ストレスで入院も…それでも私がコレを続ける理由

2018.5.29
『ソルズコーヒー』オーナー・荒井利枝子さん(31)が、“コーヒー屋”という天職に出会ったきっかけとは?
荒井利枝子

蔵前エリアで3店舗を構える『ソルズコーヒー』。そのオーナーが荒井利枝子さん。建築の学校を卒業時に、友人と会社を設立し、飲食業界へと飛び込んだ。彼女が経験してきたバイトは、すべてコーヒー屋。場の雰囲気や業務が好きだったという荒井さんだが、当時はコーヒーをおいしいと思ったことがなかった。

「友人の父が焙煎機を持っていて、焙煎したコーヒーをいただく機会があって。その時はじめてコーヒーがおいしいと思えたんです」

この味に衝撃を受け、一からコーヒーを学ぶ。偶然にも友人の父の焙煎機を譲り受けることになり、建築の勉強で培ったデザインの技術も活かせるコーヒー屋を始める。最初は豆の通信販売と、移動コーヒーショップを開始。1年半後には実店舗を構え、気づくと5店舗を経営するまでに。ところが2015年、急にスタッフが退社。2店舗を閉め、ストレスで体調を崩し入院する事態に。

「本当にその年は最悪でした。でも、起業時から、絶対に10年は続けると決意していたんです。格好つけずに『職業はコーヒー屋』と名乗れるようになったことで、周りから認められ始めた気がします。去年からカフェのプロデュースにも携わるようになり、今年は娘を出産。仕事も私生活もシーズン2に突入した感覚です」

出産後の今は、子どもと一緒にいながらできる仕事方法を模索中。

「転機が訪れると、最初に決めることは“やるかやらないか”。そして、楽しいか、誰が喜ぶか、なりたい自分になれるかなどを考え、そのすべてに当てはまったら進むように。それを“どうするか”を考える時には、人のご縁に助けられることも。私ができるのは、周りの人に上手に相談して、よい道を作ることだと思うので。そこで思いもよらない新しい出会いやアイデアが生まれることが、とてもワクワクする瞬間なんです」

荒井さんの人生年表

2002年(15歳):ダンス部の友人に誘われ、ゴスペルに目覚める。
高校に入るとダンス部に入部し、仲のいい部活友達にゴスペルの体験会へ誘ってもらう機会が。この時に歌うことに目覚め、在学中はバンドを組むなど音楽に熱中した。卒業する頃には、レッスンをしながらシンガーを目指すように。

2007年(20歳):コーヒーショップで働きながら父親の影響で設計を学ぶ。
19歳の時、不運な事情によりシンガーの道に進むことをやめる。今まで家族にやりたいことをさせてもらった恩返しをするため、家族の喜ぶことをしようと一念発起。建設業だった父親の会社を継ぐことを20歳で志し、建築の勉強を始める。

2009年(22歳):就職先の内定取り消しを受け、友人と一緒に起業する。
女性が職人の世界に立ち入ることを反対する父の意見を受け、就職活動をする。ところがリーマンショックの影響で内定が取り消しに。バイトで培ったコーヒー屋のノウハウと、譲り受けた焙煎機を活用し、コーヒー事業を思いつく。

2010年(23歳):初店舗をオープンさせる。
江戸川区で初の実店舗となる『ソルズカフェ』を開店。この時はコーヒー専門店ではなく、地域の特性からカフェとして食事にも力を入れる。企画と運営側に集中するため、現場を任せられる人材を育てることに力を入れるように。

2013年(26歳):“天職”タイミング。蔵前にスタンドをオープン。
知り合いの誘いもあって、小さなコーヒースタンドを蔵前にオープンさせ、店名を『ソルズコーヒー』に。その後、オフィス内でのコーヒーショップ運営や、蔵前エリアで店舗を拡大させる。だんだんと周囲からの見られ方が変わり始める。

荒井利枝子

オープン当初は、道ゆく人に挨拶をしても怪訝な顔をされることも。地道に声かけを続けると徐々に受け入れられ、常連さんが増えた。地域のニーズに合わせてコーヒースタンドの形態をとり、認められるお店になった。

あらい・りえこ 2009年にSOLISM株式会社を設立。東京・蔵前エリアに3店舗を運営する傍ら、カフェのプロデュースも。千葉県・柏に『子育て支援カフェ・The Giant Turnip』が開店したばかり。

※『anan』2018年5月30日号より。写真・土佐麻理子 イラスト・長谷川まき 文・野村紀沙枝

(by anan編集部)


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