日米豪印が抱える“中国との課題” 4か国が連携した「Quad」の意義

2021.5.10
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「Quad(クアッド)」です。

インド太平洋地域の平和のため連携し中国に対抗。

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「Quad」とは、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国が軍事的、経済的に連携をしていこうという枠組みです。インド太平洋地域で強引な海洋進出を繰り返している中国に対して、包囲網を作りたいという思惑があります。それぞれ中国との間には難しい課題を抱えているのです。

日本は尖閣諸島問題。中国は「海警法」を施行し、日本の海上保安庁にあたる中国海警局が武器を持てることになりました。そして、しばしば日本の領海に侵入し、プレッシャーをかけています。アメリカは中国との経済対立が鮮明。厳しい貿易折衝を続けています。また、自由主義と中国共産党のイデオロギーの対立も激しさを増してきました。オーストラリアも中国との貿易摩擦が激しく、中国の買い手市場になっており、対等な関係を築くことを望んでいます。中国と国境を接しているインドは常に緊張関係にあり、国境付近では小さな衝突が続いています。

Quadのもとになったのは、2006年に当時の安倍首相が提唱した、「日米豪印による戦略対話」でした。日本もアメリカも後任の政権がその意思を引き継ぎ、バイデン大統領の呼びかけで、3月12日にQuad初の首脳会合が開かれました。自由や民主、法の支配を共通の価値として共有することを大きな目的にしています。

Quadの規模を数字で見てみると、人口は中国の14億人に対して、Quad4か国の合計は18億人。GDPは中国が14兆ドルなのに対して、Quadは30兆ドル。軍事費は年間2600億ドルの中国に対して、Quadは8700億ドルになります。

対抗といっても、戦争をして領土を奪うという話ではありません。あくまで経済的な覇権争いです。中国の経済パワーは強大ですから、完全に敵に回すことなく、うまく商売をしたいという思いもあるため、複雑なんです。しかし、いかなる理由であれ、人権や人道を逸脱する行為は認められませんし、ルールに基づいた貿易をするということは大前提であるべきです。自由主義国がまとまって、中国やそれに追随する諸国に対して、自由と民主の価値を見せ続けることが大事だと思います。

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堀潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。

※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)