結婚=幸せではない? 独身女性400人に聞いた、今の日本のリアルな結婚観

2021.8.22
恋愛をし、適齢期になったら結婚。それが一般的な生き方といわれていたのは過去の話。生き方にもバリエーションが増えてきた今の日本人にとって、結婚とはどんなものなのか。

今20~30代の独身女性にとって、“結婚”とはどんなものなのか。400名にアンケートを実施し、みんなの結婚に対する意識や思いを徹底調査。

Q. この先結婚したいと思いますか?

YES…75%、NO…25%

結婚したい理由は?
好きな人と一緒にいたいから、というピュアな意見が多数。「好きな人と一生一緒にいられるなんて最高」(28歳・メーカー)。子供が欲しい、という意見もかなり聞かれた。さらに「老後のために結婚したい」(30歳・IT)などの声も。

結婚したくない理由は?
独りが心地よい、自由な時間が減るのが嫌、といった意見が圧倒的多数。「独りのほうが楽だし、人に合わせるのは面倒くさそう」(30歳・アパレル)。また「結婚した友達からいい話をまったく聞かないので」(26歳・PR)という声も。

4分の3が“したい”と回答。実際の婚姻数との違いは?
回答者のうち、75%が結婚に対して前向きであることが判明。しかし実際の婚姻件数は、’72年を頂点に微増はありつつも、基本は下降を辿っている。結婚したいけど、現実にはできない、ということの表れか…?

◎日本の婚姻数の変化

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約50年、婚姻数は減り続けています。
日本の最高婚姻件数は’72年の約109万組。最低の婚姻件数は’18年の約58万組。ピークの半数近くに減っていることがわかります。
資料:厚生労働省「人口動態統計」を基に作成。

Q. 何歳ぐらいで結婚したいですか?

22~25歳…9%、26~30歳…38%、31~35歳…33%、36~40歳…14%、41歳~…6%

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30歳を真ん中に、前後5年が希望。
26歳から35歳の10年の間にと望む人がとても多く、どちらかというと30歳までに、という人が多い印象。昭和の時代には「25歳までに結婚しないと行き遅れ」なんて言葉があったそうで、令和の今からすると信じられない…。

Q. 結婚したほうが、幸せになれると思いますか?

絶対そうだと思う…7%、ある程度はそう思う…32%、全くそうは思わない…11%、あまりそう思わない…10%、どちらともいえない…40%

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“思う”派が39%。結婚=幸せではない?
結婚は、恋愛以上の幸せな世界、と思っている人が多いのかと思いきや、令和の独身女性たちの心の中はかなりクール。結婚はふわふわしたものではなく、日々の生活やリアルな日常、と思っている層が厚いのか…。

Q. 結婚のメリットとは?(複数回答)

1位…孤独、寂しさの解消、2位…愛し合った相手と生涯を共にできること、3位…子供を産み、育てること、4位…老後の不安の解消、5位…経済的な余裕を手に入れられる、6位…温かい家庭を築ける、7位…世間体が手に入る、8位…メリットは感じない

経済的なことより、心の充実を重視、かも。
メリットを聞いてみたところ、「孤独や寂しさが解消できる」が最も票数を集めた。「子供が持てる」という3位の意見は、結婚せずに子供を持つことが厳しい国だからこその声。また「メリットはない」と言い切る意見にも票が。

識者に聞く、今の“結婚”

社会学者、立命館大学産業社会学部教授・筒井淳也さんに、今の“結婚”について伺いました。

雇用の不安定化と、婚姻率低下の深い関係。

我々研究者の間では、1990年代後半から若い世代の生活環境が大きく変わってきたとされており、なかでも若い男性の雇用の不安定化はかなり大きな変化です。就職難、そして非正規職の増加。日本の男性にとっての結婚は、“安定した職を持つこと”が前提なので、「あれ、これは結婚できないのでは?」というムードがここ20年でかなり漂ってきた。一方女性側も理想はいろいろありますが、一番に求めるのはやはり経済力。どんなに話が合っても年収300万円の人との結婚には踏み切れないというのが本音でしょう。要するに、婚活市場に経済要件を満たしている男性がいないことが問題なんです。そういった状況から男女ともに、卒業して就職して、結婚して子供を作って…という、いわゆる標準の人生がリアルには描けなくなってきた。今は結婚は、頑張るか、逆に妥協しないとできないものになってしまったんだと思います。ただそれはもしかしたら都会の話であって、地方のマスにはまた別の形があります。生まれてからずっと地元に住み、親が健在で友達のコミュニティもしっかりある若者たちの中には、地元の繋がりで仕事を得て、幼馴染みなどと結婚し、子供を何人か産み育てているというパターンも多い。それもそれで、今の日本のリアルです。

学生に話を聞くと結婚は“ライフステージに必要な要素”と思っており、したい気持ちはみんな持っています。でも同時に、するには妥協が必要ということも薄々気が付き始めている。今後は、結婚以外の道を選ぶ人たちが安心して生活できる基盤を、国が準備する必要性が出てくると思いますし、そこが整うことで安心し、逆に結婚できると思う人が増える気もします。

つつい・じゅんや 社会学者、立命館大学産業社会学部教授。著書に『仕事と家族』(中公新書)、『結婚と家族のこれから共働き社会の限界』(光文社新書)など。

※『anan』2021年8月25日号より。イラスト・micca

(by anan編集部)