“いい諦め”が大切! 臨床心理士が教える、自己肯定感を高める方法

2020.6.4
よく耳にする“自己肯定感”ってそもそも何? アンケート結果を踏まえながら、TVなどでも活躍中の臨床心理士・塚越友子さんに詳しく教えていただきました。

自己肯定感アンケート(23~39歳の女性300人にアンケート)

Q. あなたが、自分自身にダメ出しするとしたらどれ?

A. 1位…性格、2位…職場(学校)での人付き合いが苦手、3位…仕事(勉強)ができない、4位…恋愛下手、5位…友達が少ない、6位…容姿

何に対して自己肯定感が持てていないか、特にその人のベースとなる特性自尊心(※もともとその人のベースとなる自分に対する価値や評価のイメージのこと)の高さを問う質問。特性自尊心には、性格や能力、身体的特徴などセルフイメージに対する評価も含まれている。その他、職場や友人などの人間関係、恋愛なども自己肯定感に影響する。

Q. ひどい失敗をしたときのあなたの反応は?
(※1人につき該当するものを3つ選択して回答。)

self esteem

A. やっぱりね、ダメだと思ってた。…187人、もうダメ、絶望的かも。…176人、ほんと、私ってダサいよね。…118人、これくらい大丈夫でしょ。…108人、まあいいか。…121人、うまくいかないこともあるよね。…190人

失敗したときの受け取り方が、回答のうち前半3つのように後ろ向きな人は、自己肯定感が低い。後半の3つのように、うまくいかなった結果も前向きに受け入れられるかどうかが、自己肯定感を育むには大切。これは認知行動療法で“適応的諦観”=“いい諦め”といわれる。

Q. うまくいかなかったときの言い訳、あなたが言いがちなのは?
(※1人につき該当するものを2つ選択して回答。)

A. 人は褒めてくれるけど、自分ではまだまだ…。…105人、他ができたから、ここは別にいいかな…。…111人、いくら頑張っても上には上がいるし。…133人、まあ最初から無理だと諦めていたけど。…87人、昔の失敗が頭をよぎったんだよね。…87人、だから期待されても困るって言ったよね。…77人

他者評価に一喜一憂せず、いい諦めができる自己肯定感高めの人は、人は褒めてくれるけど~、他ができたから~を選択した人。残る4つの回答は、過去の失敗がトラウマになっていたり、褒められることに慣れていなかったりと、自己肯定感低めな人が言いがちなセリフ。

Q. 自分が成長するために必要だと思うものは?
(※1人につき該当するものを2つ選択して回答。)

self esteem

A. 努力・達成感…190人、社交性、コミュニケーション…155人、立ち直りの早さ、リカバリー力…131人、できそうと思える、自信…124人

『anan』読者世代の女性に、自己肯定感を上げるために必要な要因といわれているのがこの4つ。上から、努力やチャレンジした結果の成功体験。社交性は人間関係の構築力。立ち直りの早さは、失敗しても「まあいいか」と思えること。できそうと思える自信は自己効力感と呼ばれている。

過去の経験、周りの人の影響…、肯定できない理由はさまざまです。

他人になんと言われようとも、上がるのも下がるのも自分次第なのが自己肯定感ですが、子どもの頃の他者評価によって、自己肯定感が低くなっていることも。いじめられた経験がトラウマ化して劣等感が染み付いている場合や、学校のクラスの男子から、「デブ、ブス」などと言われたことをずっと引きずっている場合などです。

でも、よくよく振り返ってみると、過去一度だけうまくいかなかった、誰か一人に言われただけで、いま周りにいるいい友達や、褒めてくれる人との付き合いを通じて、「過去のあの人たちがおかしかっただけで、本当はそんなことないのかも、大丈夫かも」と実感できることでそれらは改善されます。

他にも、職場の人間関係で悩んでいて、「自分の努力が足りないからダメなんだ」と思い込んでいる人もいますよね。でも、誰かに相談してみたら、「それは完全にパワハラ上司だよ、ブラック職場だから変えたほうがいいよ」などと言われる場合も。そのときは職場や環境を変えたほうがいいですし、それは職場だけでなく、恋愛や結婚のパートナーにおいても同じことがいえます。「お前なんてダメだ」という相手の言葉は、周りから見たら「普通はパートナーにそんな言葉使わないよ」ということも少なくありませんから。このように自己肯定感が低いかもと思ったら、「なぜ私は自分に対してOKを出せないんだろう」と考えてみることが、すごく重要です。

高めるには、まずはひとつ自分の中に得意なことを見つけてみましょう。

自己肯定感とは、自分に対して希望的観測を持っていて、「自信持って生きていいんじゃない」「価値がある人間なのでは」と思えている状態です。あくまで自己評価なので、他者評価だけで上げようとするのは限界があり、自分で自分を認めないと上がらない領域があります。そこで苦しんでいる人がすごく多くて、特に特性自尊心が低い人は、どんなに褒められても、今度はその他者評価と自己評価のギャップを「埋めなきゃ!」と、必死に努力しだして辛くなってしまいます。

自己肯定感は、成績がいい、男性にモテたい、友達がいっぱい欲しいなど、自分が持っている願望の領域で成功したと思えることで、“自分への満足度”を高めると上がります。まずは「自分の願望って何?」「じゃ、ここで頑張ってみよう」と考えて、何かひとつできること、得意なことを見つけるのはいいと思います。ただし、人間関係は自分で100%コントロールできないので、いくら頑張っても相手が返してくれない可能性があります。となると努力が無駄になり「私、ダメだ」になることも。資格や語学など結果が自分次第な領域から始めるのがいいですね。また、結果だけでなくプロセスを評価できる目標の立て方をすると、「これだけ頑張った自分を認めてあげよう」と思えますよ。

成功ばかりに囚われないで、失敗を受け入れることも必要です。

自己肯定感を上げることばかりを意識すると、何かを達成しないといけない、成功しないといけないということに囚われて苦しくなりがちです。そこで、もともと低い人が適度な自己肯定感を持つのに必要だとされているのが“適応的諦観”といわれる、“いい諦め”です。自己や状況のネガティブな側面をそのまま受け入れつつも、そこにこだわらない前向きな姿勢で、たとえば、うまくいかなくても「まぁいいか」「どうにかなるんじゃない」などと思える気持ちです。

自分は自己肯定感が低いと思っている人は、なかなかすぐには達成した自分を褒められません。ですから、失敗したりうまくいかなかったときに、達成しようと思うより、こんなふうに「なんとかなるよ」という考え方に切り替えていくこと、いい諦めを持って過剰に達成しようとしないことを、意識的に日常生活の中で懸命にやったほうが、自己肯定感が上がるといわれています。

同じ出来事でも受け止め方は人によって違います。そしてその受け止め方を変えることはできます。これは、失敗すると「自分なんてダメなんだ、もう終わりだ」と思いがちな受け止め方を、いい諦めを使って変えられれば、最終的には自己肯定感が上がるという、認知行動療法の考え方になります。

つかこし・ともこ 臨床心理士、公認心理師。東京中央カウンセリング代表カウンセラー。大学での講師ほか、TVレギュラー出演、新聞や雑誌などメディアでも活躍中。著書も多数。

※『anan』2020年6月10日号より。

(by anan編集部)