志村 昌美

ATMでまさかの襲撃事件発生!? 実録!トラブルトラベラーMasamiの事件簿Vol.6

2017.1.24
これまでに海外旅行のべ30回、海外留学3回の経験を持つライター・志村がお送りする「実録!トラブルトラベラーMasamiの事件簿」。年末年始に旅行した方は、トラブルのない旅を楽しめましたか? 今回お送りするエピソードは、気を抜くと誰にも起きる可能性がある “劇場型犯罪” です。それはなんと……。

街なかのATMで襲われた in ロンドン!

一瞬のスキが命取りに……。
一瞬のスキが命取りに……。

【実録! トラブルトラベラーMasamiの事件簿】vol. 6

イギリスに留学して約1年半が経ったころ。ロンドンでも中心地といわれているエリアで買い物をしていたとき、衝撃の事件が発生したのです!

まだ夕方くらいで、街にも人が溢れているという安心感から、「ここなら大丈夫でしょう」と思い、銀行の外に備え付けてあるATMを使うことにしました。とはいえ、警戒心も一応あるので、手で隠しながらパスワードを打って、ホッとした次の瞬間……。

ATMの画面が新聞紙で覆われたうえに、横から謎の女性がいきなりシャウト!

い、いつの間に!?
い、いつの間に!?

突然のことすぎで、何が起きているのかさっぱり状況が把握できない私。わかっているのは、知らぬ間に両サイドをジプシー風の女子2人に挟まれているということ。

その2人は新聞紙を片手に持ち、車のワイパーのように私が見ているATMの画面を交互に隠し、1人は「この機械は壊れてるからー!」と英語で叫び続け、もう1人は無言で新聞紙を振るだけ。

どうしていいかわからないながらも、とりあえず「あなたたちの助けは必要ありません!触らないで!」と言いながら、まるで背泳ぎ選手のごとく両うでをぐるぐる後ろに回しながら応戦。お互いに一歩も引かないこう着状態が続くなか、私が最初に思ったことは……。

「パスワードを見られたかもしれないから、カードを持ってすぐに逃げよう!」

とりあえず遠くまで走れー!
とりあえず遠くまで走れー!

そう思った私は、ひじで攻撃を抑えながら、カードが出てくるところに手を構えて、カードが出てくるのを待つことに。恐怖のあまり、いち早くその場を立ち去りたいという思いと、カードさえ守ればしのげると思ったのですが……。

それこそが、この犯罪の大きな落とし穴!!!

えっ!まさかの!?
えっ!まさかの!?

この状況になると、誰もがこの2つの気持ちに駆り立てられるはずです。
・襲われて怪我するを前に早く逃げなきゃ
・カードを奪われてはいけない

しかし、彼女たちの “本当の目的” はこの心理の裏を巧みについたところにあるのですが、わかりますか? 正解は……。

狙いはカードではなく、その場で現金を引き出すこと!

一枚~、二枚~、三枚~。
一枚~、二枚~、三枚~。

「いったいどうやって?」と思うかもしれませんが、彼女たちのテクニックはとにかく見事なものなので、私もその瞬間にはまったくわかりませんでした。

では、なぜ私は気がつくことができたかというと、カードを持って逃げようとした直前、彼女たちが動かし続ける新聞紙と新聞紙の隙間から、かろうじてATMの画面を見ることができ、ある文字が目に飛び込んできたからです。それはなんと……。

「お金を取ってください」という一文!

パスワードを打って以降、何もボタンを押していないので、「え?なんで?」と軽いパニック状態。「いやいや、何もしてないのにお金が出てくるはずないよね」と思ったので、見間違えかなと思ったものの、「お金を取ってください」というからには、お金が出るのかもしれないとカードを取ったときと同様に、ひじで攻撃をかわしながらお金が出てくるところの前に手を固定させ、そのときを待ちました。(ちなみに、これは私の推測ですが、彼女たちはATMの前の防犯カメラを警戒しているのか、ある一定の距離を保ち、それ以上は踏み込んできません。なので、この作戦が地味に効果を発揮!)

はたして、お金は出てくるのか?
はたして、お金は出てくるのか?

すると、大量のお札がバサッと出てきた!

「えー!なんでー!」と言いたい気持ちを抑えながら、お金を握りしめた私は、まずATMの隣にあった日本食チェーン店に駆け込み、カバンにお金をしまったあとに、向かいにあるデパートのトイレに直行。個室に入ったところで、金額がいくらだったのかを確認し、ようやくお財布にお金をしまいました。

まさに私が駆け込んだデパートがこちら!
まさに私が駆け込んだデパートがこちら!

ここでようやく、トラブルトラベラーMasami史上初の勝利宣言!

超絶怒涛のトラブルトラベラー!イェエエエイ! ジャスティス!
超絶怒涛のトラブルトラベラー!イェエエエイ! ジャスティス!

そのときは恐怖で軽く震えましたが、とりあえずカードも現金も身の安全も確保できひと安心。とはいえ、なぜ現金が出てきたのか、わからない方も多いと思います。

そこで、一連の犯罪を検証!

どんなことも見逃さないわよっ!
どんなことも見逃さないわよっ!

まず、彼女たちが現れたタイミングがなんとも絶妙であることに気がついていますか? 通常、私たちはパスワードを打つ瞬間は緊張感がありますが、そのあとは気を抜いてしまいがち。その一瞬のスキをついてくる上に、私たちが自分でパスワードを打っているので、彼女たちはパスワードを盗み見したりする手間が省けますよね。

絵のクオリティ問題は置いておいて、あくまでもイメージです……。
絵のクオリティ問題は置いておいて、あくまでもイメージです……。

そして、海外のATMは画面の両サイドにボタンがついているものもあるので、この犯罪がより簡単に行われてしまうのですが、ここで大きな力を発揮するのが新聞紙。画面を見せないようにしているのも目的のひとつですが、もうひとつは新聞紙で注意をそらしているうちになんと現金引き出しのボタンを押しているのです!

あらかじめどの順番でボタンを押せば、一番高い金額を引き出せるのかを彼女たちは知っているので、被害者が新聞紙やカードを守ることに気を取られている間に、引き出しへと着々と進んでいます。

実は、一番高い金額を選択する理由がもうひとつ!

高額を狙っているのはもちろんですが、金額が上がれば上がるほど、あることが長くなりますが、わかりますか? 

そうです! 機械もお札を数える手間があるので、お金が出てくるまでの時間が長くなるのです。しかも、ATMではだいたい10~20ポンド札という小さい額のお札で出てくることが多いので、高額なら枚数もそこそこの数になりますし、通常はカード→現金の順番で出てくるため、多くの人はカードを取った瞬間に逃げてしまいがち。

ということで、その場を離れたあとに出てくるお金が盗られているので、被害者たちは現金が引き出されていることにその場では気づけないのです。

あれ?引き落とした覚えないのに残高が少ない……。
あれ?引き落とした覚えないのに残高が少ない……。

私は偶然にも画面の文字に気がつき、半信半疑ではあったものの「お金を取れというからには出るんだろう」と冷静になれたので、難を逃れましたが、あやうく200ポンド(約3万円)を持っていかれるところでした。

そんなこんなで、翌日は被害報告にGO!

勝利の余韻にひたりながら、この状況を前向きにとらえた私は “活きた英会話” の勉強の一環だと思い、銀行の営業時間中にふたたび行き、係員に詳細をつたない英語で説明しました。すると、以前からその手の事件が多発していて、警察も犯人を追っているところだったそう。それが原因でしばらくATMを閉めていたけれど、解禁してからは私が一番目の被害者だったとのこと。トホホ……。

では、「どうすればいいの?」と思ったあなた! 

合言葉は、「明日は我が身!」
合言葉は、「明日は我が身!」

まずは、海外でATMを使う際はひとりで使わないこと。そもそも日本人は狙われやすいですし、自分でおろしたお金をひったくられる場合もあるので、一緒に旅行している人がいれば、後ろを見張ってもらうというのも有効です。

そしてもうひとつは、銀行のなかにあるATMを使うのがオススメ。営業時間内であれば、警備員もいますし、カードが飲み込まれるなど他のトラブルが発生したときも、すぐに対応してもらえるからです。

「人通りが多いところだから大丈夫だろう」と思わない!

人ごみ=犯罪者も身を潜めやすいということ!
人ごみ=犯罪者も身を潜めやすいということ!

私も「にぎやかなところなら、何かあれば誰か助けてくれるだろう」と思いましたが、意外と気がついてもらえません。というのも、私は攻撃を振り払うのが精一杯で、大声を出して助けを求めることができませんでしたし、周りを歩く人たちも、よほど騒がないと助けてはくれないのだと実感したからです。

日本でも、例えば電車で痴漢に遭ったときに怖くて大きな声が出なかった経験をしたことある女子もいると思いますが、突然の出来事に驚いたときは出そうと思ってもすぐには声が出ないことありますよね。なので、「助けてもらえるだろう」と思うよりも、「助けを必要とするような状況に陥らないように気を付ける」ということの方が優先事項なのです。

それにしても、「こんな街中で明るい時間に襲われる私って……」と思ったのですが、同じような経験をしている人を発見! それは……。

そうなんです!私の母こそ元祖トラブルトラベラー!

やはりこの親にしてこの子ありとでもいうのか(笑)、前回のスーツケース盗難事件の回で触れた子供時代のヨーロッパ1か月旅行で、母と姉と私の3人で人通りの多い道を歩いていたときのこと。なんと……。

ジプシー風の女性が突然襲いかかってきて、カバンに手を突っ込んできた!

これこそ、まさにマンマミーア状態!
これこそ、まさにマンマミーア状態!

母のカバンのなかにすごい勢いで手を入れてきたのですが、その後はまるでセール品を取り合っているかのような状態。おそらく財布を取ろうとしていたのですが、もちろん私と姉は子どもすぎて役に立たず、母がひたすら手を振り払うことに……。

そして、驚くことにトラブルトラベラーJunkoの勝利! 

再び登場!超絶怒涛のトラブルトラベラー!イェエエエイ! ジャスティス!
再び登場!超絶怒涛のトラブルトラベラー!イェエエエイ! ジャスティス!

狙われる相手も同じなら、結末も同じとはやはり血は争えませんね(笑)。ちなみに、そのときに学んだ教訓も付け加えておくと、カバンもファスナーなどで、きちんと閉まっているものにしないと簡単に手を入れられてしまうので、みなさんも心に留めておいてください。

ということで、人が多いところでも警戒心を緩めない!

私、負けないので!
私、負けないので!

犯罪者たちは、私たちの一瞬のスキと気の緩みを見逃さないので、いつどこで誰があなたを狙っているかはわかりません! 常に ”防犯のアンテナ” を張るようにしましょう!

以上、「ATMで襲われた in ロンドン!」でした。「母娘揃っての奇跡の完全勝利宣言!」と調子に乗っていたら、なんとその2週間後に新たなトラブルに見舞われ、またもやどん底に突き落とされることに……。次回は、どの街にも潜むある事件についてご紹介します。お楽しみに!