櫻井 智絵

【映画化決定!】川村元気さんの『世界から猫が消えたなら』を、丸の内OLが読んでみた。

2016.4.28
丸の内に勤務する読書好きのOL・櫻井智絵が、自分が読んで「ああ、面白かった!」と思った本だけを紹介する連載【丸の内OLの給湯読書室】。第15回は、5月に映画公開となるベストセラー小説、川村元気さん著『世界から猫が消えたなら』を読んでみました。

2013年本屋大賞ノミネート、100万部突破のベストセラー小説!

【丸の内OLの給湯読書室】vol.15

先日、『世界から猫が消えたなら』(2016年5月14日(土)公開予定)の映画試写会に行ってきました。実はこの作品、本屋さんに行くたびに目にしていたものの、ずっと読まずにいました。その理由は、自分は猫より犬派だから(笑)。とりあえず試写を観る前に本を読んでみようと手に取ってみると、一気に物語の世界に引き込まれました。忘れかけていた気持ち、普段気づかない心の奥をそっと和らげてくれる物語。

『世界から猫が消えたなら』とは?

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あらすじは…

主人公「僕」は30歳の郵便局員。ごくごく普通に生きてきた僕が、ある日突然、余命わずがと診断される。気持ちの整理がつかないまま、さらに僕を困惑させる出来事が起こる。目の前に自分そっくりな悪魔が現れ、「この世界からひとつだけ何かを消す。その代わりに、あなたは一日の命を得ることができる」と言い、次々に僕の周りからものを消していく。世界から何かひとつ消すたびに、僕の寿命が1日延びる。30個で1か月、365個で1年。次第に僕は自分の命と引き換えに失っていくものが大切な人とつながっていたことを知る。失う前に出来ることは何か。世界から猫が消えたらどうなるのか。余命宣告を受けた最後の一週間、生きる切なさと温かさに気づいていく僕の物語。

読み終えて……

私にとってかけがえのないものは何か考えてみましたが、その明確な答えは出せませんでした。本書のように、失う時にそのものがいかに自分を支えてくれて、自分にとって大切な存在だったかと気づくのかもしれません。主人公が家族への想いを回想する場面で、ふと実家の両親を思い出しました。一人暮らしを始めてから久しぶりに会った時、一緒に住んでいた頃はわからなかった顔のシワや白髪に気づき、後ろ姿が急に小さく見えて、自分が成長するとともに両親も歳を重ねていることを実感しました。私はまだ独身ですが、結婚したいし、子供も産んでみたい。親になった姿を大切な人に見せたい。そう思うと、“今” を生きることを大事にしたい、伝えられる想いは全力で伝えていきたいと思いました。

最後に…

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本が発売されて注目度が上がってくると、映画化されることがよくあります。同じ作品でも文字と映像では感じ方が異なり、違った面白さを味わえます。例えば、今回の作品では主人公と自分を重ねて読む本に対し、映画では、登場人物一人一人の存在感を楽しめます。文章に色や動きが入ることで、世界が広がっていくように感じました。特に私がそう思ったのは、100%映画オタクの親友が「映画は無限にある。だから僕たちの関係も永遠と続く」と言った場面。本ではスラスラッと読み過ごしてしまいましたが、役者さんが演じると記憶に残る感動的なシーンになって驚きました。また、上映後に「あのシーンってどういう展開なんだろう」という感想が聞こえ、私は思わず「ストーリーの全貌は本にあります!」と教えてあげたくなりました。映画では描ききれない世界が本にはあり、逆に本では感じることができない世界が映画にある。本と映画、各々の視点からひとつの作品を堪能できる絶好の機会、公開前にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

Information

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『世界から猫が消えたなら』(小学館文庫)¥620+税


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