学園恋愛ものとはひと味違う! 監督が語る、アニメ『スキップとローファー』のこだわり

2023.4.14
原作は『月刊アフタヌーン』で連載中の人気マンガ。岩倉美津未と志摩聡介との出会いからして、少女マンガによくある学園恋愛もの? と思わせるが、実はそうではない。美津未の素朴で真っすぐすぎる性格は、東京ではちょっと浮き気味。はじめは戸惑うクラスメイトも、少しずつ美津未に感化され、距離が近づいていく。心の機微を丁寧に描いた原作をどうアニメで表現するのか? 『スキップとローファー』の監督を務める出合小都美さんに話を聞いた。

ヒーロー的な女の子を少女マンガの様式で描く。
『スキップとローファー』

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「高松美咲先生のマンガは前作も読んでいて、ぱっと表現できない人の感情や感覚を描くのがうまいという印象がありました。この作品も、『普通の少女マンガとはちょっと違うぞ』と感じましたね」

マンガ原作のアニメ化では、原作の大事なところは絶対にずらさないことを意識している出合さん。

「今作では、登場人物の心の微妙な揺らぎを丁寧に拾っていくようにしています。でも、高松先生が『ベースはコメディ』とおっしゃっていたので、その要素も大切に」

志摩は、過去のある出来事によって無意識のうちに自分の気持ちを押さえ気味なところがあった。しかし、不安があっても一歩踏み出し、自分の道を切り開いていく美津未に影響されていく。

「志摩にとって美津未はヒロインじゃなくて、ヒーローみたいな存在なんです。志摩から美津未への、キラキラした視線が伝わると嬉しいです。私は、『スキップとローファー』という作品はある種のヒーローものだと思っていて。キャラクターたちの抱えている色々な負の感情を、美津未が、本人も悩みながらも持ち前の明るさと純粋さで次々と殴り飛ばし、ハッピーにしていくイメージです」

他にも、オシャレで気遣い屋だが少し計算高いミカ、抜群の容姿を持つ結月、人見知りの誠などのクラスメイトが登場。友達同士の楽しいやりとりが描かれる一方、コンプレックスの裏返しで相手を軽く見てしまったり、恵まれた容姿が理由で嫌な思いをしたせいで人と距離を作りがちだったりと、それぞれがちょっと嫌な自分を抱えつつ、学校生活を送っている。視聴者も、心の柔らかいところを触られたような気持ちになり、美津未の明るさに背中を押される。

また、自然あふれる美津未の故郷と、きらきらした都会の対比も、作品の魅力のひとつだ。

「美津未が生まれ育った田舎は高松先生のお母様のご実家がある地域がモデル。ロケハンに行き、写真をたくさん撮ってきました。リアリティの中にも、アニメならではの柔らかい雰囲気が表現できているはずです」

柔らかい雰囲気は、キャラクター描写にも反映されている。

「原作では志摩のふわふわした髪が特徴ですが、いかにもアニメっぽい造形で描くと硬そうに見えてしまいます。キャラクターデザインの梅下麻奈未さんがかなり試行錯誤していたので、注目してみてください」

こうして描かれた映像に音楽や声優の生きた声を重ね、原作の世界観により深みを出していく。

「仕事や人間関係に疲れている人は多いはず。夜にテレビをつけたらこのアニメが流れていて、『なんかいい感じだな』くらいで気軽に観てもらえればと。登場人物は高校生ですが、人間関係の悩みやコンプレックスは大人も同じようなもの。美津未たちが変わっていく姿を見て『そういう考え方もあるな』と気づいたり、ホッとしたりできる作品です」

『スキップとローファー』

STORY
石川県の過疎の町で生まれ育った15歳の岩倉美津未は、東京の高偏差値高校に首席入学し、完璧な人生設計まで持っていた。入学式当日、慣れない都会の電車で迷い途方に暮れている時に、同じく新入生の訳ありイケメン志摩聡介に声をかけられる。美津未の、そして彼女と出会って変わっていく登場人物たちの高校生活が幕を開ける!

Check it!
高松美咲の原作マンガは『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中。単行本は既刊8巻。TOKYO MXにて毎週火曜23:00~放送中。ほかAT‐X 、北陸朝日放送、BS 朝日、関西テレビ放送でも放送。DMM TVでは地上波同時配信も。Netflix、Amazon Prime Video、U-NEXT、ABEMAなど、各種配信も。

出合小都美さん 本作では監督・シリーズ構成を担当。アニメ監督、演出家。初監督作は『銀の匙 Silver Spoon』(第2期)で、『ローリング☆ガールズ』『夏目友人帳』ほか多数の監督、演出を務める。

※『anan』2023年4月19日号より。取材、文・𠮷川明子

(by anan編集部)