『呪術廻戦』主題歌を含むWho-ya Extendedの「変化を経たいまが感じられる」新作

写真・安田光優 取材、文・かわむらあみり — 2021.11.26 — Page 1/2
【音楽通信】第95回目に登場するのは、『呪術廻戦』ほか大人気アニメの主題歌を務め国内外で話題を呼んでいる、クリエイターズユニット・Who-ya Extended(フーヤエクステンデッド)!

バンド活動を経た延長線上にデビューがあった


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【音楽通信】vol. 95

2019年11月に、TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』(フジテレビ系)のオープニングテーマ「Q-vism(キュビズム)」でメジャーデビューした、ボーカリストのWho-ya(フーヤ)さんを中心としたクリエイターズユニット、Who-yaExtended。

同曲はiTunes総合チャート第1位など配信チャートを席巻し、ミュージックビデオがYouTubeで公開されるとすぐ100万回再生を突破。2021年には、TVアニメ『呪術廻戦』のオープニングテーマ「VIVID VICE」を担当し、デジタルシングルランキングで1位を獲得。同曲のオリジナルミュージックビデオはYouTubeの再生回数1250万回を突破し、国内外から注目を集めています。

そんなWho-yaExtendedが、2021年11月10日に2ndアルバム『WII (ダブリューツー)』をリリースされたということで、お話をうかがいました。

――まずはWho-yaさんの音楽的なルーツや影響を受けたアーティストから教えてください。

ルーツといえば、母親の影響で、生まれた頃から(アメリカのロックバンドの)リンキン・パークなどのミクスチャーサウンドバンドを自然と聴く環境で育ってきました。同時に、椎名林檎さんの楽曲も、子守唄として小さい頃から聴いていたので、しいてあげるならそのふたつですね。

――2019年11月に、新人では異例の大抜擢となったアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』(フジテレビ系 2019年)のオープニング曲「Q-vism(キュビズム)」でメジャーデビューされました。同曲はiTunes総合チャートやAmazonデジタル人気度ランキングと各1位を獲得し話題となりましたが、もともとデビューを目指して活動していたのですか。

デビューすることを意識していたことはないんです。もともと僕は中学、高校とバンドをやっていて、ライブをしながら「音楽というかたちでどこまで表現できるのだろう」と、自分の限界を探していました。いまはバンドではなく、クリエイターズユニットなのでかたちは違いますが、音楽での追求の延長線上にデビューがあった、というのが一番近い答えかなと思います。

――バンドでは何のパートを担当していたのですか。

ずっとボーカルを担当していました。そのときは、楽器を担当するよりも「歌うほうが好き」という気持ちが強かったんです。


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――ご自身で発信していこうと考えたのはいつ頃からなのですか。

親の影響で音楽を聴いて育ちましたが、その頃は、音楽は聴く側でしかないと思っていました。その考えが変わったきっかけは、中学3年生のときに最後の文化祭で思い出作りに「バンドやろうよ」と、誘われたことです。それまで音楽は受け取る側だったけれど、「自分から発信してもいいんだな」と思って。そこからは発信していきたいという気持ちが徐々に生まれました。

――学生時代から人気があったのではないですか?

あまり自分でモテていましたとかは言えないです(笑)。そのときは、ただ「楽しいから」という気持ちだけでバンドをやっていて、まわりからどう見えるということはあまり考えずに、純粋に「音楽が好き」という気持ちだけでしたね。

――デビュー以降、ずっとアーティスト写真などもイラストでしたし、Who-yaさんの姿を出さずに活動していたのが、2021年1月に配信された初のオンラインライブ「Sony Music AnimeSongs ONLINE 日本武道館」で初めて顔を出されました。何か心境の変化があったのでしょうか。

デビューという大きなタイミングで、今後どういうことをやっていきたいかと考えたときに、まずは音楽とそこから表現できる世界観という、自分たちで作り上げられるものだけで勝負したいと思いました。そのために楽曲を発表していくけれど、キービジュアルだけで活動してみたら、どういう反応をもらえるのか興味があったんです。

そこから1年少し経って、ある程度リスナーの方の反応がわかるようになってきたので、今度は自分がステージに立ってみてもおもしろいんじゃないかなと。そこで、今年1月の武道館公演のタイミングで、自分が表に出ることにしました。

――実際に出られて反響はいかがでしたか。

個人的には、みなさんから反響をいただけていると思います。キービジュアルだけで活動していた1年間と比べると、表に出ることによって、自分が歌っている姿がもっとダイレクトに感じてもらえるというのは、同じ曲を聴いたとしてもリスナーの方の聴こえ方が少し変わってくるところもあるのかもしれません。

内外ともに変化の時を経て完成した2ndアルバム


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――2021年11月10日に、2thアルバム『WII』がリリースされました。まず、仕上がってみての手応えから、お聞かせください。

1stアルバム『wyxt.』を昨年4月にリリースしてから約1年半が経って、その間、自分自身も変化して、世界でもコロナ禍となって内外ともに変化の多い期間でした。そのなかでこうして活動を続けられて、音楽を聴いてくれる方がいてというこの1年半を通じてのいまのWho-ya Extendedが感じられる2ndアルバムになっています。

――いつも曲作りはどのようにされているのですか。

このプロジェクトでいうと、いまも僕ひとりではなく、まわりのいろいろなクリエイターとともに、知見を借りながら曲作りをしています。曲を作るクリエイター、歌詞を書くクリエイター、音楽とは関係のない作業を担当するクリエイターなど、コアなメンバーはいるものの人数は固定せずに、その都度集まっていて。プロジェクトでディスカッションを進めて、最初の楽曲の軸から、より多くの方に響く楽曲としてどう落とし込んでいくか、パズルを組み立てていく感じで作っています。

――今作はいつ頃から制作されていたのですか。

今年は2月に1stEP『VIVID VICE』、8月に2ndEP『Icy Ivy』を出していて、そこから今作に収録している曲もあります。今回のように1枚のアルバムという構想でいうと、4曲目の「Wander Wraith(ワンダー レイス)」は、夏前ぐらいから制作は始まっていました。

――4曲目に収録された「Wander Wraith(ワンダー レイス)」は、疾走感あふれるギターが響く、アルバムのリード曲になっていますね。

そうですね。この曲は8月に行った有観客ライブで披露した楽曲なのですが、ライブの配信もありつつそこではアンコールは配信せず、実際にライブ会場に来てくださった方に限定で披露したいと思って作った曲なんです。なので、ライブの空間をイメージして切り取ったときに、映える曲になるよう作りました。


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この曲はギミック的なところがあるんですが、音声のデータをぶつぎりにした状態で並べたりしているので、ライブで完全再現できないものの、逆に別物としてのおもしろさがあると思っています。

――映画の幕開けのようなドラマチックさのある1曲目「WII -prologue-」や、ラストを飾る12曲目「12 WII -epilogue-」があり、アルバムを引き締めつつ彩っていますね。

おっしゃっていただいた通り、映画のようなイメージで、最初と最後にこの2曲を追加していて。もともと「WII -prologue-」はライブのSEとして、登場するときに使っていた楽曲なんです。8月のライブでも使用したので、そのライブを経てアルバムをリリースするタイミングで、作品でも1曲目にあったらおもしろいかなと入れてみました。

そしてアルバムを11曲通じて聴いていただいたときに、最後の12曲目「12 WII -epilogue-」を入れることで、アルバムとしてのまとまりができるかな、という発想から作っています。

――2曲目「VIVID VICE」は、大人気アニメ『呪術廻戦』(MBS/TBS系 2020年〜21年放送)の第2期オープニングテーマで、YouTubeのMusic Videoは再生回数が現時点で約1300万回を突破するほど注目を集めていますね。

この曲は『呪術廻戦』と親和性が高くなるように作りました。もともと僕自身、『呪術廻戦』が好きなので、自分が好きな作品の主題歌を歌うというのは、なかなかできないことで新鮮。作品が持っている引力やパワーが強いほど、自分自身も楽曲を通じてより一層いい楽曲になればという、熱量を持って挑めました。


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――11曲目「Icy Ivy.」はアニメ『NIGHT HEAD 2041』(フジテレビ系 2021年)のオープニングテーマとなりましたが、この曲はどのように生まれた曲ですか。

『NIGHT HEAD 2041』の主役が、超能力を持っているために社会から疎外されてきた兄弟という設定で、その能力のせいで国を追われるストーリーなんです。僕は生まれながらに超能力は持っていませんが、僕たちと照らし合わせてみるとベクトルは違いますが、家庭環境や経済的なことでは、自分で選んだわけではないけれど決められているという面は同じだなと共感できるところもあって。

たいていのことは生まれたときに、すでに決められているじゃないですか。でもそれに左右されずに生きていかなきゃいけないですし、この作品の主人公だけでなく僕を含めみんなが、運命的なものにのまれないように生きていけたらという思いを込めています。みんなの背中を押すほどではないですが、寄り添う曲になっているのではないかなと。

――バラードの10曲目「透明な花」は、唯一の日本語タイトルです。

初めて日本語タイトルにした楽曲なんですが、もし本当に「透明な花」があっても目に見えないので、そういった見えないもののたとえ、比喩のような意味で使っていて。楽曲は、祈りや願いが、テーマになっています。

たとえば夜は何も悩まずにゆっくり寝たいとか、自分の大切な人が幸せでいてほしいとか、理想や願いのようなものって確度の違いはあるかもしれませんが、みなさんそれぞれ持っているものじゃないかなと。それを「透明な花」というワードにたとえて歌った曲です。歌録りも、細かい言葉のニュアンスまでかなり意識して歌ったので、この曲が一番時間がかかりました。


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――歌うときはいつもどのようなことを意識して歌っていますか。

楽曲ごとのコンセプトやテーマにそって、「こういう思いが伝わればいいな」「この景色が伝わればいいな」というイメージを歌というツールを通じて、聴いている方にダイレクトに思いを感じてもらえるように意識して歌っています。

――では聴き手に、どんなふうに今作を聴いてほしいですか。

アルバムはライブと似ている気がしていて、それぞれの人たちが受け取ってくれる気持ちのままでいいのかなと思っています。こういうコンセプトだから聴いてほしいという押しつけでなく、それこそ今回は曲ごとにいろいろな顔を持つ楽曲が多いので、ただ受け取って終わりではなくて、作り手と受け取り手の共鳴があるように感じていて。

自分たちはこう受け取りましたということを、ファンの方たちはSNSなどで言ってくださっていることも多いので、そういった共鳴を経てやっと、アルバムが完成すると思っています。

――アルバムリリース後に、来年はライブの予定もあるそうですね。

1月23日に東京の渋谷にあるVeats SHIBUYAで、初めてのワンマンライブを開催します。来年1月でデビューして約2年経つのですが、いま応援してくれている方がいるからこそ、クリエイターズユニットとして成り立っているという思いがあるので、この2年間の思いをワンマンライブの一夜で埋められるような、聴いてくださる方々との“待ち合わせ場所”のような空間にしたいと思っています。アルバムからの曲も披露する予定なので、期待していただきたいですね。

ダイレクトに音楽を届ける場所を増やしていく


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――おうち時間が長引く昨今ですが、いまハマっているものはなんですか。

映画がすごく好きなので、家では映画を観ているかゲームをしているかという、夜更かし系のことをしています(笑)。その一方で、キャンプに行ったり釣りをしたりするのも好きなので、自然の多い山や川へ出かけることも。日によって、インドアだったりアウトドアだったり、けっこう両極端ですね。

――端正な顔立ちをされていて、ピアスも似合っていますが、普段からアクセサリーやファッションなどで、お好きなものやこだわりはあるのですか。

ファンの方からすると意外かもしれないですが、あまり服やアクセサリーは頻繁には買わないんです。このピアスもずっと、デビューしてから同じものをつけていて。サウナに行くとき以外は、ずっとつけているピアスです。

――サウナに行くことがあるのですね?

すごくよくサウナに行きます(笑)。ピアスをしたまま入ると耳がやけどしてしまうので、サウナ以外はずっと身につけていて。アクセサリーなどは、お店に行ったりネットで見て購入しています。シルバーが好きなので、全部シルバーで揃えていますが、一目惚れというのでしょうか、パッと見て気に入ったものを選んでいます。


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――ちなみに女性のファッションで好みはありますか。

色でいうと、カーキや黒系が好きかもしれません。街でパッと見ていいなと思うのは、日本のモード系ファッションブランドの『TOGA(トーガ)』、ロンドンのブランドの『COS(コス)』あたりの服装に目が留まりますね。いわゆる大人っぽい服装です。

――では素敵な女性像というと、どんな人でしょう。

性別問わずかもしれませんが、芯がある人ですね。自分で自分を裏切らない人は、いいなと。きちんと自分の意思があって、まっすぐに自分やまわりとも向き合っている人が好きです。

――では最後に、今年もあと少しとなりましたが、来年や今後の抱負をお聞かせください。

来年は年始から初ワンマンライブもありますし、フェスのようなイベント出演もしたいですし、個人的にはライブをたくさんやりたいです。いままで2年間、楽曲メインで活動をしていたぶん、来年以降はワンマンライブをきっかけに、さらにリスナーの方にダイレクトに音楽を届けられる場所が増えればいいなと考えていますし、足を運んでくださった方が「楽しい!」と思ってもらえる場所にしていきたいと思っています。

取材後記

これまでその姿は謎のベールに包まれていたところもあった、Who-ya Extended。今回ananwebに登場してくださったボーカルのWho-yaさんは、きらめく才能を感じさせる美男子ながら、あくなき音楽への探究の旅を続けるアーティストです。インタビューの際、つけていたシルバーのマスクチェーン姿もクールでした。そんなWho-ya Extendedのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。


写真・安田光優 取材、文・かわむらあみり

Who-ya Extended PROFILE
2019年11月、シングル「Q-vism(キュビズム)」でメジャーデビュー。
2021年1月、TVアニメ『呪術廻戦』第2クールオープニングテーマ「VIVID VICE」を提供し、 アーティストとして大躍進。5月には、一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にも出演し、その繊細なパフォーマンスが話題に。11月10日、2ndアルバム『WII』をリリース。
2022年1月23日、渋谷のVeats SHIBUYAで初ワンマンライブを開催する。

Information


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New Release
『WⅡ』

(収録曲)
01.WⅡ -prologue-
02.VIVID VICE
03.Discord Dystopia
04.Wander Wraith
05.MESSY WORLD
06.Growling Ghoul
07.The master mind
08.Wasted Dawn
09.Absolute 0
10.透明な花
11.Icy Ivy
12.WⅡ -epilogue-

2021年11月10日発売
*収録曲は全形態共通。

(通常盤)
SECL-2708(CD)
¥ 3080(税込)

(初回生産限定盤)
SECL-2706〜SECL-2707(CD+BD)
¥ 3800(税込)
*三方背スリーブ仕様。

<初回生産限定盤Blu-ray Disc>
(DISC2内容)
01.Wander Wraith -MUSIC VIDEO-
02.Icy Ivy -MUSIC VIDEO-
03.VIVID VICE -MUSIC VIDEO-
04.VIVID VICE / THE FIRST TAKE
05.VIVID VICE Acoustic version


Who-ya Extended オフィシャルサイト
https://www.wyxt.info/

Who-ya Extended official YouTube channel
https://www.youtube.com/channel/UCmrRmvzzPW5Hx8p9AVQIxIw

Who-ya Extended Twitter
https://twitter.com/wyxt_official