志尊淳「だらしない体をめざした」ドラマ『潤一』の裸シーン

2019.8.17
直木賞作家・井上荒野さんが2003年に発表した連作短編小説『潤一』。年齢も境遇も様々な女性たちが、ミステリアスな青年・潤一とのひと時の邂逅によって、自身の生き方に気付きを得たり、これまでにない幸せを感じ取ったり…忘れられない記憶を刻印されていく。
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官能的な描写も話題となったこの作品が、潤一役に志尊淳さんを迎え映像化された。志尊さんのインタビューとともに、『潤一』の甘美な世界に存分に浸って。

相手との距離を探りながら合わせていく。セックスもコミュニケーションなんです。

「潤一役のオファーをいただいて、最初に原作を読ませていただいたのですが、これをどう実写化するのか未知で、そこにとても興味を惹かれました。ただ正直、何度読み返しても、潤一という人物が掴めないままでした。むしろ、そこが彼の魅力でもあると思ったんです。基本的に僕は、役を理屈で納得しながら深掘りしていきたいと思うタイプなのですが、この役に関しては、あえてそこを曖昧なまま演じさせていただきました」

潤一は、家を持たず、定職にもつかず、様々な女たちの元を渡り歩くミステリアスな青年だ。

「潤一は、対峙する女性によって違う懐への入り方をするんですよね。しかも、そこにしたたかさや作為はなく、本能的なんです。だから、潤一の人物像を考えて芝居をそこに当てていくより、毎回、まっさらな状態で相手役の女優さんと向き合って、現場の空気感で、セッションするように作り上げていくことを意識しました」

なかでも、それぞれの女性たちとのセックスシーンは、毎回、全然違う感覚があったそう。

「ベッドシーンに関しては、監督からの演出の指示もあまりないし、テストもほぼなく、『おふたりの空気感にお任せします』と言われていました。潤一は自分からあまり話もしない人なので、僕もつねにマイペースな距離感でいたんですが、相手によって距離感の近い場合もあれば、その逆もあって。キスひとつも、タイミングから全部が違って、その人がキス自体にどれだけ重点を置いているかが見えてくる。それが面白いなと。とくに千尋との回は、それまで潤一側からいっていたのが、千尋の発散するものを受け止める側になっていたのが新鮮でした。人間関係としても肉体関係においても、潤一は、それぞれの女性が求めているところにハマっていくんです。受け止めてほしい人もいれば、来てくれることを待っている人もいて、彼はきっと、本能的に女性が求めることを察知できるんだと思います。ただそれは、動物的勘みたいなもので、彼にしてみたら、その時間を気の赴くままに過ごしているだけなんですけど」

セックスも、互いを理解するコミュニケーションのひとつ。

「自分だけが求めるんじゃなく、相手との距離を探りながら、空気感を合わせていくものですよね。話さずとも肌が触れ合うだけで感じ取れることもあるし、なぜか肌感覚が合うってこともある。この撮影中は、自然とあまり人とコミュニケーションをとらず、ひとりで過ごすことが多かったんですけれど、相手のことを何も知らないままシーンを重ねるうちに、ふいに相手に情が生まれる瞬間が来るんです。唐突に切なさが押し寄せたり。それは潤一としてなのか、志尊淳としてなのかわからないけれど、それを感じられたことは、すごく良かった。それでいうと、この作品の中では、セックスという形だけでなく、自転車に2人乗りしたり、ボートに一緒に乗るという描写もあります。それだって、人によってはセックスと同じような行為だったのかもしれない。セックスだって人間の本能として必要とされてきたことで、恥ずかしいことでも何でもない。むしろ、言葉だけでは伝わらない感覚が伝わる、大事なものだと思います」

作中では、裸になるシーンも多いけれど、あえて「だらしない体をめざしました」という志尊さん。

「いい体にしちゃうと、そこにナルシズムが見えてしまうので、それは潤一ではないって思ったんです。彼のセックスの目的が違って見えてきてしまうことだけは避けたくて。それより大事にしていたのは、生々しさだとかリアリティのほう。ただ、宣伝に使用されるビジュアル用のスチール撮影では、できるだけ多くの人の記憶にこの作品が引っかかってほしくて、1か月半前からジムに通って体を作りました。それを入り口にこの作品を観た人は、詐欺だって思うかもしれません(笑)」

家も職も持たず自由に生きる潤一が女たちを癒してゆく。

出産を目前に控えた映子(藤井美菜)、妹の夫と肉体関係を持つ環(夏帆)、夫から執拗に束縛される千尋(江口のりこ)…。潤一と関わりを持つのは、タイプも年齢も立場もまるで違う女性たち。はたから見れば、何の不自由もなさそうだが、どこか心の内に満たされなさを抱える彼女たちの目の前に、ふいに潤一が現れる。女たちと多くの言葉を交わすわけではないけれど、いつしかするりと心の隙間に忍び込み、そしていつしか消えてゆく。女にとってはファンタジーのような存在でありながら、そこに確かな手触りを残す。はたして潤一とは何者で、彼女たちに何をしたのか。静かに淡々と綴られてゆく映像が、想像力を刺激するエモーショナルな作品だ。

毎週金曜25:55~カンテレで放送中。原作/井上荒野『潤一』 監督/北原栄治、広瀬奈々子 脚本/砂田麻美 出演/志尊淳、藤井美菜、夏帆、江口のりこ、蒔田彩珠、伊藤万理華、原田美枝子ほか Amazonプライム・ビデオにてデジタルセル配信を購入すると全員に、志尊さんの撮り下ろし写真が満載の特製「潤一」フォトブックをプレゼント中。©2019「潤一」製作委員会

しそん・じゅん 1995年3月5日生まれ。東京都出身。現在、ドラマ『Heaven? ~ご苦楽レストラン~』(TBS系)に出演中。出演映画『劇場版 おっさんずラブ ~ LOVE or DEAD ~』は8/23 、『HiGH&LOW THE WORST』は10/4公開。10/8開幕のNODA・MAP『Q:A Night At The Kabuki』への出演も控える。

シャツ¥29,000 パンツ¥27,000 Tシャツ¥15,000(以上エンハーモニック タヴァーン/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575) シューズ、ピアスはスタイリスト私物

※『anan』2019年8月14-21日合併号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・手塚陽介 ヘア&メイク・仲田須加 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)

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