「標準語になると、もぞもぞしちゃう」WANIMA、絆を語る

2019.11.7
強さの中にある優しさは、時に背中を押し、時にともに歩む。力強く響き渡る、その音楽の源はどこから来るのだろうか。いまや日本全国で活躍するバンドとなったWANIMAに、“同郷”熊本から生まれるパワーやつながりについて伺いました。

同じ気持ちで生きてきた。ともに帰る場所がある、強さ。

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熊本県・天草市で幼い頃から一緒に育ったベースボーカルKENTAとギターのKO-SHIN。そこに、熊本市出身のドラムのFUJIが加わり、2012年から現在の3人で活動をスタートしたWANIMAは、“同郷”というかけがえのない絆で結ばれている。と同時に、彼らはライブに来るお客さんとの絆をとても大切にするロックバンドだ。ルーツであるメロディックパンクを軸にしながら、親しみやすいメロディで歌うのは、仲間とともに少しでも良い未来に進めたら、というポジティブなメッセージ。そういう音楽を、彼らは、聴き手の顔を直接見ることができるライブの現場で届けることにこだわってきた。いわば、そこはWANIMAとお客さんの“心の故郷”だ。どこまでも人間らしい体温で、自らのロック道を邁進するWANIMAの3人に、彼らの生き方をかたちづくった原点=熊本について話を聞いた。

――WANIMAにとって、地元・熊本はどういう場所ですか?

KENTA:僕とKO-SHINは天草で生まれたんですけど、昔はとにかく早く天草から出たかった。でも、いまはライブで帰ると、テンションが高くなります。良い思い出も、良くない思い出も詰まっている場所です。

――熊本への想いが変わったのは、いつ頃でしたか?

KENTA:上京してからですね。曲を創るときに、熊本の景色を思い出すことで、メロディや歌詞に辿り着くことができます。

――よく思い浮かべるのは、どんな景色ですか?

KENTA:僕とKO-SHINでやってたHANIMAっていうバンドで、朝5時に起きて、バスで熊本市内のライブハウスに毎週行っていました。僕らは市内を「街」って呼びます。そこに、新市街、下通り、上通り、あとは並木坂っていうのがあって。その景色は鮮明に覚えてますね。

――KO-SHINさんとKENTAさんは実家が近くて、小さいときから一緒に育ったんですよね。

KO-SHIN:そうですね。走ったら10秒ぐらいの距離です。

――KO-SHINさんは、熊本に対して、どんな想いがありますか?

KO-SHIN:待ってくれてる人がいますし、景色も変わらずに残ってるので、パワースポットですね。活動拠点にしてる東京とは違う気持ちにさせてくれます。

――FUJIさんは、ふたりとは少し離れてて、熊本市ですよね。

FUJI:さっき言ってた、並木坂に近いところです。僕は、18歳で家を飛び出して、昔は帰れない場所だったんですけど、いまは、逆に帰れる場所があるから踏ん張れるなと思ってます。

KENTA:故郷はすごく安心できる場所で、逆に気が緩むからなるべく帰りたくない気持ちもありますね。まだ戦っている途中です。

――東京に出てから、FUJIさんが加入したわけですけど、同じ熊本出身であることが、加入を決めるきっかけにはなりましたか?

KENTA:それもありますけど…当時、お互い本当にギリギリの状態でした。FUJIくんも、「もう熊本に帰ろう」っていうときだったし、僕らも、ドラムが抜けて、いよいよダメかっていうときだったから、出会ったタイミングで同じ方向を目指せました。

KO-SHIN:僕のなかでは熊本っていうのは0.1ミリぐらいだったかもしれないです。切羽詰まってたから、早くバンドとしてやりたい気持ちが強かった。

FUJI:僕は熊本の人とやれるのは大きかったです。それなりに決意をして出てきてるんだろうなっていうのが表情でわかったので。

KENTA:地方から出てくる人はみんなそうだと思いますね。僕らはもう一生帰らないぐらいの気持ちで熊本を出たので。知り合いがひとりもいないなかに飛び込んだけど、少なくともこの3人は同じ熊本の空気を感じながら生きてきたっていうのはあるから、わかり合えました。FUJIくんが参加して、方言とか、県民性とか、他のバンドにはないものを生かせるようにもなったと思います。

――WANIMAから見る、熊本の県民性はどういうものですか?

KENTA:自分が信じたこと、やりたいことに対する情熱はすごいと思います。「火の国」とか、「肥後もっこす」っていう言葉があるぐらいですからね。

FUJI:肥後の頑固者。そんな人が多いですよね。

――3人にも当てはまります?

KO-SHIN:譲れない頑固な部分もあると思います。それがないと、バンドを続けられない気もします。

――方言は、文字だと伝わりにくいと思いますけど、3人とも九州の訛りで喋りますね。

KENTA:標準語になると、もぞもぞしちゃう。最初に東京に来たときは、みんなドラマみたいな喋り方やなって思いましたね。「何してるの?」とか、熊本では、「何しよると?」なんですよ。その「の」って何? って思ったりして(笑)。

――東京で、方言が一緒の人に会ったりすると、テンションあがることがありませんか?

KENTA:すぐにわかりますよね。九州の中でもけっこう離れてる県はあるじゃないですか。でも、同じ九州ってだけで、「九州ですか!?」みたいになります。

FUJI:「あ、仲間おった」みたいな。

KENTA:鹿児島なんか行ったことなかったのに、「鹿児島ですか? 僕は熊本です!!」とか(笑)。これは九州の人あるあるですね。そこで絆が生まれるっていう。

FUJI:もっと言うと、西日本丸ごと仲間ですよ(笑)。

――はははは。ちなみにWANIMAのメンバー同士の絆について、いまはどう感じていますか?

KENTA:倒れるときは一緒です。365日中360日ぐらいは一緒にいますから。常に同じものを見てるので、その強さは音にも姿勢にも出るのかなと思います。

KO-SHIN:いつか熊本に帰るときは3人一緒ですね。

――その絆の強さは、最新アルバム『COMINATCHA!!』にも表れているんでしょね。

KENTA:創ってるときは会話がなく進みます。

FUJI:いまこういうことを考えてるんじゃないかとか、口に出さなくてもわかるので。

――このアルバムには、「りんどう」という熊本の県花をテーマにしたバラードが収録されています。

KENTA:りんどうは、群れて咲かない花です。そして、「悲しんでいるあなたを愛する」という花言葉があります。そういうところが、WANIMAのライブに来る子たちにも通じる。みんなひとりで答えを出して、生きていると思うんです。だから、歌詞のなかで、“弱いままで強くなれ”って歌ってるんです。自分もそういう姿勢で生きていけたら、みんなとともに良い方向に向かえるんじゃないかって。

――WANIMAのバンドの在り方にはお客さんと「ともに生きる」という想いも強いですよね。

KENTA:そうですね。僕らのライブがWANIMAにとっても、お客さんにとっても帰る場所になったらいいなと思っています。「ああ、そういえば、WANIMAとライブをしたよな」とか「WANIMAに出会えてよかった」っていう場所や景色や瞬間を増やしていくことで、お客さんとつながって生きていけると思うんです。僕らは、そこに重きを置いて生きていますね。

ワニマ 熊本県出身のKENTA(Vo&B)、KO-SHIN(G&Cho)、FUJI(Dr)の3人組ロックバンド。2010年に結成、2017年に第68回NHK紅白歌合戦出場。最新アルバム『COMINATCHA!!』を引っ提げ全国ツアー中。

※『anan』2019年11月13日号より。写真・ISAC(SIGNO) 取材、文・秦 理恵

(by anan編集部)

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