蒼井優との最新作で不潔な男を…阿部サダヲ「逆に面白かった」

2017.11.12
映像へ出始めた当初はエキセントリックな役柄が多かった阿部サダヲさん。いまやその演技力は誰もが知るところとなり、幅広い役柄をこなす個性派に。

取材日はあいにくの雨。しかも、撮影が始まった途端、雨脚が強くなる。しかし、そんな状況に躊躇も戸惑う様子もなく、傘を手に軽快な足取りで歩き出した阿部サダヲさん。道すがら、一風変わったファサードの家を興味深く眺めたり、後ろから来た車のためにぴょこんと跳んで道の端によけてみたり。大人の男特集にもかかわらず、その仕草、何だか可愛すぎやしませんか?

阿部サダヲ

――最新映画『彼女がその名を知らない鳥たち』を拝見しました。阿部さん演じる陣治は、罵倒され足蹴にされながらもなお、十和子(蒼井優)に執着し、彼女の世話を続ける男です。観ていて痛々しい役でしたが…。

阿部:最初に台本を読んだ時は、こんな人たち実際にはいないだろうって思っていたんです。でも、沼田まほかるさんの原作を読んだら、陣治と十和子の関係性がすごくリアルに描写されていて、なんというか…信じられたんですよね。

――まさに、映画の中で阿部さんと蒼井さんの存在感にはリアルな生っぽさを感じました。

阿部:現場の雰囲気も良かったんだと思います。実際にある団地の空き家を何部屋かお借りして撮影したんです。その街の空気感もそうですし、ベランダでタバコを吸っている時に見える景色とか、部屋のソファの小ささとか、妙にリアリティがあったんです。しかも陣治は格好も汚いから、撮影の合間に近所を散歩していても妙に馴染んでいたみたいで。全然誰からも声をかけられなかったです。

――陣治は、お金もなく不潔で不作法な男ですが、演じるのに抵抗はなかったですか?

阿部:逆に面白かったです。地べたに座ったり、汚く食べたり、人が不快に感じることをあえてやるということは、まずない経験なので、撮影中、どんなに汚い食べ方をしても「いいですね」と言われるのが妙に楽しかったです。

阿部サダヲ

――松尾スズキさん率いる大人計画に入ったのはどういったいきさつで?

阿部:たまたま大人計画の舞台を観に行って、その後オーディションを受けました。全く知らない世界に足を踏み入れたかったのもあるかもしれません。一回失敗してみたい、というか。あの時に大人計画のオーディションを受けていなかったら、今頃何をしてたんでしょうね。選んでくれた松尾さんに感謝です。

――入団当初から、お芝居は楽しかったんですか?

阿部:僕が入った頃、若手がどんどん自主公演を打ってもいいよっていう時期だったので、入団間もない僕もいろんな役を頂きました。舞台経験を積んでいくうちに、全く知らないお客さんの前で芝居するっていうことに、徐々に気持ちよさを感じられるようになっていったんです。あれがもし研修期間とかがあるような劇団だったら、すぐに辞めてたかもしれませんね。

あべ・さだを 1970年4月23日生まれ。’92年より大人計画に参加。主演映画『彼女がその名を知らない鳥たち』は、現在公開中。’19年には、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の主演を務めることが決定している。

※『anan』2017年11月15日号より。写真・内田紘倫 スタイリスト・チヨ(コラソン) ヘア&メイク・中山知美(R.I.S E) インタビュー、文・望月リサ 衣装協力・zinze

(by anan編集部)


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