日本の「スーパーシティ構想」 2030年頃までに実現する?

2020.8.11
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「スーパーシティ構想」です。

遅れている日本。地域の課題解決に活用を期待したい。

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「スーパーシティ」構想を盛り込んだ、国家戦略特別区域法(特区法)の一部を改正する法案が成立し、6月に公布されました。特区法とは、「世界一ビジネスをしやすい環境をつくること」を目的に、地域や分野を限定して、規制や制度を緩和したり、税の優遇などを行ったりする法律です。

AIやビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変える街づくり「スマートシティ」化は世界中で計画が進んでおり、日本はだいぶ遅れています。スーパーシティとは日本独自の言葉で、スマートシティに防災や社会福祉の要素を加え、地域住民のデータを連携して管理することで、効率のいい都市計画を2030年頃までに実現しようとしています。スーパーシティ構想では、自動運転、ドローンによる配送、テレワークやオンライン教育、オンライン診療、キャッシュレス決済、エネルギーや水の無駄のない管理など、生活全般を網羅しようとしています。

スマートシティ計画が最も進んでいるのは中国。医療分野はテンセント、人の動きはアリババというふうに、いくつもの大企業が牽引しており、各企業の持つデータベースを統合して一体運用。杭州市や雄案新区などで進められています。カナダのトロント郊外でもGoogleが中心になり、計画を進めていましたが、個人情報の扱いに不安があると住民から反対の声があがり、計画は中止してしまいました。

今法案でも懸念されたのは、個人情報が自治体に管理されるのではないかということでした。内閣府の国家戦略特区担当の審議官は、データ管理は一企業や一行政が一元的に管理するのではなく、必要ないときは遮断されるため、過度に心配する必要はないと話していました。ただ、現在の個人情報保護法は弱いので、個人が嫌だと思えば、すぐに自分のデータを切り離すことができるよう、法律を強化すればよいのではないかと思います。

内閣府は現在、スーパーシティのアイデアを各自治体から募集しています。技術主体の実験的なものではなく、高齢化や過疎、災害対策など、地域の課題解決を目的にした街づくりであることが大前提であってほしいと思います。

hori

ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。

※『anan』2020年8月12日-19日合併号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)