SHOWROOM前田裕二が語る“リーダー3か条” 今のトップに必要なのは?

2020.1.27
“チーム”というと単位は一つだけれど、メンバー一人ひとりは、それぞれ違う個性を持っているし、ときには意見が異なることだってある。そこで大切になるのが、リーダーの存在。チームがよりよく機能するには、どんなリーダーが必要なのか、前田裕二さんに聞きました。

今のリーダーに必要なのは、優れるより、好かれること。

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仮想ライブ空間「SHOWROOM」を運営する会社の代表である前田裕二さん。自身の経験や時代の流れを踏まえたうえで、リーダーに求められる条件は、近年、変化してきていると分析する。

「少し前までは、優秀で、カリスマ性があって、周りの進言を聞くより、自分の才能でその正しさを証明してしまうようなリーダーが支持される傾向がありました。でも今は、どちらかというともう少し柔和な、周りの力を使えるタイプの人が、リーダーとして力を発揮するようになったと感じます」

理由は2つ。ひとつは、カリスマ的なリーダー像が追求されすぎたことによる揺り戻し。もうひとつは、テクノロジーの進化による社会変化が挙げられるという。

「人とのコミュニケーション手段について、現代では、対面や電話より、ネットが主流になってきている。今後は銀行やコンビニの無人化が進むなど、とくに人と触れ合わなくても、いろんなことがこなせるようになっていきます。それは効率的でいいのですが、人間にとってやっぱり生身のコミュニケーションは必要不可欠な栄養素で、それがないと心にぽっかり穴があいてしまう。だから、会社などチームにおいても、心の穴を埋めてくれるリーダーシップ、つまりメンバーのことをきちんと見てくれて、自分という人間の尊厳欲求を満たしてくれるようなリーダーシップが求められている。そしてそれを体現するリーダーが、今活躍しつつあるのだと思います」

“才”か“徳”かで言ったら圧倒的に徳の時代。

こうしたリーダーシップを発揮できるかは、その人が“徳”を持っているか否かによるという。

「僕の考えでは、徳には3つの要素があって、自分から人を好きになる力がそのひとつ。それには、まず相手をよく知ること。相手の話に真摯に耳を傾け、メモを取ると『こういうところがいいな』とわかります。それにより相手を好きになるし、こちらが好きになると向こうも好きになってくれるんです。2つめは、小さなことでも相手がしてくれたことに感謝をすること。3つめは、志を持っていることです。それが人の心を動かすようなストーリーに紐づいた志であるほど、共感が得られやすいと思います。今後ますますAIの発展が予想される時代。人間の“才”がいくら長けていても、頭脳は機械のほうが上回るはず。でも、徳は機械では出しにくい価値なんです。『あのAI、私のことをやたら好きでいてくれる』なんて、あまりないですからね(笑)」

そんな徳を持つリーダーの代表格として前田さんが参考にしているのが、中国の「項羽と劉邦の戦い」で知られる、漢王の劉邦。

「劉邦は40歳過ぎと当時の感覚では高齢で、兵力も楚王の項羽の数分の1にも満たない。おまけに酒飲みで女性にだらしない。片や、項羽はずば抜けて優秀で、戦に出れば大活躍。カリスマ的なリーダーでした。それでも最後には劉邦が勝ったのは、彼の徳の力が大きいと思う。劉邦は自分の弱さをはっきりと認識していて、それゆえに徹底的に自分よりも強い人材を見出し、信頼し、そして重要なポジションに登用した。劉邦が築いた漢の時代は後漢時代も含めて400年以上も続きますが、それは彼に絶対的なリーダーシップがあったという証拠だと思います」

“徳”と聞くと高尚に感じてしまうかもしれないけれど、「相手を好きになる」など、実は意外と誰にでもできそうなことでもある。

「項羽のようなリーダーになるには先天的な能力が必要ですが、劉邦のように徳の高いリーダーなら心がけ次第でマネできます。僕が目指しているのは、完全に劉邦です。『SHOWROOM』だって『メモの魔力』だって、一人では限界がある。それがわかっているからこそ、メンバーが応援してくれるありがたさがわかるし、その求心力には徳が必要だと感じています。そう考えると、徳を育てるには自分の限界を知ることも大切です。自分の限界がわかるとプライドが削れるので、自分ができないことは認め、他人に任せられるようになる。ひいては周りへの感謝が生まれ、相手の尊厳欲求も満たされるうえ、自分のリミットが広がるという相乗効果です」

リーダーは大ごとじゃない。むしろ楽しみが大きい。

リーダーになることのよさは、何より“楽しいこと”だという。

「自分が描いたビジョンに周りがついてきてくれている状態って、誰かのそれについていくより、オキシトシンなど脳内の“楽しい物質”や“幸せ物質”の分泌量が多いと思います。リーダーになることは、決して大ごとではありません。徳の3つの要素がマネできることであるように、誰でもリーダーの種を持っているし、“リーダーチャンス”はどこにでも転がっているんです」

徳のあるリーダー3か条

自分から相手を好きになる。

徳のひとつは、自分から相手を好きになる力を持っていること。それを養うには、相手を知ることが先決。それにはメモが役立ち、メンバーと話したことや、気づいた点などを書き留めると、相手のいいところが次第に見えてくる。つまり、その人を好きになる。

小さなことでも感謝を伝える。

メンバーが話してくれたことなど、どんなことにでも感謝やリスペクトを忘れず、それを相手にきちんと伝える力も徳のひとつ。とくに自分の限界を知っているリーダーは、人の力を借りることの大切さをわかっているため、感謝やリスペクトが生まれやすい。

志を持っていて、それを周りに示す。

なぜそれをやるのか、どこに向かっているのか、その根拠となる志を示す力も徳の大事なポイント。志は、たとえば自分がオーバーワークで苦労したから社員の生活の質を上げたいなど、リーダーの特別な思いに紐づいているほど、メンバーからの共感が得やすい。

前田裕二さん 「SHOWROOM」代表。著書『メモの魔力-The Magic of Memos-』(幻冬舎)が、‘19年ビジネス書年間ランキング1位を獲得。『スッキリ』(日本テレビ系)火曜コメンテーターなど、その発言力が注目を集め、メディアでも活躍。

※『anan』2020年1月29日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・3rdeye 構成、文・保手濱奈美 撮影協力・TITLES

(by anan編集部)

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