“濡れ場専門”の仲介役? 知られざる“インティマシー・コーディネーター”とは

2021.7.12
濡れ場を専門に制作スタッフと俳優を仲介する、インティマシー・コーディネーター。この仕事を日本で初めて手掛けた浅田智穂さんに話を聞きました。

官能的なシーンをより安心・安全な環境に導く専門家。

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ヌードやキス、セックスといったセンシティブな場面で、俳優と制作スタッフをサポートするインティマシー・コーディネーター。

「エンターテインメント業界では度々、性的なシーンにおいて俳優の事前同意が得られていなかったり、強要があったりと、疑問視されることがありました。たとえば、アクションシーンは怪我や死に繋がる危険性があるので、必ず専門家が立ち会いますよね。セクシュアルなシーンも同じ。安心・安全で気持ちのいい撮影現場にするために必要な職業なんです」

仕事内容としては、ヌードや身体的接触がある場面を台本から抜き出して、撮り方を監督に確認。

「『激しく求め合う』と書いてあれば、どれぐらい激しいのか、肌の露出はどれくらいか、体のどの部分まで触るのか。それをキャストと共有し、“ここまではOKで、ここからはNG”と線引きをクリアにする。そこから、こういう動きでこの画角で撮影しよう、と場面作りの手伝いをします。事前にビジョンを明確にすることで、お芝居にも撮影にも集中できます」

そして、大事なのは些細な心配事も話せる環境を作ること。

「映像作品は残るものだから、勢いや責任感から“YES”と言ってしまい、後悔することがあってはならない。撮影前に“本当に嫌ではないか”と俳優自身がしっかり考える時間を作る。インティマシー・コーディネーターの認知度はまだ低く、これから多くの作品で起用してもらえるよう努力している段階。それでも、過去の現場では必ず『いてくれてよかった』と言ってくれた人がいる。やりがいを感じるし、人間の尊厳を守る大事な仕事だと思います」

Netflix映画『彼女』

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浅田さんが日本で初めてインティマシー・コーディネーターとして撮影に参加したことでも注目を集めた。高校時代から思いを寄せていた七恵のために彼女の夫を殺害したレイと七恵の逃避行を描く。レイを水原希子、七恵をさとうほなみが演じる。「水原さんの提案でこの作品に参加しました。主演の二人に事前にカウンセリングをした時に、自分の意見をはっきり言ってくださったので非常にクリアな撮影でしたね」
Netflixにて全世界独占配信中

インティマシー・コーディネーターが参加した作品から3つをピックアップ! セーフティな現場で作られた注目作品を浅田さんに教えてもらいました。

『ブリジャートン家』

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19世紀、ロンドンの名門貴族たちの複雑な人間関係の中で、偽りの交際や予期せぬ妊娠、不倫騒動などドラマティックな恋愛模様を展開。「相手のステイタスにこだわるあまり恋愛を純粋に楽しめないダフネ、一生結婚しないと心に決めているのにダフネに惹かれてしまうサイモンなど、登場人物がユニーク。情熱的なセックスシーンが話題ですが、女性の性の目覚め、感情の動きがうまく映し出されていると思います」 Netflixオリジナルシリーズ『ブリジャートン家』独占配信中

『リトル・ファイアー~彼女たちの秘密』

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幸せを絵に描いたような裕福なリチャードソン一家。母エレナは4人の子を育てながら暮らしていた。だが、謎めいたシングルマザーとその娘に出会ったことで、彼女の幸せが崩れていく──。出生の秘密、妻の不貞など、ハラハラするような要素が満載のサスペンスドラマ。「恋愛というよりも母と娘、家族の話ですが、妊娠や性の話も盛り込まれていて、センシティブな内容だからこそ仲介役が必要だと思います」 ©Best Day Ever, Inc. Amazon Prime Videoにて独占配信中

『ユーフォリア/EUPHORIA』

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シンガーソングライターとしても活動するゼンデイヤ、トランスジェンダーモデルのハンター・シェイファーなど注目の若手キャストが多数出演。ソーシャルメディア時代の生きづらさ、ドラッグやセックス、暴力などセンセーショナルな問題に向き合いながら、必死に生きるティーンエイジャーのリアルを映し出す。「さまざまなセクシュアリティのセックスシーンがありますが、役者がのびのびと演技していますよね」 写真:ALBUM/アフロ Amazon Prime Videoにて独占配信中

あさだ・ちほ 昨年、インティマシー・コーディネーターの資格を取得し、国内の作品に参加している。また、語学力を生かし、舞台や映画、ドラマなどで通訳としても活躍。

※『anan』2021年7月14日号より。写真・安田光優 取材、文・浦本真梨子

(by anan編集部)