水谷豊「僕って俳優としてそんなにダメですか?」と笑った出来事を告白

2017.6.17
水谷豊さんが初監督、主演を務めた映画『TAP‐THE LAST SHOW』が公開となる。タップダンスに青春を捧げる若者たちと、ショービジネスに人生を捧げ晩年を迎えた男たちの情熱が交錯する作品だ。この映画の構想が生まれたのは、水谷監督が23歳の頃だという。
水谷豊

「主人公の若者が、ケガでタップダンスができなくなってしまった天才タップダンサーの父の夢を継ぐという青春物語を撮りたかった。でも、当時の僕が映画を撮りたいと言っても、誰からも相手にされませんでした。30代で、脚本家が興味を持ってくれたので役作りでタップのレッスンを始めたんですが、実現できなくて挫折。40代でもう一度チャンスがきたのでまたタップを始めましたが、これも実現することはなかった。僕は、監督もやりながら息子役で踊るつもりだったけど、もうそんな年でもなくなってしまって、50代では諦めかけていましたね(笑)。この夢は手に入らない夢なんだ、と」

子供の頃、チャールズ・チャップリンに夢中だったと言う水谷監督。

「チャップリンはタップを踊っていたわけじゃないけど、あの大きな靴を履いた足の動きがすごく印象的で、脳裏に焼き付いていた。その後、タップダンサーのフレッド・アステアや、ジーン・ケリーが映画『雨に唄えば』でタップを踊るのを観て、タップに魅せられました」

そうして長年追い続けた夢は、40年かけてようやく手に入ることに!

「さすがに今息子役ってわけにはいかなかったので、設定は変更しましたけど(笑)。でも、映画を撮るという夢を叶えて、できることはすべてやりきったという思いがあります。だから完成作品を観終わった時に、不思議と映画への感想はなかった。なかなかたどり着かなかった夢にたどり着いた、それだけ。重要な役どころで、一緒に観ていた(岸部)一徳さんから『監督の方が向いてるんじゃない?』と言われて、『僕って俳優としてそんなにダメですか?(笑)』なんて冗談を返したんだけど、嬉しい褒め言葉でした」

水谷豊

後半の24分にもわたるタップダンスショーには、思わず息を呑む。

「ずっと、タップはあらゆる音楽に対応できるだろうと思っていた。だから日本の伝統曲やサンバ、フラメンコ、ワルツなどいろんなジャンルをタップで踊るという試みをしました。劇中の24分を使ってショーを見せるというのは、ちょっと長いように感じるかもしれませんが、お客さんを別世界に連れていくためには、物足りなくても長すぎてもだめ、ちょっと多めがちょうどいいんです。タップダンサーたちそれぞれの生活や悩み、苦しみを同時に描いたことで、最後のショーはより感動的に仕上がっていると思う。タップ好きにはもちろん、タップを知らない人こそ、無条件に心が揺さぶられるような感動を味わえると思っています」

みずたに・ゆたか 1952年生まれ、北海道出身。主演作に、TVドラマ『熱中時代』『傷だらけの天使』(共にNTV)、映画『青春の殺人者』、『相棒』シリーズがある。

元・天才タップダンサーの渡(水谷豊)が、自身の魂をかけたラストショーを作り上げる。ショービジネスの光と影が一つの物語になった感動作! 監督/水谷豊 出演/水谷豊、北乃きい、清水夏生ほか 6月17日公開。(C)2017 TAP Film Partners

※『anan』2017年6月21日号より。写真・小笠原真紀 文・若山あや

(by anan編集部)


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