志村 昌美

森七菜「松村北斗さんは威厳のある方だと感じた」現場での様子を語る

2021.2.18
「このマンガがすごい! オンナ編」にランクインし、女性たちから絶大な人気を誇る大ヒットコミック『ライアー×ライアー』がついに映画化。公開を待ちきれないという人も多いと思いますが、今回は本作についてこちらの方にお話をうかがってきました。

女優の森七菜さん

【映画、ときどき私】 vol. 361

“女癖の悪いクール系モテ男・透”を演じたSixTONESの松村北斗さんとともにW主演を務めている森さん。劇中では、“地味系女子大生・湊”とメイクで変身する“ギャルJK・みな”の両方をコミカルに演じ分けています。そこで、現場の様子や嘘にまつわるエピソードなどについて語っていただきました。

―まずは、これだけ人気のある作品からオファーが来たときはどうお感じになりましたか?

森さん 私は中学生のときに読んでいたこともあり、原作を知っていたので、まさか自分が湊を演じることになるとは思いませんでした。でも、その当時から、なぜかこの作品だけはほかにはない運命的なものを感じていたんですよね。なので、今回出演が決まったことで、ずっと抱いていた特別感が証明されたような気がして、うれしかったです。

―そのなかでも湊役を演じるというのは、意外に思いましたか?

森さん 驚いたというか、恐縮だなと思いました。ただ、地味系女子大生というのは、確かに私には合っているのかなと(笑)。今回はギャル系も演じなければいけなかったですが、ギャルになりきる必要はなかったので、メイクさんに頼りつつ、仕草には気をつけました。

―とはいえ、原作ファンであるがゆえに感じるプレッシャーもあったのでは?

森さん 自分が原作を好きだからこそ、原作ファンの方々の目線はすごく意識しましたし、みなさんに納得してもらうにはどうすればいいかを考えました。でも、現場では監督がつねに私の道しるべとなってくださったので、そこに思いっきり向かって行くだけだったと思います。なので、あまりプレッシャーを感じずに演じられました。

1度で2度おいしい作品になっているのがおもしろい

―実際に作品を観て、お気に入りのシーンがあれば教えてください。

森さん この作品がおもしろいのは、前半と後半ではっきりとわかれる瞬間があって、それぞれ全然違う“色”になっているところ。1度で2度おいしい作品になっていると思います。実際、その分岐点となるシーンを撮っているときは、それまでのコミカルなシーンとは違って、現場も緊迫した状態になったので、別の映画を撮っているような気分になったほどでした。

完成した作品を観たときも、そのギャップにドキッとさせられて、完全にやられたなと。それだけ緊張感のあった現場で出たセリフだからこそ、ひと言ひと言に真実味を持たせられたんだと思いました。

―義理の弟であり、恋の相手役でもある透役を松村北斗さんが演じられていますが、ご一緒されてみて、どのような印象を持たれましたか? 

森さん 初めて音楽番組でお会いしたときもそうでしたし、現場でのたたずまいを見ても、すごく威厳のある方だなという印象でした。それでいて、透になったときはツンとデレのデレの部分もアドリブを入れながらさらっとできてしまうので、何を考えているのかわからないような不思議な気持ちになることも(笑)。

でも、だからこそ透は松村さんじゃないとダメなんだなと納得しました。そんなふうにいろんな顔を持たれているところも、すごいなと思っています。

―現場では、すぐに打ち解けられましたか?

森さん シーンを重ねていくにつれて、「松村さんにならこういう切り返しをしても大丈夫なんだ」という安心感が生まれたので、お芝居を中心に打ち解けることができたように感じています。カメラが回っていないところでも、お芝居のお話をさせていただきましたが、どんなことでもちゃんと聞いてくださるので、何でも相談できました。

松村さんはアイドルと俳優のどちらにも芯を置いてらっしゃる方なので、尊敬していますし、本当に信頼できる方だと思っています。

初のラブコメで、表現方法に悩むこともあった

―今回は主演として、現場で意識されていたこともありますか?

森さん 主演ということは、私が観客の方々と一緒に旅をすることになるので、みなさんに愛してもらえるキャラクターにすることがひとつの目標でした。原作の湊もみなも本当に愛おしいキャラクターなので、そこを忠実にやっていけば大丈夫だろうと原作を信じて進んでいった感じです。

―本作の登場人物たちは、自分の気持ちをうまく伝えられないキャラクターばかりですが、ご自身は気持ちを素直に表現できるほうですか?

森さん 内容にもよりますが、疑問があるときは、この疑問を抱いていること自体が合っているのかどうかを悩んでしまって、なかなか言い出せないことはよくあります。なので、ひとりでじっくりと考え、最終的には自分のなかで消化することが多いかもしれないです。ただ、うれしいことや楽しいことに関しては、けっこうすぐ顔に出ていると思います(笑)。

―劇中では森さんが見せるさまざまな表情も見どころですが、どのように役作りしたのでしょうか?

森さん 原作の湊はコロコロと表情を変えるところが魅力的でもあるので、台本に漫画のコマを印刷して貼り付け、それを見てから本番に挑むこともありました。それくらい原作を意識しています。

ただ、漫画で描かれている表情をお芝居で表現するのは、難しかったです。しかも、それまでラブコメは未経験だったので、どうやってお客さんに伝えるかは悩みました。そんななか、監督が言葉や動きでたくさん教えてくださったので、それに助けられました。

―やはりコメディならではの難しさもあったということですか?

森さん 今までとは違いました。特に、“見せる笑い”というのは初めてだったので、どうなるのかなと不安になることも……。ただ、撮影しながら笑ってしまう瞬間もけっこうあったので、私たちがお芝居をしていてそうなるのなら、きっとみんなも笑ってくれるんじゃないかなと思いながら演じていました。

私は自分の“メーター”がわからないところがあったので、徐々に自分の気持ちを出すことに慣れていったという感じですね。そのなかで、「こうしたほうがおもしろいかな」とかを考えられる余裕が少しずつ出てきたので、自分としてもすごく身になった現場でした。

ギャルメイクで別人になれてうれしかった

―みなのギャル姿は、とてもかわいかったです。変身した姿をご自分で見てどう思いましたか?

森さん 鏡を見るたびに、「誰これ?」とびっくりしてました(笑)。別人になったみたいな気分でしたが、自分をだませるほど変われたことがうれしかったです。実写化するうえで、そこが一番高いハードルだなと思っていたので。観ている方に「透は気づいているでしょ!」と思われないように、いろいろと工夫しました。

―それほどご自分でも驚かれたのなら、ご家族の反応も楽しみなのでは?

森さん 新鮮に感じてくれると思います。でも、こういうラブストーリーも初めてなので、きっとそこも茶化されるんだろうなと覚悟しています。

―制服を着たとき、ご自身の高校時代がフラッシュバックすることはなかったですか?

森さん 撮影したときは、まだ高校を卒業して2か月くらいしか経っていなかったので、制服もまだ全然いけるなと(笑)。でも、そのうちだんだん制服がコスプレみたいだと言われてしまうのかな、とは考えてしまいました。

―高校生と大学生の両方を行き来するなかで、大人と子どもを切り替える部分もあったと思います。ご自身も学生時代からお仕事をするうえで、そういった経験はありましたか?

森さん 以前は大分に戻ったら高校生で、東京に戻ってきたら大人として扱われるギャップが苦しいと感じることもありました。でも、楽しむときは楽しんで、仕事のときは仕事という切り替えが自分のなかでだんだんできるようになったので、それは私にとっても大きなことでした。私はこれからも女の子と女性を行き来するような大人になりたいので、そこでその基盤を作れたことはよかったなと感じています。

―ちなみに、高校時代にギャルになってみたいと思ったことは?

森さん なかったですね。というのも、私は校則通りにずっとひざ丈のスカートをはいていて、メイクも自分でしたことがなかったくらいなので。今回ギャルを経験してみて、足を出したり、爪が長かったり、すごく大変だなとは思いました(笑)。

―もし、ご自分が変装するなら、ギャル以外にしてみたいメイクや着てみたい衣装はありますか?

森さん パンク系女子ですね(笑)。というのも、『一度死んでみた』の(広瀬)すずちゃんの格好がすごく好きなので、一度挑戦してみたいなと思います。

自分が我慢しても相手を応援できる関係に憧れる

―以前、別の作品で森さんが来ると晴れると、“リアル天気の子”っぷりが話題になったことがあるそうですが、今回の現場はいかがでしたか?

森さん 透とみなが出会う渋谷のシーンは、実は2回目に撮影したものなんです。というのも、1回目はせっかく朝3時に起きたのに、雨で撮影できなくて。天気の子としては恥ずかしかったですね(笑)。

ただ、事あるごとに私が天気の子の話をしたので、松村さんから「いつまでひっぱってるんだ」とつっこまれました(笑)。天気の子だったのは1年以上前だったので、効力も切れてしまい、今回は天気に振り回される撮影になってしまいました。

―(笑)。作品を通じていろいろなラブストーリーを経験されていると思いますが、憧れるものはありますか?

森さん 朝ドラのときはハナコの岡部さんが相手役で、修業して1人前になるまで結婚を待つという設定でしたが、相手のやりたいことを応援して、自分は8年近くも我慢して待つなんて、すごいなと思っていました。そういう関係性は魅力的だなと思いますし、憧れますね。

―今回は、クールでモテる透と優しくて一途な烏丸というタイプの違う2人の男性の間で揺れる役を演じられました。ご自身はどちらがタイプですか? 

森さん 烏丸くんは素直な気持ちをたくさん伝えてくれるので、女の人からすると安心もするだろうし、グラッときますが、透はツンデレをうまく使い分けてくる強者なので、そういう不安定さに惹かれちゃう女性は多いのかなとは思いました。それぞれにいいところがあって選べないので、私は中間くらいの人がいいのかなと(笑)。

実際、現場でもどっちがいいかでけっこう盛り上がることが多かったです。でも、みんなシーンごとに意見が変わって、「いまので透派になった!」と言ったと思ったら「やっぱりいまので烏丸派になった!」みたいな感じでした(笑)。なので、映画を観てくださる方でどっち派が増えるのかが気になっています。

二十歳になる前にいろいろと身に着けたい

―では、男性を見るときに、大事にしているポイントは?

森さん あまりそういうことを考えたことはないんですけど、たとえば「うん」とかの返事が優しい人がいいですね。こういう言葉っていつの間にか出ているような一番気に留めないものだと思うので、それを優しく言える人はきっと全体的に優しい人なんだろうなと。なので、「うん」を優しく言う人がいいですね。

―本作は小さな嘘から始まる物語ですが、いまだから言える嘘にまつわるエピソードはありますか?

森さん 実は、今回の撮影中のことなんですが、共演者の堀田真由さんに「私、ミドルネームがあるんです」と嘘をついたまま、訂正せずにここまで来ちゃいました(笑)。なんでそういうことを言ったのか思い出せないんですけど、私はけっこうそういうしょうもない嘘をつくのが好きなんです。しかも、堀田さんが信じてしまったので、おもしろくなってしまってそのままにしてしまいました。堀田さんには、この作品の宣伝活動中に暴露したいと思います(笑)。

―反応が楽しみですね。それでは、10代最後の年をどう過ごして、20代を迎えたいと思っているのかを教えてください。

森さん あと6か月くらいしかないですが、大人になる準備は欠かせないなと感じています。自分としては何も変わっていなくても、二十歳になった途端、急に周りから大人として扱われるんだろうなと思っているので。そういったこともあって、今までは直感だけでやっていた部分もたくさんありましたが、最近は頭できちんと考えることも増えました。二十歳を迎える前に、いろいろと身に着けておきたいなと思っています。

インタビューを終えてみて……。

かわいらしい無邪気な笑顔を見せつつ、仕事の話になると真剣な眼差しも見せる森さん。取材中は、そのギャップにすっかり魅了されてしまいました。20代ではどんな顔を見せてくれるのか、今後もますます楽しみな女優さんです。

恋愛では嘘が最高のスパイス⁉

2人なのに三角関係に陥ってしまうという見たことのないラブストーリーを繰り広げる本作。湊と一緒にドキドキハラハラしながら、イケメン男子たちとの胸キュンも存分に堪能してみては?


写真・黒川ひろみ(森七菜) 取材、文・志村昌美
ヘアメイク:池田ユリ(éclat) スタイリスト:Babymix

ストーリー

恋愛経験ゼロの地味系女子大生の湊は、幼いころに両親が再婚したため、義理の弟である同い年の透と同居していた。不愛想だが、イケメンで女癖の悪い透。そのことが原因で、2人の仲はいつもギクシャクし、お互いに冷たい態度を取っていた。

ある日、湊は親友に頼まれて、高校の制服にギャルメイクで街に出ることに。偶然にも透と遭遇してしまうが、湊はとっさに女子高生のみなだと嘘をついてしまう。それを信じた透は、みなにまさかの猛アプローチ。正体を明かせなくなった湊はみなとして透と付き合うことになってしまう。そんななか、再会した幼なじみの烏丸から告白される湊。はたして、恋の行方はどうなってしまうのか……。

トキメキが詰まった予告編はこちら!

作品情報

『ライアー×ライアー』
2月19日(金) ロードショー
配給:アスミック・エース
https://liarliar-movie.asmik-ace.co.jp/

(C) 2021『ライアー×ライアー』製作委員会  (C)金田一蓮十郎/講談社