あなたの脳を信じてはいけない!? 災害時に気をつけたいこと

2018.9.14
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「豪雨災害」です。

予測不能な事態に脳が間違った判断を下すことも。

社会のじかん

この夏、西日本を中心に広い範囲で集中豪雨が発生し、多大な被害をもたらしました。多くの人が逃げ遅れてしまった理由は何でしょう? その一つに挙げられるのが「正常性バイアス」です。山口大学の高橋征仁教授によると、これは心理学の用語で、予期せぬ事態に直面したときに、先入観や偏見が働いて、「これは大丈夫だ」と正常範囲内のできごとと判断してしまう心の動きだそうです。異常が発生すると、過大なストレスがかかります。その恐怖や不安に苛まれると人体が危機に至る。そのため、心の平安を保とうと脳が間違った判断をしてしまうのです。

今回の西日本豪雨も、現場の聞き取り取材によると、警報が鳴り、避難勧告が出ていても、正常性バイアスがかかり、その情報が意識の深部に到達しなかったことがわかりました。また、地域によっては、ものすごい雨音により、警報が物理的に聞こえなかったのではないかという意見もありました。

西日本豪雨の被害が拡大したもうひとつの理由は、国、県、市町村の間で情報の共有がうまくできていないということです。国の管轄は大きな1級河川で、県や市町村は支流を担っていますが、エリアごとに細分化されているため、1本の川の上流から下流まで俯瞰して管理する組織がありません。

岡山県の高梁川の場合も、上流域の氾濫は午後11時台に起こり、死者も出ていました。ところが、下流域の倉敷市真備町に避難指示が出たのは、午前1時30分。上流で氾濫が起きた段階で、中・下流の被害は想像できたはずです。しかし連携できていなかったために情報の伝達が遅れてしまい、50名以上の被害が出ました。

気象庁の統計によると、1時間に50ml以上の大雨が降る頻度は、’70~’80年代に比べると現在は約3割増加。1時間に50ml以上降った回数も、1976年からの10年間に比べ、2007年以降の10年間では33.5%増えています。地球温暖化などにより、これからも集中豪雨は増えるでしょう。豪雨に見舞われたら、まずは過信せずに逃げること。冷静な判断ができにくい状況であることも、頭に入れておいたほうがよいでしょう。

社会のじかん

堀潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2018年9月19日号より。写真・中島慶子 題字&イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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