志村 昌美

若手注目株の醍醐虎汰朗「トップレベルで怖い人でした」過酷な初主演の現場を語る

2022.8.8
夏の風物詩である甲子園ではすでに熱戦が繰り広げられていますが、負けないくらい熱くて激しい青春を体感できると話題の映画『野球部に花束を』もいよいよ開幕。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。

醍醐虎汰朗さん

【映画、ときどき私】 vol. 510

アニメ『天気の子』で主役に抜擢されたのをはじめ、舞台『千と千尋の神隠し』ではハク役を務めるなど、注目を集めている醍醐さん。本作では、青春を謳歌しようと高校に入学したはずが、いつの間にか地獄のような野球部生活を送ることになってしまう主人公の黒田鉄平を演じています。今回は、過酷な撮影現場の裏側や青春の思い出、さらにいま夢中になってることなどについて、語っていただきました。

―ご自身にとって本作は実写映画で初主演となりますが、現場に入ったときはどのようなお気持ちでしたか?

醍醐さん ワクワクする気持ちもありましたが、いろいろ考えすぎてしまった状態だったこともあり、初日はとにかくガチガチ。あまりにも緊張していたので、歩き方がわからなくなるほどでした(笑)。

―緊張されていた理由のひとつには、野球が未経験だったこともあるのではないかなと思いますが、事前にかなり練習して挑まれたとか。

醍醐さん クランクインの前にコーチの方がついてくださって練習しました。まずはキャッチボールから始めて、そのあとはバットを振ったり、キャッチャーの捕球練習をしたりしました。そのときに驚いたのはボールの硬さ。正直に言うと、いままでは野球の試合でデッドボールに当たって痛そうにしている人のことを「大げさだな」と思っていたんです。でも、痛いどころの騒ぎではないことがわかりました。硬球はもう石ですね……。僕も大きなあざがたくさんできました。

―ということは、劇中で痛がっているシーンは実際のリアクションですか?

醍醐さん そうですね。撮影中はボールを受ける手がパンパンに腫れました。でも、芝居はしないといけないし、ビビッていると監督から注意されるので、歯を食いしばって続けるしかなかったです。でも、内心では地獄だなと思っていました(笑)。

芝居ではなく、本当に部活をしている気分だった

―髙嶋政宏さん演じる野球部の監督はスパルタでしたが、本作の飯塚健監督もかなり厳しかったんですね。

醍醐さん これは僕の話ではないですが、本番中に髙嶋さんのアドリブがおもしろくて笑ってしまった人がいて、それがきっかけでカットになってしまったことがあったんです。そしたら飯塚監督がその人のところに近づいていって「ふざけてんのか?」と。もしかしたら、野球部よりも現場の監督のほうが、怖かったかもしれません(笑)。

―とはいえ、実際に髙嶋さんの演技はかなりおもしろかったのでは?

醍醐さん まだ慣れていないときは、僕も笑っちゃいましたね。ただ、髙嶋さんの演技は慣れてもおもしろいですし、絶対に笑っちゃいけないと思うと余計笑いそうになるので、カメラが違うところを向いているときに笑ったりしながら乗り切りました。

―髙嶋さんからは「自分がアドリブを延々とやりすぎてみんなに申し訳なかった」といったコメントが出ているようですが、何があったのでしょうか。

醍醐さん 劇中で、髙嶋さんに合わせて「野球に狂え!」とみんなで一緒に叫ぶシーンを撮っていたときのこと。テストも本番もまったくカットがかからなくて、延々と叫んでいたら、翌日になって部員の大半の声がカスカスになってしまったんです。僕は喉が強いほうなので大丈夫でしたが、とはいえ舞台のお仕事以外で龍角散を溶かした水を常備して挑んだ現場は初めてな気がします。

―肉体的な疲労もかなりあったと思いますが、きつかったシーンといえば?

醍醐さん 引退ノックをしている場面では、本当に倒れるまでやり続けたので、あのシーンでは誰も芝居していないですね。みんな本気でしたし、素で限界を迎えて倒れています。翌日もみんな歩けないくらいになっていたので、本当に部活をしている気分でした。

サッカー部だった頃を思い出して、懐かしくなった

―ご自身は、中学生のときにサッカー部に所属されていたそうですね。劇中の練習風景はいまなら問題になりそうなものばかりでしたが、当時を思い出すこともありましたか?

醍醐さん 僕がいたサッカー部もいまの時代っぽくないくらい本当に厳しかったので、そういう意味では懐かしい気持ちになりました。あと、劇中で出てくる“野球部あるある”で「怖い指導者ほど一度泳がす」というのはどこも同じなんだなと。いまでもたまに調子に乗ってると、泳がされたうえでスパーンと怒られることがあるので、この言葉は心に刻まれました(笑)。

―怖いと言えば、“顔面凶器”と呼ばれる小沢仁志さんが先輩役として登場するシーン。共演されてみていかがでしたか?

醍醐さん 誰よりも現場に早く入り、座ることなくモニターの前でつねにチェックされていらっしゃるのがすごいなと思いました。ただ、いままで出会ってきた人のなかでも、トップレベルで怖かったです(笑)。

といっても、ご本人は本当に優しい方なので、Vシネマのイメージから僕が勝手に怖がっていただけですが……。撮影の合間には、日常的な会話もさせていただいたのに、粗相をしてはいけないという気持ちが強すぎてどんな話をしたのかまったく思い出せません(笑)。

―そのお気持ちもわかるほど、画面越しでも伝わる迫力がありました。今回は、中学生以来の坊主にも挑戦されていますが、抵抗はなかったですか?

醍醐さん いや、最高でしたね。お風呂なんて、体感2分で終わる感覚です。中学生のときは、髪の毛がなかったら女の子にモテないと思ってショックを受けていましたが、いまはそういうのもなくなりましたし、仕事なので何とも思わなかったです。

高校生に戻れたら、映画のような恋愛をしてみたい

―ただ、劇中で坊主にするシーンでは、1発で決めないといけないプレッシャーもあったのではないかなと。

醍醐さん 本来、坊主にする場合は、一旦髪を短くカットしてからしないとバリカンに髪の毛が絡まってしまうんですが、今回は長いままの状態から一気にいったので、けっこう引っかかってしまって……。髪の毛がブチブチ抜けてめちゃくちゃ痛かったです。でも、坊主にされる僕だけでなく、僕を坊主にする人も周りが見えなくなるくらいアドレナリンが出ていたからこそできた気がします。

―ちなみに、ご自身にとって青春の思い出といえば何ですか?

醍醐さん 暇さえあれば友達と遊んでいたので、用もないのに友達の家に泊まりに行ったり、花火をしたり、というのをよくしてましたね。

―もし高校生に戻れたらしたいことはありますか?

醍醐さん 部活には入らなかったので、部活に熱中するのも楽しそうかなと。あと、ほかのことは何も考えずに、映画のような恋愛とかもしてみたいです(笑)。

―まさに青春ですね。では、いま一番夢中になっているものがあれば、教えてください。

醍醐さん それは、『バチェロレッテ・ジャパン』です。シーズン2が始まったこともあって、僕の周りもみんな見ています。参加者の気分も楽しみつつ、バチェロレッテの尾崎美紀さんのファンとしても応援しているところです。

―ちなみに、醍醐さんが女性に魅力を感じる瞬間といえば?

醍醐さん たとえば、人の家に行って、みんながワーッと脱いだ靴を自分のと一緒に何気なく揃えてくれる姿とかはいいですね。あとは、よく笑う人です。

求められたことにひとつずつ全力で取り組んでいる

―お休みの日は、どのように過ごすことが多いですか?

醍醐さん 夕方くらいから友達とお酒を飲むか、サウナに行くか、そのどちらかですね。家で飲むときは、つまみとして角煮を作るのが好きなので、長い時間をかけてホロホロの肉を育てています。

ただ、飲みながら料理しているので、角煮が出来上がるころにはベロベロになってしまうんですけどね。ポイントとしては、あえて少ししか作らないこと。量が少ないぶん、すぐに食べ終わってしまうのですが、そこで「お肉がもうなーい!」となるのが楽しいです(笑)。

―なかなか独特な楽しみ方ですね。まもなく22歳となりますが、お仕事に関しては20代に入ったことで変化を感じることもあるのでしょうか。

醍醐さん もっと若いときは遊びの延長みたいなところも少しあったかもしれませんが、最近は僕の周りもちょうど就職活動をしている人が多いので、より仕事としての意識が芽生えたところはあると思います。

―現在は、映像作品から舞台、声優と幅広く活躍されていますが、今後やってみたいことは?

醍醐さん いまはまだ僕が選ぶ立場にはいないと思っているので、まずはいただいたお仕事をひとつひとつ全力でやっていきたいです。そのなかで、いつか第一線で活躍されている方々と肩を並べられたかなと思えるところまで来たら、そのとき初めて自分がしたいことを考えたいなと。それまでは、求められたものを一生懸命する時期だと思っています。

周りを鼓舞できるスーパーポジティブな人になりたい

―それでは、男性として目指している理想像などがあれば、お聞かせください。

醍醐さん 僕は、スーパーポジティブで太陽みたいな人間になりたいです! その場にいるだけで周りを鼓舞できるような存在になりたいので、普段からネガティブな発言はしないように気をつけています。

―最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。

醍醐さん 女性にとっては、「男のノリってこんな感じなのかな?」という教科書みたいなところも楽しんでいただけると思っています。いまはこういうご時世であまりハッピーな雰囲気ではないかもしれないですが、この作品のように「ただおもしろいだけ」という映画はあまりないと思うので、ぜひ笑いに来て明るい気持ちになっていただけたらうれしいです。

インタビューを終えてみて……。

とにかく明るくて、太陽のような笑顔が似合う醍醐さん。そのいっぽうで、女性読者へのメッセージをお願いした際には、「女性に向けて言うのはちょっと恥ずかしい」とシャイな一面も覗かせていました。さまざまな顔を持つ醍醐さんだけに、幅広い役どころでこれからも楽しませてくれそうです。

思春期あるあるに共感必至!

あり得ないほど理不尽な世の中も、メジャーリーグ級の“笑いのホームラン”ですべて吹き飛ばしてくれる青春コメディ。泥まみれになっても何度でも立ち上がる部員たちの姿に愛おしさを覚え、いつの間にか胸が熱くなってしまうはず。汗と涙を流しながら全力で生きる人たちに届けたい最高のエールを受け取ってみては?


写真・北尾渉(醍醐虎汰朗) 取材、文・志村昌美 

ストーリー

中学時代の野球部生活に別れを告げ、坊主頭から茶髪にイメチェンして高校デビューを目指していた黒田鉄平。夢見たバラ色の高校生活は、同級生と一緒にうっかり野球部の見学に行ったことによって、あっけなくゲームセットとなる。しかも、新入生歓迎の儀式で早々に坊主に逆戻りしてしまうのだった。

鬼のように豹変した二年生と三年生、そして昭和スパルタ丸出しの最恐監督のもと、 黒田ら一年生は“ザ・ハラスメント”な世界に翻弄され、憔悴していくことに。しかし、恐れていたはずの“伝統”に、気がつけば自分たちも染まっていくのだった……。

衝撃の予告編はこちら!

作品情報

『野球部に花束を』 
8月11日(木・祝)全国ロードショー
配給:日活
https://entm.auone.jp/camp/yakyubu/
️©2022「野球部に花束を」製作委員会