きっかけは宮崎の口蹄疫…紗栄子が“ボランティア活動”を10年続ける理由

2020.4.3
被災地に足を運んで炊き出しや支援物資を届けたり、児童養護施設や地元に根差す農家・畜産家の支援を行ったり、そんなボランティア活動を約10年間続けている、モデル、タレント、女優・紗栄子さんのエシカル論とは?

エシカルとは“愛のある選択”のこと。

saeko

「最近は“エシカル”とか“サステナブル”という言葉が認知されつつありますが、私自身はその言葉を知らない頃から自然と意識していたと思います」

有事の際、被災地域を訪れ、被災者に向けて積極的にボランティア活動を行っている紗栄子さん。その精神は物心がついた時からあったという。

「愛情を持って、道徳を教え育ててくれたおかげと両親に感謝していますが、それこそ子供の頃、身近にあった赤い羽根共同募金やベルマークを集めることだって、エシカルな行動の一環ともいえますよね。一方で親元を離れて社会に出たり、海外に目を向けるようになると、さらにたくさんの社会問題・環境問題などを目の当たりにして、私たち人間が自然からの恩恵を受けることが当たり前ではないということを知り、何もせずにはいられなくなりました」

一個人として初めてアクションを起こしたのは、約10年前に、彼女の出身地でもある宮崎県で起こった口蹄疫の被害。

「当時子供が小さかったし、畜産農家の方々が困っているニュースを見てどう動けばいいのかわからなくて、個人的に義援金を新聞社に直接届けに行きました。その後、日本に毎年のように台風による土砂災害や水害が増えていく中で、被害に直面した農家さんの販売支援や、親元から離れて暮らす子供たちやお年寄りの方が入居する施設への支援などをできる範囲から始めるようになったんです」

災害時に何が最も大事なのか、SNSなどを使ってどう呼びかけていったらいいのかなどを学びながら、手探りで進んできた10年間。時には心ないコメントを書き込んでくる人もいたが、「心ある厳しいご指摘にはしっかり耳を傾けてきたが、ただただ傷つけたいだけの言葉には耳を傾けずに、自分の信念を貫いてきた」と話す。そんな彼女の活動が大きくクローズアップされたのは、昨年、東日本を襲った台風19号の災害時。寄付を募る彼女の呼びかけや行動は、SNSを通して発信された。

「青山の一角で支援物資の受け付けを始めたら、たくさんの人が駆けつけてくれて、予想をはるかに超える量が集まり、結果4tトラック15台分にもなったんです。誰かのためになりたいと考えている人が日本にはこんなにたくさんいるんだと実感しました」

saeko

ただ物やお金をたくさん集めて届ければいいわけではない。被災地では個人的な寄付を受け付けていない場合も多く、ボランティアに駆けつけたところで被災者が見ず知らずの人間に簡単に心を開いてくれるとも限らない。

「職業柄、大勢の方に知っていただいていたことが幸いして、その時は物資を受け入れてもらえましたが、この時のことがきっかけで、災害地で困っている人たちと、誰かのために何かをしたいと思っている人たちの思いをつなげるプラットフォームを作りたいと思い、昨年、一般社団法人『Think The DAY』を立ち上げました。何かが起こってから呼びかけて動くのではなく、備えとしての支援物資や寄付金を募って、何かが起こった時にできる限り早い段階から人々の力になれる体制を整えておく。いま、この日を生き抜くために必要なものを、必要としている人の元へ迅速にお届けするのが目的です」

個人ではなく社団法人にすることで現地への連絡がとりやすくなったり、同じ気持ちを持つ仲間が増えたのも利点の一つだ。ちなみに、“倫理的な”という意味のエシカルという言葉については「私は“愛のある選択”と解釈しています」と紗栄子さん。

「慈善活動だけではなくたとえば、子供たちの口にも入る野菜や肉は誰がどういうふうに作り、どのようなルートで運ばれてくるのか、過酷な労働条件など誰かの不幸せの下に作られたものではないか…など、一つずつ調べて選択することだってエシカルやサステナブルの根本。それに、環境問題に配慮して商品開発に取り組んでいるアパレルブランドの服を選んで着ることも、立派なエシカル消費だと思う。“絶対に”ではなくできる人ができる時に、できることをすればいい。エシカルという言葉によって多くの人たちが認識するのはいいことですが、いつかそんな言葉がなくても愛のある選択が当たり前にできる世の中になることが、私の望む未来です」

私のエシカルな活動

支援活動では各企業との連携も!

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「炊き出しの際のキッチンカーを探していた時にお声がけいただいた吉野家さん。いま作ろうとしている災害キット作りにも素敵な形でご協力いただいています」

被災者と支援者をつなぐプラットフォームに。

「一般社団法人『Think The DAY』。私たちみたいな団体がロールモデルとなることで、何から始めたらいいかわからない人たちの手助けができればいいと思います」

炊き出しは被災したその日から必ず必要になるもの。

saeko

「災害を受けた被災者の方がその日から必要になるものは、お水と温かいごはん。これは、昨年、台風19号で被害を受けた宮城県丸森町で行った炊き出しの様子です」

SNSでの呼びかけにたくさんの人たちが!

「千葉県の台風被害で支援物資を募った時は、大勢の方々が集まってくれてありがたかった。ハッピーの輪は、みんなで大きくしていきたいって考えています」

さえこ 1986年11月16日生まれ、宮崎県出身。2001年にテレビドラマで女優デビュー、バラエティ番組などでも活躍。また、『sweet』(宝島社)などのファッション誌でモデルを務める。2児の母でもある。

ワンピース¥140,000(エブール TEL:03・5412・1871) ネックレス¥250,000(エナソルーナ/エナソルーナ神宮前本店 TEL:03・3401・0038)

※『anan』2020年4月8日号より。写真・中村和孝(まきうらオフィス) スタイリスト・安西こずえ ヘア&メイク・石川ユウキ(Three PEACE) 取材、文・若山あや

(by anan編集部)