櫻井 智絵

【恋の仕方を忘れた方へ】平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』を、丸の内OLが読んでみた。

2016.6.2
丸の内に勤務する読書好きのOL・櫻井智絵が、自分が読んで「ああ、面白かった!」と思った本だけを紹介する連載【丸の内OLの給湯読書室】。第17回は、芥川賞作家・平野啓一郎さん著『マチネの終わりに』を読んでみました。

恋の仕方を忘れた大人に贈る恋愛小説

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【丸の内OLの給湯読書室】vol. 17

今回の本は、アラサー女子たちの「恋の仕方を忘れちゃった」という声をきっかけに読み始めました。昔は「好き」という気持ちを素直に表現できていたのに、今はいろんな経験を通して傷つくことを恐れてしまっている。そんな「恋の仕方を忘れちゃった」人の中には、ずっと頭の片隅にある、ふとした瞬間に思い出す、忘れられない恋がありませんか。人生で一番愛し合った人と永遠に一緒にいられることなんて奇跡に等しい、だからせめて自分の心にだけには素直になりたい。そんな人にオススメしたい! 毎日新聞とnoteで連載され、読者たちを翻弄しっぱなしの話題作。

『マチネの終わりに』とは?

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あらすじは…

物語は、中年にさしかかった天才的クラッシックギタリストの蒔野と海外の通信社に勤務する国際的ジャーナリストの洋子の出会う場面から始まる。すぐに惹かれ合うが、洋子にはすでに婚約者がいて叶わぬ恋の始まりだった。2人は体ではなく心で愛を確かめ合い、次第にかけがえのない存在になっていく。しかし、蒔野は若き才能からスランプに陥りもがき、洋子は体調不良に苦しむ。傷つく度に、繰り返しあの特別な夜を思い出す。愛し合い、すれ違い、2人の関係は崩れていく…。ラストをかけめぐる美しい情景が余韻を残す大人の恋愛小説。

読み終えて……

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恋の仕方はとてもシンプルなものと思いました。特に印象的だったのは、蒔野が「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えている…それくらい繊細で感じやすいもの」と語る場面。この言葉で主人公の2人が深く通じ合った気がしました。わかってくれる人がいることは、すごく心強いものです。例えば、仕事の打ち合わせでなかなか上手く説明できなかった時、さりげなく私が言いたかったことをフォローしてくれたり、伝えたいことを理解してくれていたり。その瞬間、喜びに変わります。

本書では静寂の心地良さと怖さに引き込まれていきます。世の中にある出来事は常に自分の側で起きていると改めて考えさせられました。長い長い夜にひっそりと読みたい一冊です。

終わりに…

最近では、著者の方がSNSをやっていることがあります。今回の美しい恋愛小説『マチネの終わりに』を書いた、平野啓一郎さんもブログやTwitterをおやりになっています。おぉ~この方が!!と色々読ませていただきましたが、私はまた『マチネの終わりに』を読み返したくなりました。(笑) 今の時代だからこそ、著者の方の思いや考え方を知られるSNS、本と一緒に上手く合わせて読むと面白いかもしれません。

Information

マチネの終わりに

『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)¥1700+税


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