ゲイバー勤めの体験をもとに…話題のコミック『ゲイバーのもちぎさん』

2020.5.2
マンガを投稿するツイッターのフォロワー数は54万人超え。現在は、ピクシブなどの連載、ウェブサービスの「note」でも発信しているもちぎさん。毒親育ちといった境遇にも負けず、おのれのセクシュアリティと向き合い、健気に幸せの足元を固めてきた。一読すれば、その優しさに惹かれること間違いなし。『ゲイバーのもちぎさん』は、ゲイバー勤め時代の回想を軸にしたエッセイコミックだ。
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「ノンケ(異性愛者)とかタチウケ(性行為時のポジション)とか、ゲイ業界で当たり前に使っている符牒を、担当さんやノンケの方々に話したときにすごく面白がってもらって、逆に自分自身が驚いたくらいです」

好奇心はくすぐられるけれど、同時にハードルが高くも感じられるゲイやゲイバーのカルチャー。その実相をユーモアたっぷりにガイドしながら、自身の経験や傷をも率直に明かしてくれるところにぐっとくる。

「自分なりに消化したい、世間の反応を見てみたいという感情があったのは確かです。ゲイ業界で完結したり、仲のいい子たちだけで慰めあったりするのではなく、自分の培ってきた人生経験の偏りに気づくためにも、もっと広くの人に知ってもらいたかったんですね…。『同じ立場だから誰もが共感できる』というほど人間は単純ではないと思うし、あたいが描いているのはあくまであたい個人の経験や考え。マイノリティや同環境の人たちの代表のような主張はしないように自戒しています」

ひとの真心を感じるエピソードが多いが、なかでもバーのママ、イチガヤさんがもちぎさんにかけた〈あんたはここで自分を愛して一から堂々と働いてみなさい〉という言葉には、思わず涙腺がゆるむだろう。

「弱っていた自分を弱いまま受け止めてもらった。いまの社会にはなかなか見当たらない場所を差し出してもらえた感じでうれしかったです」

白くてふわふわ(なのか?)なフォルムで描かれているもちぎさん。

「人間って描くのしんどいので、よく描くキャラは楽にしておこうかなと思った次第です。あと、あたいは北半球一美しいゲイなので(自称)、それを表現するにはあのフォルムにせざるを得ないというか(笑)」

そんなナゾの見た目も含め癒し効果抜群のシリーズに今後も期待。

『ゲイバーのもちぎさん』1 マンガは独学。いまはタブレットを使うが、最初のころはボールペンで紙に描き、その写真をネットに上げていたのだという。特別収録のページもたっぷり。講談社 1000円 ©もちぎ/講談社

もちぎ 作家兼学生。ギリギリ平成生まれ。ネチコヤン(猫)2匹と暮らす。彼氏募集中。『ゲイ風俗のもちぎさん 2 セクシュアリティは人生だ。』も発売に。

※『anan』2020年4月29日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)