志村 昌美

“大人のための人生の愛し方” を話題作『海よりもまだ深く』で学ぶ!

2016.5.13
世界三大映画祭のひとつである、カンヌ国際映画祭が5月11日よりついに開幕! 現在、世界中のメディアから注目を集めているところですが、そんななかで日本の映画も話題となっているようです。いまや、“カンヌの常連” でもある是枝裕和監督の最新作で、今回「ある視点」部門へ出品されている作品といえば……。

なりたかった大人になれなかった大人に贈る感動作『海よりもまだ深く』!

【映画、ときどき私】 vol. 35

いい年して、いつまでも “ダメ男街道” まっしぐらの良多。過去に一度だけ文学賞を獲ったことはあるものの、現在では “自称作家状態” が続き、「小説のための取材」という言い訳をしながら、探偵事務所に勤めている。そんな良多に、妻の響子も愛想を尽かして離婚。そのため、一人息子とも離れて暮らしていたが、ギャンブルがやめられない良多は、養育費もまともに払えずにいた。

しかし、未練を断ち切れない良多は、元妻の新恋人登場にショックを受ける!

何をやってもダメな良多にとって、最後の頼みは母の淑子だけだった。ある日、唯一の楽しみである息子との月一回の面会日に、団地で気楽なひとり暮らしをしている淑子のもとを2人で訪ねることする。しかし、台風のために帰れなくなり、響子もそろった “元家族” が一夜限りを一緒に過ごすことに……。

“大人あるある” に共感の嵐!

それぞれの登場人物たちが発する “決め台詞” が随所に散りばめられているのですが、とにかくどの言葉もグサッと突き刺さること間違いなし! 特に、ある程度色々な経験をしてきている大人なら終始うなずきっぱなしになってしまうはず。一番を選ぶのが難しいほど好きなセリフがたくさんあったのですが…….。

なかでも心に響いたセリフを一部ご紹介します!

「なんで男は○を愛せないのか」
「女の恋愛は上書き保存ではなく、○○みたいなもの」
「幸せというのは、何かを〇〇〇〇と手にできない」

思わず「深いなぁ」とつぶやきながら染み渡る感動は、作品を観ながら感じて欲しいので、あえて核心には触れないでおこうと思います。胸の奥底まで届く名言の数々は、ぜひ “心のメモ” に書き留めておいてください。

そこで、本作のテーマ「みんながなりたかった大人になれるわけじゃない」を考える!

今回、是枝監督が脚本に一番初めに書いた言葉がこのフレーズだったそう。実際、誰もが子どもの頃に “なりたい大人像” を持っていたとしても、その通りになれる人の方がきっと少ないんじゃないかと思ってしまうほど。ただ、完璧に思い通りに行く人生もいいかもしれないけれど、私は「寄り道しながら自分なりのゴールを目指していく人生も悪くないはず」と感じている今日この頃。

人生においては、転んで怪我をするからこそ、「次はどうやって転ばないようにするのか」とか「どうすれば怪我をしないで済むのか」ということを学ぶもの。そして、怪我をするからこそ怪我をしている人の気持ちがわかるようにもなるのです。そうやって色んな想いを抱えながら人生を積み上げていけば、きっと自分の人生を愛おしいと感じられるようになるはず。

理想の大人になることがすべてではない!

人はたとえ大人になったとしても、いまより先の “理想の大人” を常に目指してしまう生き物。それでも、瞬間瞬間を一生懸命に生きていけば、たとえ “思い描いた未来と違う今” にいたとしても、それを受け入れられると思うのです。他の誰でもなく、自分自身が自分の人生を “海よりもまだ深く” 愛し、信じることの方が大切なのかもしれません。

あなたが “むかし夢見た未来” と “これから夢見る未来” はどんなものですか?

作品情報

『海よりもまだ深く』
5月21日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー
配給:ギャガ
©2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

http://gaga.ne.jp/umiyorimo/