クレイジーケンバンド・横山剣「女と車と犬、オレ流の選び方」

写真・黒川ひろみ 取材、文・かわむらあみり — 2019.8.7
音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第2回目に登場するのは、“東洋一のサウンド・マシーン”CRAZY KEN BANDから、名言「イイネ!」でおなじみの横山剣さん!

これまでで一番気に入っているアルバム

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CRAZY KEN BANDのフロントマン・横山剣

【音楽通信】vol. 2
 
1997年春、横浜本牧で結成されたCRAZY KEN BAND(通称CKB)。2018年にデビュー20周年を迎え、さらに円熟味を増して磨きのかかったCKBが、今年、8月7日にニュー・アルバム『PACIFIC』をリリースします。“歌うメロディー・メイカー”でもあるボーカル・横山剣さんに、新作のお話をうかがいました。

ーー昨年、デビュー20周年おめでとうございます。

ありがとうございます。

ーーニュー・アルバム『PACIFIC』がリリースされるということで、聴かせていただきまして、すごくかっこいいアルバムですね。

自分でもこれまでで一番気に入っているんです。

ーーそうなんですね。今回のアルバムのテーマは「港町」ですが、その理由を教えてください。

頭に浮かんだ順にどんどんレコーディングしていくんですけど、全体の傾向として、歌詞や曲調が港っぽい、本牧埠頭っぽいなと思ったんですね。

テーマはいつも先に決めるんじゃなくて、途中からなんです。楽曲が半分ぐらいそろったときに全体のテーマが見えてくるので、毎回、後出しジャンケン的にテーマを決めています。

今回は「港町」という、ぼくにとって当たり前の風景が、たとえばコンテナ埠頭を見ていたり、普段通る道でふっと思い出とともに頭によぎったりしたんです。

ーーコンテナはお好きなのですか。

コンテナとか、タクシーとか、飛行機会社のマークとか、記号のあるものに弱いんです。国旗も好きだし、世界のホテルを見るのも好きです。実際にコンテナ周辺で8年ぐらい検査の仕事をしていたので、けっこうコンテナとは親しいつきあいがあるんです。

ーーそうだったんですか。わりと長くお仕事されていたのですね。

はい。もうその頃はCKBをやっていましたけれど、1994年から2002年まで貿易検査の仕事をやってましたから、港は庭みたいな感じです。

19枚目だけどファースト・アルバムみたいな気分

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ーーところで、剣さんが作詞作曲されるときは、どのようなときに楽曲が生まれるのですか。

だいたい運転中が多いですね。

ーー運転中に思い浮かんだものを家に帰ってから、曲に書き起こすんですか。

そうですね。忘れちゃったらアウトなんですけど、覚えていれば録音しています。

ーー小学校の頃から独学でピアノで作曲をされていたそうですが、これまでだいたいは1年ごとのペースでアルバムをリリースされていて、自然と曲がたくさん生まれているのですか。

楽器を弾いていて曲が生まれることもありますし、基本的に半分以上は、運転しながらとか、歩きながらとか、飛行機に乗っているときとか。移動空間の景色によって押し出される感じです。

ーーでは逆に、じっとしているとあまり曲作りは進まないのですね。

そうですね、たとえば作曲のために1か月とか1週間とかお休みもらって部屋にこもっていても、何も出てこない。前にホテルの部屋を借りて作曲してみようとしたけど、全然だめだったことがあって、遊びに行っちゃった。(笑)

ーー(笑)。では曲ができてから、メンバーにお渡ししてみんなで作る感じなのでしょうか。

いまは曲ができたら、音源をデータで送ったりしています。

ーー新作『PACIFIC』で、「このあたりを聴いてほしい!」というところはありますか。

1曲目から18曲目まで全部を聴いてほしいです!

ーーそうですよね。とくにこだわったところはありますか。

こだわったのは“ベース”ですね。あと、なんていうのかな、メッセージにしにくいことをメッセージにしているので、“質感”だったり、“湿度”だったり。聴いている人に曲の情景が勝手に浮かぶようなもの。

ぼくは他の人にはなれないので、自分の感覚でしかできないので、みんなに向けてというのは無理があるんですが、つきつめたものはポピュラーになっていると思うんです。いまも手探りで作ってますけどね。

そういう意味では、過去のアルバム18枚よりは、具体的に今回それができた感じなので、19枚目のアルバムだけど、ファースト・アルバムみたいな気分です。

ーーすごくフレッシュな感覚ですね。歌われるときに、気をつけていることはありますか。

たばこですかね。実は、たばこをやめてから、声が枯れやすくなったんです。たばこを吸っているときのほうが声が強かったんで、一概に禁煙がいいとは思えないんですけど、ステージでのアクションには、禁煙は確かにいいですね。

ーーいつから禁煙なさっているのですか。

2008年ですね。なんかたばこが苦手になっちゃったんですよ。もともと好きじゃなかったんでしょうね。

物事はインスピレーションで決める

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ーーアルバムの収録曲「何もいらない」「風洞実験」など、詞の中にいろいろな“女性”が登場しますが、剣さんご自身が一番好きな女性のタイプを教えてください。

女性らしい女性。たくさんすてきな女性がいるので目移りしちゃうんですけど。かわいらしくて、おもしろくて……とはいえ、とくにないですね。そのとき好きになった人が、好きな人。

ーーインスピレーションですね。

そうですね。車もそんな感じで、次から次に車を買うんですけど、いろいろな車を見る必要ないっていうか。「これだ!」と思ったら、その情報だけをパッと直感で集める。

ーー結果的にそれは良い結果に?

たまに失敗するときもあるんですけど(笑)。女性とのおつきあいも、失敗があるように、物事はなんでもやってみないとわからないです。迷って躊躇してるよりはね。実行したほうがいいんじゃないかなと。女性のことはいまじゃなくて、過去の話ですけど。(汗)

ーー(笑)。音楽活動がお忙しいかと思いますが、それ以外の普段されている趣味というと、お車ですか。

車、バイク、さらに植物をいじったりするのもあります。子どものときに植木屋さんでアルバイトしていたんで、多少好きだったんですね。

あと、小学校のときにシュロとかフェニックスとか、南国っぽい植物の写真を撮っていたんです。そういうものをいまも欲しいなと思いまして。手入れが大変だから、楽な範囲ですけど。

ーーガーデニングされるんですか。

ガーデニングというほどではないですね。でも、あんまりそういうのはやらないんで、自分にしては珍しい趣味です。あとは犬を飼ったりとか。

ーーワンちゃんは1匹ですか。

1匹。チワワです。たまたまホームセンターで見たときに「これだ!」と。シュナウザーとけんかしてたんですよ。チワワが圧勝していて。

ーーシュナウザーのほうが大きいのに!

そうなんですよ。ほんとは犬を飼うつもりじゃなくて、接着剤かなんかを買いに行ったんですよ。そのときペットショップの周りにギャラリーができていて、見に行ったら犬がけんかしていて、決めました。

ーー剣さんは、女性も車もワンちゃんも、インスピレーションで「これだ!」と決められるのですね。

そう(笑)。「これだ!」ってね。

過去や未来を考えないで瞬間、瞬間でスパークしよう

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ーー8月からはアルバムのツアーも始まります。どんなライブになりそうでしょうか。

新譜からもけっこうやると思います。いまもう選曲もやっているのですが、日に日に変わります。新曲と、18枚もアルバムがあるんでその中から選りすぐりと、お客さんが2、3曲決めるリクエストコーナー。あとは出たとこ勝負です。パッケージツアーという感じじゃなく、ライブは25本あるので、25ぶんの1というか。どれも“一点物”です。

ーー『ananweb』の読者のかたは女性が多いのですが、最後にメッセージをお願いします。

年を重ねるっていうことはね、ネガティブなことじゃないです。毎年加齢していきますが、ポジティブに考えてほしいですね。ぼくは59歳ですけど、いまだから思えることとか、発見とかがあるので、「いついつまでにどうしないと」とか、過去とか未来とか考えないで、瞬間、瞬間でスパークしていただきたいと思います。

取材後記

デビュー21年目となるCKBですが、剣さんはとてもジェントルマンですてきな方でした。これまでもこれからも、ファンク、ロック、ソウル……と表情豊かな歌とサウンドを私たちに届けてくれるでしょう。まずはニュー・アルバムをチェックしてみてくださいね。

CRAZY KEN BAND PROFILE

リーダーで作曲・編曲・作詞・Keyboards・Vocalを担当する横山剣を中心に、1997年の春頃、横浜本牧の伝説的スポット「イタリアンガーデン」でCKBが誕生。1998年にアルバム『Punch ! Punch ! Punch !』でメジャーデビュー。横山は作曲家として、和田アキ子、SMAP、松崎しげる、グループ魂ほか、数多くのアーティストに楽曲提供も行い、m-flo、ライムスター、マイティー・クラウン・ファミリーなど、ジャンルレスのコラボレーションを実現するなど、その音楽活動は多岐にわたる。今年、8月24日から「CRAZY KEN BAND TOUR PACIFIC 2019」と題した全国ツアーを開催。

Information

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New Release

『PACIFIC』
1. Night Table
2. Tampopo
3. クレイジーの中華街大作戦!
4. ひとり
5. Disc Jockey * Part 1&2
6. KARAOKE International
7. 何もいらない
8. GET
9. 北京
10. Stay at Bund Hotel - シェルルームの夜は更けて-
11. 場末の天使
12. 風洞実験
13. 車と女
14. エルヴィス顔のタイムトラベラー
15. さざえ
16. 南国列車
17. 南国列車 * VIDEOTAPEMUSIC Remix
18. Stay at Bund Hotel - 夜明けのチェックアウト ‒

8月7日発売
(通常盤)
UMCK-1633
¥ 3,000(税別)

【CRAZY KEN BAND オフィシャルサイト】
https://www.crazykenband.com