ROTH BART BARON、“ひとりバンド”に 「世界の痛みに比べたら…」

2020.11.5
ROTH BART BARON、5枚目のアルバム『極彩色の祝祭』。複数のミュージシャンを招き、トランペット、トロンボーン、フルート、バイオリン、チェロなど、たくさんの楽器が奏でられ、とてもシンフォニックで肉体的な音像に溢れている。

人が感動する根源的なものを見せたい。その情熱を緻密に作り上げた。

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メンバーの三船雅也さんはこう語る。

「自粛期間中に、他のミュージシャンと会って音を出すことができなくて。以前は当たり前だったことに対する喜びが予想外に大きかったんです。人と人が会って音を震わせ合った瞬間は、アルバムのテーマの“祝祭”にも繋がる。人が感動する根源的なものを見せたいなと。その情熱を緻密に作り上げました。人間って単純にいろんな音を聞くと嬉しいんですよね。違う人がいるほうが面白いし。その何層にもレイヤーされた感覚が好きなんです」

アルバム制作中に、メンバーが脱退し、ROTH BART BARONは三船さんひとりのバンドに。

「メンバーが抜けたのはタフな出来事だったんですけど、それ以上に世界がタフだし。熱い温泉に入って、すごく熱いお湯を注がれても熱いと思わない感覚というか。世界の痛みに比べたらっていう気持ちで、目の前のことを一生懸命やるしかなかった。静まり返って活気がなくて、僕たち人類が3000年ぐらいかけて作った都市が全く意味なかったみたいな世界で聴く音楽って何だろうって。無責任に励ましたくないけど、明日が見られる見通しのいいものは作りたかった。それでいて、血が通ったものを作りたかったんです」

厚みのあるインディーフォーク曲「極彩 | I G L(S)」では、“君の物語を絶やすな”“誰かが作った幸せに逃げるな”と、強いメッセージが歌われている。

「コロナ禍でタイムラインを見ると、悲しみが溢れてて。そこで、ひとりで信州の山小屋に歌詞を書きに行ったんです。周りには猪や鹿がいて。そこには完璧に豊かな景色があった。人間のことばかり考えてたなあって思ったんですけど、人間をやめるわけにはいかない。そこでシンプルだけどいろんな人に当てはまるような言葉が出てきた時に、もっと遠くに届けられる音楽が作れるんじゃないかって思えて。その感覚はこのアルバムに強く活きてます」

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5thアルバム『極彩色の祝祭』。MVが公開中の「極彩 | I G L(S)」など、全10曲収録。【CD】¥3,000 【LP】¥3,300(SPACE SHOWER MUSIC)。11月7日、広島クラブクアトロからリリースツアーが開始予定。

ロットバルトバロン 三船雅也(Vo&Gt)を中心としたフォーク・ロックバンド。2014年、フィラデルフィアで制作された1stアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』を発表。

※『anan』2020年11月11日号より。写真・大嶋千尋 取材、文・小松香里

(by anan編集部)