志村 昌美

『科捜研の女』の渡部秀が見た「沢口靖子さんのプロ意識がとにかくすごい」

2021.9.2
最先端技術を取り入れた斬新なストーリー展開と個性豊かな登場人物で、20年以上にわたって愛され続けている『科捜研の女』シリーズ。つねに新しい挑戦を続ける作品として、幅広い層から絶大な人気を誇っています。そんななか、ファンからの期待に応える形で映画化がついに実現。今回は、その舞台裏についてこちらの方にお話をうかがってきました。

渡部秀さん

【映画、ときどき私】 vol. 410

2017年から本シリーズに参加し、京都府警科学捜査研究所に所属する物理研究員・橋口呂太を演じている渡部さん。誰にでもタメ口で天真爛漫な性格ながら、鑑定では天才肌なところを発揮する甘いもの好きの呂太は、シリーズでも人気キャラクターのひとりです。そこで、科捜研チームの一員である渡部さんの役へのこだわりや意外な一面について教えていただきました。

―本作は、シリーズ初の劇場版となりましたが、テレビ版との違いを感じましたか?

渡部さん まずは、撮り方も含めてスケール感が圧倒的に違いましたね。あとは、キャストもこれまでのオールスターが勢揃いしているので、僕自身も撮影前からすごくワクワクしていました。とにかく、見ごたえのある作品になっていると思います。

―本当に、ファンにはたまらない豪華メンバーが一挙に集結していますよね。現場の雰囲気はいかがでしたか?

渡部さん 歴代のメンバーの方がいらっしゃるたびに、現場の空気感がどんどん変わっていったので、僕からするとすごく不思議な感覚でしたね。でも、こうやって歴史を積み重ねてきた作品なんだなと改めて感じることができました。

そのなかでも印象的だったのは、科捜研の元所長を演じていた小野武彦さんが入られたとき。一気にシリーズの最初のころの雰囲気になり、僕は内心「あのときのメンバーが揃ってる!」と、完全にいちファンになってしまいました(笑)。

役者人生においていい分岐点となった

―お気持ちよくわかります。これだけ長年愛されているシリーズに参加するうえで、意識していることはありますか?

渡部さん レギュラーメンバーとして、新しい歴史を作っていく責任や次の世代に繋いでいく使命みたいなものは感じています。あとは、同じ役をここまで長く演じることは初めての経験だったので、本当にいろいろな勉強をさせていただいているなと。僕の役者人生においても、いい分岐点になりました。

―私は『科捜研の女』シリーズのファンであるがゆえに、ほかの刑事ドラマを観ているときでも、「マリコだったら…」とつい考えてしまうことがあります。渡部さんも科捜研メンバーになってから、実生活に影響を及ぼしていることもあるのではないでしょうか。

渡部さん それは僕もありますね。このシリーズに参加してから、物理や科学だけでなく、事件に関するいろいろな単語を聞いてきたので、さまざまなニュースを見ながら自分で勝手に推測してしまうことがあるんです。たとえば、死因がこれなら、この線の事件性はなさそうだなとか。それは、科捜研で得た探求癖がプライベートにまで入り込んでしまった結果だと思います(笑)。

―(笑)。では、呂太を演じるうえで大切にしていることがあれば、教えてください。

渡部さん 呂太は天才肌というか、いい意味でぶっ飛んだキャラクターなので、演じるのはすごく新鮮なんです。そのなかで意識していることといえば、マリコたちからも視聴者のみなさんからも愛される人物であること。誰にでもタメ口で話していますが、それがただの生意気で失礼なヤツで終わってしまうのではなく、どこか可愛げがあって憎めないキャラクターでいたいので、みなさんに認めてもらえるように努力しています。

素の自分は、呂太とは真逆のタイプ

―実際、視聴者の方からはどのような反響がありましたか?

渡部さん このシリーズを見て僕のファンになってくださる方も多いので、すごくありがたいですね。ただ、そのあとにショックを受ける方もけっこういらっしゃるんですよ……。

―というと?

渡部さん どうしても呂太のイメージが強いので、「普段はそんなに大人しいの?」と、役との差に驚く方がいるんです。もちろん、素の僕が呂太と同じしゃべり方なわけがないとわかってはくださっていますが、僕としてはちょっと申し訳ない気もしてしまって(笑)。

でも、それくらいインパクトのあるキャラクターなんだなと実感しました。あとは、そう感じてくださる方がいるということは、自分がしっかりと役になり切れている証拠でもあるのかなと思うので、ある意味うれしさはありますね。

―つまり、ご自身とは真逆のタイプということですか?

渡部さん そうですね、真逆だと思います。たとえば、呂太は甘いものが大好物ですが、実は僕は甘いものが苦手なんです……。普段まったくお菓子を食べないので、科捜研の現場で1年分の糖分を摂取しています(笑)。

でも、呂太はそういう部分も含めて、自分にはないものを表現できたり、新しいことを発見できたりするので、演じていて楽しいキャラクター。あとは、あの人懐っこさや何も恐れずに進んでいくアグレッシブさは、尊敬しますね。石橋を叩かないでも行けてしまう強さがあって、うらやましいです。

毎日、自分の時間は大切にしている

―甘いものが苦手だったとは意外でしたが、それを感じさせないのはさすがです。ちなみに、呂太にとってのお菓子のように、渡部さんの生活に欠かせないものといえば?

渡部さん まず食べ物なら、とにかく好きなのはお肉。僕は生肉があれば、生きていけます(笑)。そのほかに日常生活で欠かせないものといえば、寝る前の1~2時間で自分の好きなことをとことんする時間。余計なことを考えずに、本を読んだり、テレビや映画を観たりして、一旦仕事のことを忘れるようにしています。そうやってひとりで過ごしているときが、僕にとって大切な時間です。

―ご自身をリセットする時間も必要ですよね。では、主演の沢口靖子さんについておうかがいしますが、俳優として影響を受けていることはありますか?

渡部さん 沢口さんは、本当にプロフェッショナルな方なので、いろいろなことを学ばせていただいています。主役を演じるプレッシャーもあると思いますが、責任感と集中力がすごいですし、沢口さんが現場でミスしている姿を僕はほとんど見たことがありません。

以前、「休みの日は何しているんですか?」と聞いたことがあるんですが、そのときに「休みがあれば、次の台本の勉強をしている」とおっしゃっていたほど。やっぱり20年以上トップを務めていらっしゃる方は違うなと思いましたし、僕も沢口さんのプロ意識は見習いたいです。しかも、お忙しいのにキャストやスタッフにもつねに気を遣ってくださるところも、素晴らしいと思います。

うれしいのは、沢口さんの笑顔を引き出せたとき

―さすがですね。そんな仕事一直線の沢口さんですが、現場で渡部さんだけが知っている素顔があれば、教えてください。

渡部さん 撮影の合間はけっこうお茶目な方で、プライベートなお話をすることもありますね。時々、ニコッと笑ってくださったりすると、「この笑顔は、僕にしか見せないでほしい」と思ったりすることも(笑)。沢口さんの笑顔を引き出せたときは、うれしいです。

―ちなみに、どんなお話で沢口さんの笑顔を引き出したのですか?

渡部さん 僕は趣味でアクアリウムを作っていて、家にペットカメラを置いているんですが、お魚の映像を「みんなには秘密ですよ」と言って見せたりすると喜んでくださいます。これからも、沢口さんのいい笑顔を引き出せるようにがんばりたいです!

―では、渡部さんから見て、マリコの魅力はどんなところだとお考えでしょうか。

渡部さん 「事件を解明する」という確固たる意志や信念は、すごいところだなとは思います。とはいえ、マリコが“暴走”しているときは、一般社会では受け入れてもらえないかもしれませんが……(笑)。ただ、めちゃくちゃなお願いをされても、ついていきたくなるようなところがマリコの魅力なんですよね。
 
―マリコのように好きなことに夢中な女性はどう思いますか?

渡部さん すごく素敵だと思います。自分のルールをしっかり持っている女性には興味が湧きますし、「普段は一体どんな人なんだろう?」と知りたくなりますから。

周りに気配りができる女性には見とれてしまう

―ちなみに、渡部さんが女性を見るときに注目しているポイントといえば、どんなことですか?

渡部さん 周りに気配りができて、マナーがきちんとしている方には、見とれてしまいますね。あとは細部にまで気を遣って、時間をかけて努力をされている姿も素敵だなと。と言いながら、ふとした瞬間に見せる気の抜けた感じもいいですよね。

―わかる気がします。また、マリコといえば“科学オタク”ですが、いま渡部さんがハマっているものがあれば、教えてください。

渡部さん 趣味はわりと多いほうかなと思いますが、いまは先ほどお話したアクアリウム、爬虫類、苔、植物など。一度ハマるとがっつりハマってしまうほうなんですよね。最近は家が水族館のような、動物園のような、植物園のような状態になっています(笑)。

―楽しそうなお家ですね。それでは最後に、ananweb読者へのメッセージをお願いします!

渡部さん 僕はもうすぐ30代に入りますが、人としても男性としてもまだまだ未熟な部分が多いなと感じています。若い頃に思い描いていた30代にするために、仕事で成長していくのはもちろんですが、もっと女性のことも理解できるようになれたらいいなと。自分だけだと凝り固まった考えになってしまうので、女性の方々の目線でいろんなことを教えていただきたいですね。おこがましいですが、みなさんの力で僕を素敵な男性に育てていただけたらうれしいです(笑)。

インタビューを終えてみて……。

ご本人がおっしゃっていたように、どうしてもタメ口で話す呂太のイメージが強いため、丁寧で穏やかな口調の渡部さんに最初は驚きましたが、そのギャップもまたとても魅力的だと感じました。俳優として、男性としてどんな30代を迎えられるのか、ますます楽しみです。

スケールもトリックもさらにパワーアップ!

豪華キャストが一挙に集結し、シリーズ史上最難関の事件に挑んでいる本作。最新科学を駆使したトリックと立ちはだかる最強の敵によって、まさかの結末へと追い込まれていくことに。困難な状況にこそ力を発揮する科捜研メンバーによる“衝撃の最終実験”をぜひお見逃しなく!


写真・山本嵩(渡部秀) 取材、文・志村昌美 

ストーリー

ある日、京都の洛北医科大学でウイルスを研究する女性科学者が転落死する。榊マリコをはじめとする“科捜研”のメンバーや捜査一課の土門刑事、解剖医の風丘教授は、事件性を疑うも、それを裏付ける証拠を発見できずにいた。

ところが、京都だけでなく、ロンドンやトロントでも連続科学者転落死事件が同時に発生。捜査を進めていくなかで、ある細菌の存在を突き止めるのだが、そこに立ちはだかるのは“史上最強の敵”だった。果たして、マリコたちは世界中に広がる死の連鎖を止められるのか……。
※榊の字は木へんに神が正式表記

謎が深まる予告編はこちら!

作品情報

『科捜研の女 -劇場版-』
9月3日(金)全国ロードショー
配給:東映
https://kasouken-movie.com 
©2021「科捜研の女 -劇場版-」製作委員会