衝動買いや人間関係のトラブルも! PMSより重い女性の“PMDD”とは?

2020.3.24
生理だけでも面倒なのに、その前触れみたいにやってくる憎いやつ。やっかいなPMSの仕組みと対処法を知って、ホルモンに振り回されない毎日を送ろう! PMSについての様々な疑問に、いけした女性クリニック銀座院長・池下育子先生、東京女子医科大学の東洋医学研究所で所長を務める木村容子先生が答えてくれました。

Q:どんな症状が出るの?
A あらゆる精神的、肉体的不調を感じます。

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「PMSでは下腹部の膨満感や痛み、頭痛、乳房痛などの身体症状と、イライラ、怒りっぽい、憂うつなどの精神症状があります。以前45名のPMS患者さんを調べた際には、精神症状が多かったです」(木村先生)

「ほかにも、甘いものが食べたくなったり過食ぎみになったりする摂食異常、眠気、肌あれ、むくみ、便秘や下痢など様々な症状が。意外なところでは、性欲が異常に高くなる、衝動買いしてしまう、無性に整理整頓したくなる、というのもPMSの精神的症状。なんだか急に爆買いしちゃった、とか最近食べすぎて太ってしまったなどという人は、本人が自覚していないだけで、PMSの可能性があるのです」(池下先生)

Q:どうして心に影響が出るの?
A:脳とホルモンの複雑な関係が原因かも。

「女性ホルモンの分泌量は、脳の視床下部というところがコントロールしています。視床下部は自律神経の調整役として有名ですが、もともととてもエモーショナルな部分で、感情の形成にも関わっているんです。生理前は女性ホルモンの量がグッと変わりますから、視床下部がその影響を受けるせいで、感情が不安定になる可能性があります」(池下先生)

「気持ちの安定に関わるセロトニンに関係がある、などといわれています。脳の中にあるうつ状態にスイッチを入れるプロセスが、プロゲステロンの影響で働きやすくなるため、生理前にプロゲステロンが増えるとうつっぽくなります。諸説ありますが、今のところ正確な原因は不明です」(木村先生)

Q:最近よく聞く“PMDD”って何?
A:PMSの中でも精神症状が重いケース。

「生理前に起こる不調の中でも、イライラや憂うつなど精神的症状が主体で重いケースを、月経前不快気分障害、PMDDと呼びます。生理のある日本女性のうち、PMDDに悩んでいる人は1.2%ほど。家庭や職場での人間関係に支障をきたすほどつらいケースもあります」(木村先生)

「PMSやPMDDによる精神的な症状は、衝動買いや口喧嘩など、思わぬトラブルにつながることも。イギリスでPMSを研究している産婦人科医によると、PMSが原因とみられる傷害、殺人の例もあるとか。事実欧米では、PMSは減刑の理由として認められています。残念ながら日本では、PMSやPMDDの深刻さが、まだ浸透していません」(池下先生)

Q:誰に相談すれば?
A:まずは婦人科のクリニックで相談を。

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「PMSの症状が重くて家事や仕事がままならないという人は、婦人科や女性外来に相談を。最近は心療内科でも、PMSに対応してくれるクリニックがあります。インターネットであらかじめ調べておくと、間違いありません。婦人科へ行くときは、もしあれば過去3か月分くらいの基礎体温表を持参して。そうすれば、診察がスムーズに行えます」(池下先生)

「治療は、カウンセリング&生活習慣指導と、薬物療法に分けられます。生活習慣では、食事や運動などのアドバイスを。薬物療法としては、精神安定剤や鎮痛剤などを処方する場合もありますが、PMSといっても人によって症状が違うので、各自に合わせた漢方薬を使用します」(木村先生)

池下育子先生 いけした女性クリニック銀座院長。心とカラダの悩みに真剣に向き合う。著書に『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』(東京書籍)ほか。

木村容子先生 東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長、教授。共著『太りやすく、痩せにくくなったら読む本』(大和書房)が好評。

※『anan』2020年3月25日号より。イラスト・サヲリブラウン 取材、文・風間裕美子

(by anan編集部)