辺境を旅する写真家・石川直樹 20年の旅の写真展がフィナーレ

2019.1.15
実は展覧会『この星の地図を写す』が始まったのは2年前。2016年末、水戸を皮切りに千葉、高知、北九州を巡回し、フィナーレの東京展が間もなく始まる。

手探りで地球を旅してきた、石川直樹の20年を振り返る展覧会。

石川直樹

「僕は東京・初台生まれ。だから出生の地で終わるのが一番きれいだなと思って。最後にして、やっと図録が完成したんです(笑)」

と写真家・石川直樹さん。本展は彼が20年以上続けてきた旅の写真を集約した過去最大規模の展覧会だ。

「展覧会を企画した時がちょうど40歳になる頃で。高校の時からずっと旅をしてきたけれど、今まで過去を振り返ってこなかった。だからこそ今、人生の折り返し地点で一区切りつけて、過去20年間の旅を振り返るいい機会かもしれないと」

改めて写真を整理して驚いたそう。

「一人の人間がこれだけ地球を縦横に歩いた記録は珍しいんじゃないかな。僕の場合、東西南北の移動だけじゃなく、ヒマラヤ山脈からポリネシアの島々まで、山から海への垂直方向への移動も多かったから」

北極や南極、K2や世界各地の洞窟、日本列島の南北の島々など世界中の辺境を旅してきた石川さん。けれど自分が体験した旅は、どんなに写真や言葉を尽くしても、すべてを伝え切ることはできないと語る。

「特に標高8000m以上の場所では、一挙一動が生死に直結します。だから、自分のすべてを使い果たしてしまうんですよね。この感覚は、説明できるものじゃない。それでも、自分の写真や言葉で、誰かが少しでも追体験してくれたらと思います」

それにしても、なぜ彼はこれほどまでに過酷な経験をしながらも心折れず新たな旅へと進めたのだろうか。

「新しいものを見てみたい、知らないものを知りたい。そんな純粋な好奇心だけです。今はネットでどんな情報も入手できる時代だけれど、実際に体験しなければ旅の深さは測れない。好奇心を持ち続けるには、知っているつもりにならないこと。例えるなら赤ちゃんみたいな感覚で、手探りで地球を探検するのがいい」

石川さんが現地での撮影に使う機材は今もフィルムカメラ。ズームレンズを使用しないので、被写体に寄るには、自ら近づくしかない。

「いいと思うものに体が反応する。気持ちが揺り動かされたものの前で、見たままを撮る。そうして生まれた作品は、自分にしか撮れないから」

石川直樹

「K2」(2015)
本展ではテントを利用した映像作品の展示もある。

いしかわ・なおき 1977年生まれ、東京都出身。写真家。人類学、民俗学などに関心を持ち、あらゆる場所を旅し作品を発表。土門拳賞はじめ受賞歴多数。近著に『極北へ』(毎日新聞出版)がある。

『この星の地図を写す』 東京オペラシティ アートギャラリー 東京都新宿区西新宿3-20-2 1月12日(土)~3月24日(日) 11時~19時(金・土曜~20時、最終入場は閉館の30分前まで) 月曜(祝日の場合は開館、翌日休み)、2/10休 一般1200円ほか TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)

※『anan』2019年1月16日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・山田貴美子

(by anan編集部)

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