あなたの「骨」は大丈夫? 足腰の冷え、記憶力の低下はサインかも

2020.9.21
憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「骨」です。
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体表にある器官と違って、直接目にする機会がないのが骨や内臓です。とりわけ骨は、大きなケガなどをしない限り、普段は意識にのぼることすらないのではないでしょうか。けれど、日々私たちの体重を支えていて、活動のためにはなくてはならない存在。今回は骨について考えてみましょう。

骨が属しているのは歯と同じ「腎(じん)」のシステム。腎は五臓の中でもとりわけ重要な働きを担うところです。ストーブのように熱を起こして体を温めるほか、水分の分配をコントロールするなどさまざまな役割を持ちますが、同時に発育や成長、生殖を司る場所でもある。つまりエイジングと密接に関係しているところなのです。

よって腎が弱ると、熱配分のアンバランスによる足腰の冷えやのぼせのほか、やる気や記憶力の低下など、いわゆる「老化」と呼ばれる現象が起きてきます。骨が弱ることもそのひとつ。高齢者は転倒で骨折しやすくなりますが、これも腎の力の衰えによって骨がもろくなるからなのです。

将来の体のことも考え、腎の養生を習慣に。

人は腎のエネルギー「腎精(じんせい)」を先天的に持って生まれてきますが、何もしなければそれは、年齢とともにどんどん減っていきます。腎を健康に保つには、この目減りしていく腎精を補うことがカギ。いくつか方法がありますが、腎の衰えは下半身から現れるので、まずは腰から下を冷やさないようにします。通勤途中のウォーキングなどで適度な刺激を与えるほか、夜は湯船に浸かって一日の冷えを取り除くようにします。デスクワークで座りっぱなし、という人はぜひ習慣に。

そして、補腎(ほじん)に欠かせないのがやはり食養生です。筋や骨を強くする「強筋骨」の作用がある食べ物を摂りましょう。山芋、カリフラワー、キャベツ、ぶどう、いわしにうなぎ、たこ、牛すじ。変わったところではクジラ肉もいいでしょう。いずれも腎精を増やすのに有効ではありますが、腎の補強は短時間ではできないので、日々コツコツと食べることを心がけましょう。

年齢とともに腎は確実に弱っていきます。とくに女性のほうが骨粗鬆症のリスクが高いことは、西洋医学でも指摘されているとおり。若いからまだ大丈夫と油断せずに、腎を養う生活は早めに始めるのが得策です。

さくらい・だいすけ 漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。https://yurukampo.jp/

※『anan』2020年9月23日号より。イラスト・原田桃子 文・新田草子

(by anan編集部)