田中さんが四十肩でダンサー生命の危機に 『セクシー田中さん』に新展開!

2020.12.23
2018年に第9回ananマンガ大賞を受賞した『セクシー田中さん』の最新刊が、ますます盛り上がっている。会社では超地味だけど、実は超セクシーなベリーダンサーの顔を持つ田中さんと、そんな生き方に憧れてファンと化す、朱里(あかり)。それぞれのキャラクターについて作者の芦原妃名子さんはこう語る。

不器用、または器用貧乏なこじらせ男女の恋愛&人生模様。

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「田中さんは想定よりずっと素直でかわいい女性になりました。こじらせているはずなのに素直。偏見を持たない。クリアな目で人を見ようとする。他人を裁かない。それって人としての強さですよね。そんな40歳の田中さんに対して、朱里ちゃんは23歳なのに老成してます。女の子としてのスペックは高いのに、器用貧乏でなかなか生きづらい。鎧を脱いでもっと解放されたら生きやすくなるんじゃないかな。ある種、若さを取り戻してほしいです(笑)」

ふたりに共通するのは、周りから見たら魅力がたくさんあるのに「自分なんか」と思っているところ。

「日本人“あるある”かもしれませんが、自分に厳しすぎる人って多いですよね。誰かと出会って自分の魅力に気づいて、自己肯定力が上がっていく。そんな化学反応が起これば素敵だなと思っています」

田中さんと朱里、異なるタイプや世代のふたりを通して、男性が求めるステレオタイプな女性像と、そこから逃れたくても大なり小なり囚われてしまう女性の姿がシニカルに描かれるのも見どころ。3巻では田中さんに「イタイおばさん」など数々の暴言を吐いてきた、見た目はイケメン、頭は昭和で止まっている偏見まみれの男・笙野に変化が起こる。

「女性より男性のほうが変わるのが難しい気がします。他人に指摘されて内省するのって、なかなかプライドが傷つくと思うし。だから余計、変われる人はタフで魅力的。といっても笙野の今までの行動がチャラになるわけではないけれど(笑)」

田中さんと朱里の一見不毛な恋の行方や新たな恋の予感、田中さんの敵と見なしている笙野に対する朱里の復讐、そして彼女たちは自分を好きになれるのかなど、絡みまくるさまざまな展開が気になるところ。

「人と出会っていろんな価値観に遭遇して、相手を知ると同時に自分自身を知る。ひとりでは知り得ない、白黒グレー、いろんな自分が溢れ出てくるのが人間関係の醍醐味だと思っています。もつれて混乱して、影響されて変わっていく彼女たちを楽しんで観察していただけたら一番嬉しいです! それと恋愛部分も、もう一歩踏み込んでいきたいですね」

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『セクシー田中さん』3 四十肩でダンサー生命の危機に陥る田中さん、朱里の思いに気づかぬふりをする進吾との過去、田中さんは自分を好きだと思い込む笙野の暴走…絶好調の第3巻。小学館 454円 ©芦原妃名子/小学館 姉系プチコミック

あしはら・ひなこ マンガ家。1994年『別冊少女コミック』に掲載された「その話おことわりします」でデビュー。『砂時計』と『Piece』で小学館漫画賞少女向け部門を受賞。

※『anan』2020年12月23日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)