ROLAND、ホストの才能がないから今がある!? 「必要なのは…」

2020.8.1
子供の頃、私たちの前には真っ白な未来があった。年を重ね、一つずつ何かを選ぶなかで道は絞られ環境や現実と折り合いながら、人は大人になっていく。ただ、未知の何か光るものが、自分の中に眠っているという“可能性”は、いつになっても失われることはない。持てる力を発揮できるフィールドが、きっとすべての人にある。実業家のROLANDさんに、ご自身の経験をもとに“才能論”を語っていただきました。

才能を磨く魔法なんてない。努力あるのみさ。

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才能って、英語で言うと「gift(ギフト)」。才能っていうのは確実にあると思うけど、それはあくまで“贈り物”で、自分では意図しないところで発生するもの、選べないものだと考えています。俺にどんな才能があるかと考えたら…やっぱりトークの才能かな。伝えたいことを何かに例える表現力、1つの質問に対して3つのアンサーを用意して、TPOに合った一つを瞬時に選ぶ力は人より優れていると思う。もちろんそれは日々全力で目の前の相手を楽しませたいと思うなかで気づいた特性ではあるけれど、才能があるから得意で好きになれたし、得意だから人に褒められて伸びた。そう考えると好きと思えること自体が一つの才能。

だからどんな才能があるかわからないという人は、何をしているときに心が動くのか、一度自分と対談してみてほしいですね。「お前は何してるときが一番楽しいんだ?」ってね。そこで好きと思えるものを見つけたら「やるか、やらないか」じゃなく「やるか、やるか」。「才能を伸ばすには何かコツがあるんじゃないか」と自己啓発本とかに魔法の言葉を求める人も多いけど、より良い自分になろうとするならもう努力しかない。寝ていても成長できるような甘い世界はないんです。

そして憧れの姿を明確に思い描くこと。こと後輩の育成に関しては言葉より、俺がかっこいい姿を見せることが一番だと思っています。男は「ジムに行け」と毎日言われるより、一度スポーツカーに乗せてもらって「お前も乗れるようになれよ!」と言われたほうががんばれる。女性も同じですよね? 周りに「きれいになれ」と言われるより、ランウェイを歩くトップモデルの姿を見るほうが向上心は湧くというもの。

とはいえ夢中になれるものを見つけても、年齢のせいにして「もう遅い」と諦めてしまう人もいるかもしれないですね。でも年齢なんか関係ない! と俺は強く思います。よけいな知識に邪魔されて身動きとれなくなっているなら、無知だった頃の自分を思い出して、一歩踏み出してみてほしいな。俺だって自分の店を持った1年前は、経営に関してまったくの素人。理想を追求するあまり「無謀だ」と笑われた過去もあります…。でも自分の感覚を信じて突き進んだら、その無謀なまでのこだわりが評判を呼んで店は繁盛した。まずはやってみる! そういう無知ゆえのアグレッシブさはいくつになっても必要じゃないかな。

もし天性に恵まれていなかったとしても、才能がないことも一つの才能。意外かもしれないけど、俺だってトークのセンスこそあるけれど、ホストとしての才能はいまいち。最初の一年は鳴かず飛ばずだったけど、才能がないとわかっているから自分から何か改善しようと謙虚になれて、いまがある。もし俺が入店3日目でナンバーワンだったら「周りが合わせるべきだよね」って思ってそのまま埋もれてしまっていたかもしれない。つまり何が言いたいかっていうと、才能がないならないなりにいいことあるぞ! ってこと(笑)。

時代に合わせて、求められる才能も変わるかと聞かれたら、答えは「YES」。デジタルに強い人がもっと活躍する世の中になるでしょう。でも俺は古くさい人間だから、人と人が顔を合わせることでしか伝わらない感動を掘り下げていきたい。相手の目を見てときめかせる作業とか…ね(笑)。この状況下、店を閉じる決断はしたけれど、いまでもホストの仕事は俺のすべて。大丈夫さ、朝日はまた昇る。人の温もり、そして努力で磨いた才能は時代が変わろうと不滅です。

ローランド 卓越した言語センスから生み出す“名言”が共感を呼ぶ伝説のカリスマホスト。著書に『俺か、俺以外か。』(KADOKAWA)が。9月9日まで、大阪の『ラオックス道頓堀店』にて、展覧会「Ro Land~俺か、俺以外か~」を開催中。

※『anan』2020年8月5日号より。取材、文・大澤千穂

(by anan編集部)