろうっていうのが気がかりで。でもそれを家族に話したら、『あなただから伝えられることもあるんじゃない?』って言われて。実際、完成した台本は私の経験も含め女性たちの思いをリアルに描いてくださっていて、何の疑いも躊躇もなく取り組めています」

一方の「道成寺」では、小説教室で教えている作家役に。

「この作品のなかで生徒から、結婚していないあなたにはわからないということを言われるシーンがあるんですけれど、まさに役者もそうですよね。でも体験していようがいまいが、勉強したり想像力を働かせたりするのが仕事。だから遠慮なく演じていきたいなと思っています」

こちらは家族を主軸とした物語。

「私が絡むのは父親である高橋和也さんだけなんです。この役に関しては、父親の人生観や考え方を引き出す道具だと思っています。私自身のことはおいておいて、その役割をきちんと果たせたらと思っています」

これも役割に徹したのか、ドラマ『今日から俺は!!』の三橋の母親役の“オバチャン”ぶりに驚かされた。

「流れに身を任せる感じで引き受けちゃったけれど、すごく楽しかったです。いまの私にもう“イメージ”みたいなものって必要ない気がするんです。自然な自分でいられるようになれたのは…年の功なのかな」

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現代能楽集X 『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」より 運命的に出会う3世代の女性たちを描いた「隅田川」。恵まれた家族がさらなる幸福を激しく求める「道成寺」。2作を通じ、現代における本当の幸福とは何かを問いかける。11月29日(日)~12月20日(日) 三軒茶屋・シアタートラム 作/長田育恵(弐「隅田川」)、瀬戸山美咲(壱「道成寺」) 演出/瀬戸山美咲 出演/瀬奈じゅん、相葉裕樹、清水くるみ、明星真由美、高橋和也、鷲尾真知子 一般7500円ほか(税込み) 世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03・5432・1515(10:00~19:00) https://setagaya-pt.jp/ 撮影:ヤン・ブース

せな・じゅん 1974年4月1日生まれ、東京都出身。出演作に、ミュージカル『ラ・マンチャの男』、ドラマ・映画『今日から俺は!!』など。近年は社会貢献活動も精力的におこなっている。

※『anan』2020年11月25日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・藤原リカ(ThreePEACE) インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)