「ガス溜まり」は早食いが原因 香味野菜や食後の柑橘類で対策を

2020.11.5
憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「お腹のハリ」です。

せっかちな人は要注意! よく噛む習慣を。

Daily

便秘は女性に多い悩みですが、次いで多いお腹のトラブルが「ガス溜まり」です。お腹が張って苦しい、静かなときに限って音が出そうになり緊張する…、そんな声をよく聞きます。 ガスが溜まっているとき、体では「気滞(きたい)」が起きていると考えられます。中医学でいう「気」は、体を動かすエネルギーを意味し、これが滞るとさまざまな不調が生じると考えます。月経前に胸が張って痛むほか、イライラするなどの情緒不安定感、不眠など、メンタルにも影響大。症状が安定しないことも気滞の特徴で、気持ちが浮き沈みする、便秘と下痢を繰り返す、など相反する状態を行ったり来たりします。

箸置きで早食いを予防。補気(ほき)の食材も控えめに。

こうした気滞体質の人はたいていせっかちで、食事も早食いの傾向が見られます。短時間で済ませる食べ方は、食べ物と一緒に空気をたくさん飲み込んでしまうため、ガスが溜まる要因に。また、よく噛まないで食べることは消化吸収と気の配分を司る「脾(ひ)」にも負担をかけるため、さらに気の滞りを生んでしまいます。

早食いでガスが溜まりがちな人はまず、ゆっくり噛んで食べることから始めましょう。僕のおすすめは、食事の際に箸置きを使うこと。ひと口食べたら箸を置き、よく噛みます。最後までそれで通すのが難しければ、せめて最初のひと口めは100回噛むことを目標に。それだけでも、食べるスピードは落ち着いていきます。

同時に食事の内容も見直しを。気を補う働きのある、いもや豆類をたくさん食べていませんか? 補気食材は元気のない方には積極的に食べてほしいものですが、気が十分足りていて流れが滞っている場合は控えめにするのがベター。ほくほくした食べ物が多くなっていないか、チェックしてください。そして、食後はみかんやグレープフルーツなどの柑橘類を。香りのよい食べ物は、気の巡りを助けてくれるのです。セロリやしそ、ミントなどの香味野菜も有効です。

気滞気味の方は、何ごとにもエネルギッシュに取り組むタイプが多いようです。知らない間にストレスが溜まってしまい、それがもとで気が滞っていることも少なくありません。お腹のハリは体からの大事なサイン。「たかがガス」と軽視せず、養生を心がけてくださいね。

さくらい・だいすけ 漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。https://yurukampo.jp/

※『anan』2020年11月11日号より。イラスト・momokoharada 文・新田草子

(by anan編集部)