布袋寅泰がロンドンで「あちゃー(笑)」と同時にニンマリしたこと

2017.11.13
最新アルバムを引っ提げ、布袋寅泰が日本に降臨! インタビューから伝説的ミュージシャンの魅力に迫ります。

夢は叶わなくても、追いかけなければいけない。

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トップミュージシャンとして長年日本のロックシーンに君臨してきた布袋寅泰さん。大きな夢を抱いて日本を離れ、ロンドンに移住して5年が経つ。

「若いころからイギリスのロックに憧れ、その匂いを嗅ぎたくて何度もロンドンには行ったけど、やっぱり5年暮らしてはじめて見えてきたこと、わかったこともあるし、僕も50代になり、落ち着いて物事を見られるようになったと思います。いい作品を作って一人一人に届けるという表現者としての仕事は変わらないし、長年抱いていた夢にも近づいているのだけど、環境を変えてゼロからスタートするのは、まぁ大変でした、思っていた以上に」

14歳でギターを弾き始めたときから“ギター抱えて世界で活躍する”という夢をロックが与えてくれた。その夢は現実のものとなり、いまだ夢の途中。

「バンドからソロになり、アーティストとして成功もしましたけど、30周年を迎えたころ、諦めないで夢を追いかけるという気持ちを歌詞に込めた『DREAMIN’』のごとく、オレはまだまだやれるだろうっていう気持ちが湧き上がってきたんだよね。たとえ叶わなくても、夢は追いかけるものだし、それが人間の生きる糧だからね。性格的に一か所にとどまらず、その先に行きたい気持ちが強いし、はじまる感じが好きなの。自分で選んだ道とはいえ、ロンドンに来て、100人も客がいないライブハウスに出るなんて30年ぶりだから、あちゃー(笑)と思うけど、一方でニンマリしている自分もいる。ここから次に進むと思うと楽しいじゃない。バスにも地下鉄にも乗るし、ギターケースを背負ってひとりで移動もする。弦の張り替えも早くできるようになった(笑)。移住してから生活がどんどんシンプルになってきているし、毎日が自由で楽しいんだよね」

みんなの心に届いてエネルギーになる音楽を。

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昨年はデビュー35周年という記念すべき年だった。海外公演と並行し、日本でもアニバーサリーツアーが行われた。そして36年目にリリースされるのが最新アルバム『Paradox』。過去の作品以上に、ロンドナー・布袋さんを取り巻く環境や心境が濃厚に、かつ正直に表現されたアルバムだと感じる。

「まさにメイド・イン・ロンドンといえる作品でしょうね。コンサート会場がテロの標的になるという生々しい事件が身近で起き、怖いというより怒りを感じるけど、でも怒りに溺れているだけではいけないとも思うんです。若いときは大人にNO! 政治にNO! と何でもNONONOと言うのが許されているけど、年を重ねていろんなものが見えてきて、問題を提起するだけのメッセージには疑問が出てきたんです。こういう時代に生きている自分が、言葉と音楽をひとつにし、心に届いてみんなのエネルギーになるものを作る、それが僕にできる唯一の表現なので、そういう作品を作りたいと改めて思いました。NONONOは誰でも言えるけど、そのNOをどうやって伝えるか。難しいけどやりがいのある表現だと思います」

また昨年のデヴィッド・ボウイの死は、布袋さんの心境に少なからず影響を与えたという。

「亡くなる2日前にリリースした最後のアルバムがあまりにも素晴らしかったので、彼がいなくなった喪失感はかなりのものでした。僕はまだ若いけれど、彼のように作品を自分の生きた証として残す、そんな意識を持って作品を作りたいと思いましたね。自分はあと何枚作品を残せるかと考えたら、コマーシャルなものとか、そのときの流行りのものを追っかけても何の意味もない。それが最後の作品になっても恥ずかしくないものを、じっくり作らないとね」エレガンスを持った大人の男になりたい。

終始穏やかに、丁寧に質問に答えてくれる布袋さんも、かつてはナイフのエッジのように尖った存在感を放っていた。

「うん、若いときは喜怒哀楽のすべての感情のメーターが振り切れるほど、起伏が激しかったですね(笑)。それはサウンドを作る上で、すごく重要だったんです。いまも音楽に関してはメーターが下がったわけではないんですよ。なんだろう、表現者としては何も失っていないんだけど、経験によってものを見つめる力が出てきたり、それを味わう能力、一瞬で答えを出す判断力や、もう一度自分に問い直して修正するとか、そんな力が身についてきたと思う。かたや人間的には、若いとき最も嫌いだった言葉“円くなった”そのものですね。もう、まん円です(笑)。でも人間円くなるって、こんなに気持ちいいんだって、日々実感しています」

ほてい・ともやす 1962年2月1日生まれ。ロックシーンへ大きな影響を与えた伝説的バンドBOOWYのギタリストとしてデビューし、1988年『GUITARHYTHM』でソロデビュー。代表曲『BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY』が映画『KILL BILL』のメインテーマになり、世界的な評価を受ける。一昨年より海外レーベルと契約し、インターナショナルアルバムもリリースするほか、海外公演も積極的に行う。最新作は3年ぶりのオリジナルアルバム『Paradox』。リリースを皮切りに、現在、全国ホールツアーを行っている。

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※『anan』2017年11月13日号より。写真・彦坂栄治(まきうらオフィス) スタイリスト・井嶋 一雄(Balance) インタビュー、文・北條尚子

(by anan編集部)


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